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Toy train connecting Europa and China. Symbolizing the New Silk Road or one belt one road Chinese strategic investment in the 21st century. Economic project to connect EU, Central Asia and China

中国外交と日本外交を比べると見えてくる我が国の“ノービジョン”

中国の傍若無人な行動は日本人から見ると嫌われる原因にもなりえますが、そんな中国が平和の使者となった例があります。メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、中国を理解するために感情ではなく損得であえて考えた結果を語っています。

「中国の外交」と「日本の外交」を比較する

こんにちは。

中国が平和の使者となり、ロシア・ウクライナ戦争を仲介する、という構想は潰えたようですが、サウジとイランの平和の使者の役割は果たしたようです。米国離れの中東諸国にとって、今や、中国の評価は鰻登りです。

一帯一路では、散々悪い噂ばかりを聞いていましたが、やることはやっていたんですね。

西側のメディア情報ばかり見ていると、こちらの意識も自然とバイヤスが掛かってしまいます。

一帯一路をあくどい企みと見るのではなく、素直に評価することも大切だと思います。

そうなってくると、日本の外交はどうなんだ、という話になりますね。

日中の外交について考えてみたいと思います。

1.暴れん坊と平和の使者

中国は、近隣国に圧力をかけ、隙があれば、自国の領土を拡大しようとします。自分の都合だけを優先して、他国との約束を守りません。

多分、中国は日本が嫌いというわけではありません。嫌いだから攻めているのではなく、領土を拡大したいから侵犯しているだけです。

日本が好きとか嫌いとかではなく、自国の利益になるなら、日本と付き合う。自国の利益になるなら、日本を恫喝するのです。

現在、中国政府は日本企業の投資を歓迎しています。中国経済の活性化のために日本の力を活用したいのです。

日本人は、まず相手の気持ちを考えるので、相手が嫌がることをしません。特に、頼みごとをする場合、嫌がらせはしないでしょう。それが日本人の常識です。

しかし、中国人の常識ではありません。彼らの常識は、人間も国家も、自分の利益のために行動するということです。文句があるなら、相手に言えばいい。文句を言わないということは、文句がないということです。

サウジアラビアとイランは、中国の仲介により、外交関係が正常化しました。なぜ、中国は仲介したのでしょうか。

米国は、イランに対して、厳しい経済制裁を課しています。しかし、中国はイランと友好関係を深めています。

中国は、サウジともビジネスがしたいと考えていました。しかし、サウジは米国と同盟関係でした。米国とイラン、サウジとイランは対立していました。

ところが、最近になって、サウジと米国の関係が冷え込んできました。

その機を逃さず、中国はサウジに対して、イランに投資しないかと持ちかけました。政治や宗教問題は棚上げにして、経済を切り口に関係修復をしよう、という提案です。もちろん、中国は事前にイランの意志も確認していました。

日本人にとっては、暴れん坊の中国が、中東に平和をもたらしたことは驚きでした。しかし、考えてみれば、不思議なことではありません。自国にとっても、相手国にとっても利益があるなら、それを進めるだけです。また、国際的に大国の存在感を示すこともできます。

好き嫌いの感情ではなく、損得の勘定で考えれば、中国を理解することができます。

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2.一帯一路は、正義か悪か

「一帯一路」とは、中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる陸路の「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、インフラ整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画です。

日本では、中国の一帯一路に対して、良いイメージを持っている人は少ないでしょう。

中国から融資を受けた発展途上国は、結果的に、莫大な債務を負わされ、港や土地を取り上げられるケースも出てきました。いわゆる債務の罠です。

また、インフラ整備においても、工事の品質が低い、メンテナンスが不十分などの問題も出ています。

それでも、これまで先進国が支援しなかった発展途上国に対して、中国は継続的に投資を続けました。それは正当に評価すべきだと思います。

考えてみれば、アジア、中東、アフリカなどの地域では、米国のネオコンによる工作活動などで、常に不安定な状態が続いていました。米国ではなく、中国を選ぶ国が増えているのは事実です。

