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国家存亡の危機。優秀な若者の「官僚離れ」で立ち行かなくなる亡国ニッポン

かつては多くのエリート学生たちが目標としたキャリア官僚職。しかし昨今、その人気は凋落の一途を辿っていると伝えられています。国も待遇改善に動き出していますが、問題の根はさらに深いところにあるようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、若者の官僚離れの原因について考察。志望者を増やすためには、政治家と官僚との関係の見直しが必要不可欠としています。

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

官僚たちの夏はどこへ?若者の「官僚離れ」真の問題

国家公務員を希望する“若者”は増えるのでしょうか。

人事院は7日、国家公務員の今年度の給与について、大卒・高卒の初任給をいずれも1万円以上引き上げるとともに、月給とボーナスも引き上げ、さらには「週休3日」の働き方を可能にするよう内閣と国会に勧告しました。

上級国民という言葉が社会を闊歩する中、国家公務員の処遇改善には批判的な意見も少なくありません。一方で、不夜城と揶揄されるほど霞ヶ関の働き方は異常です。

「仕事だけが人生じゃない」という価値観を、ごくごく当たり前に共有する若い世代にとって、低賃金、長時間労働のブラックな職場は敬遠されるのは自然なこと。今回の処遇是正が、学生、正確には東大生のキャリア官僚離れにどれほど効果があるのか定かではありませんが、時代の流れの一貫としての「処遇改善」としては大賛成です。

しかし、本気でキャリア官僚になりたい!という学生を増やしたければ、政治家との関係性の見直しが必要不可欠です。

「誰のために働いているのかわからなくなる。上司のためなのか、議員のためなのか?」

「政治家の理不尽な要求に応えるために、官僚の道を選んだわけじゃない」

「議員のために働いて、それが国のためになればそれでもいい。しかし、今の腐敗しきった政治家たちを見るにつけ、もはや官僚でいる意味はないと悟った」

…私はこれまでこういった“声”を聞いてきました。

学生の時には「官僚になって日本を変えたい」と夢を語り、意気込んでいた彼ら、彼女らが、政治家との関係に嫌気がさし、やめてしまうのです。官僚への切符を手に入れたときに抱いていた崇高な気持ちが、日々の業務によって心身が蝕まれていく…それが官僚離れの真の問題ではないでしょうか。

戦前の日本は公務員が多く、官僚の政治的権力も強い「官僚天国」でした。その結果、他国より無駄が多く財政赤字が深刻化し、日本は行政改革をいち早く進めることになった。つまり、通常、経済成長に伴い公務員は増えるものですが、日本は公務員を増やさないことでコストを抑え込み、その結果、公務員が少ない国になりました。

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橋本龍太郎内閣が進めた「票」に繋がる官僚のスリム化

30年近く前のことなので、忘れてしまった人も多いかもしれませんが、1996年の最大の政治課題は「行財政の構造改革」でした。

当時、橋本龍太郎内閣は消費税増税も含めた包括的なプラン作りに取りかかり「行政改革・財政改革・社会保障改革・金融システム改革・経済構造改革・教育改革」という6大改革の方針を発表し、中央官庁のスリム化を進めました。

この官僚のスリム化は、まさに“票”につながる政策。キャリア官僚のさまざまな問題が露呈し、毎日のようにテレビでは官僚バッシングが行われました。政治主導という言葉は…結構魅力的だったんですよ。

本来であれば、国の人口構成が急速に変わり、公務員が必要なのに、人手不足問題は完全にスルー。待遇面ばかりがクローズアップされ、数少ない公務員を余計に追いつめたことになってしまったのです。

経済協力開発機構(OECD)の“Goverment at a Glance 2017”のデータを使って大阪大学の北村亘教授らが調べたところ、日本の公務員の1人当たりの仕事量は他の先進民主主義国に比べて圧倒的に多く(政府全体の歳出を公務員数で割った数で比較)、中央政府の人件費が中央政府全体の支出に占める割合も低いことがわかっています。

そして、人手不足を補うために非正規雇用を増やすことで対応し続けている。政治家との関係性を見直すことなく、ただただ非正規を増やしているのです。

国家公務員は、正規職員26.5万人余に対して非常勤職員は7.8万人余(2017年)。非正規率は22.7%で、省庁別に見ると厚生労働省が圧倒的に多くて3.4万人、52.6%と半数以上が非正規公務員です。

繰り返しますが、今回の国家公務員の処遇改善には大賛成です。しかし、政治家との関係、非常勤職員問題など、問題は山積しています。このままで本当にいいのか、ニッポン?!

みなさんのご意見、お聞かせください。

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image by : yu_photo / Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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