米国の支配力が弱まることで、不安定になる地域もあります。しかし、米国の介入がなくなり、平和への道を模索する動きもあります。

イラン、サウジの仲介に成功した中国は、中東で絶大な信用を得ました。

中国は自国の覇権を強化するために、一帯一路を提唱したのかもしれませんが、結果として、中東に平和をもたらしました。

今後、中東諸国と中国の間には、巨大な投資とプロジェクトが計画されるでしょう。

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3.存在感を消して引きこもる日本

戦前の日本はアジア諸国に対して、大きなビジョンを持っていました。欧米の植民地であったアジア諸国を解放し、アジアに広域経済圏を作ろうという、大東亜共栄圏構想です。

日本は敗戦しましたが、アジア諸国は植民地には戻らず、独立を果たしました。一時的とはいえ、有色人種である日本人が、白人を圧倒した光景は、アジア諸国に大いに勇気を与えたのです。

戦後教育において、大東亜戦争、大東亜共栄圏という表現が禁じられ、戦前の日本は、「アジア諸国を侵略した悪の国家である」、と定義されました。

戦後の日本は、対外的なメッセージを発信しなくなりました。経済復興を第一として、高度経済成長時代まで疾走しました。企業の海外進出でも、経済侵略と批判されました。国家がリードすると非難されるので、企業単位で目立つことなく、静かにお金を稼ぐことに集中したのです。

日本がこのような考え方に染まったのは、米国の占領政策が原因かもしれません。日本を二度と国際舞台に登場させないための教育とプロパガンダが徹底的になされ、それは現在も続いています。

中国は、自国のビジョンを明確に持っています。それが自分勝手なものだったとしても、問題が多かったとしても、ビジョンに基づく行動を起こし、経験を積んでいます。

日本の工事技術は素晴らしいし、本当に相手のことを考えて行動します。しかし、意思決定が遅く、完璧に条件が揃わないと動きません。

相手が先進国ならば、日本のやり方は理解されるでしょう。しかし、独裁国家が多いグローバルサウスの国々は、利害で動く中国のやり方が分かりやすいのかもしれません。

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4.誇りが持てる日本の国家ビジョンを

日本の外交にビジョンはあるのでしょうか。現在の岸田政権をみていると、米国のバイデン政府に追随しているだけのように見えます。

日本は外交によって何を実現したいのでしょうか。安全保障でしょうか。経済発展でしょうか。日本の国際的地位の向上でしょうか。日本の国際的な地位が上がったら、何をしたいのでしょうか。

日本がどうなりたいか、ということだけでなく、例えば、世界各国にどのように動いて欲しいのでしょうか。そして、どのような世界にしたいのでしょうか。

中国は一帯一路構想を打ち出しました。いろいろと問題も生じましたが、BRICS、グローバルサウスとの連帯は強まっています。現段階では、デジタル人民元も不完全ですが、少なくともドル基軸通貨以外の可能性を打ち出しました。

米国バイデン政府は、環境問題、人権問題を打ち出しました。こちらも課題は山積みですが、G7を中心とした先進国に対して、世界の方向性を示しています。

日本は、米国や中国のような覇権主義ではありません。それならば、覇権なき平和な世界を目標として、世界各国が自主独立し、多様な文化を発展させることをビジョンに掲げるのはいかがでしょうか。

いずれにしても、国民が誇りを持てる、日本の国家ビジョンが必要だと思います。

編集後記「締めの都々逸」

「傍若無人の ジャイアンだって たまにゃ仲裁いたします」

本当に驚きました。中国が平和の使者になるとは思いませんでした。しかも、中東諸国の中国に対する信頼は相当なものです。

中国は完璧な準備ができなくても、とにかくスタートします。日本は完璧な準備ができないとスタートしません。当然、中国は失敗します。日本は失敗しません。

でもね、本当に困っているときは、性格が悪かろうと、技術がなかろうと、とにかく手を差し伸べてほしいんです。日本は動いてくれないから、中国に頼む。中国が失敗すると、日本に泣きついてくる。日本はそれを裏切りだといいます。

それでいいのかな。もう少し知恵を働かせることはできないのでしょうか。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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