MAG2 NEWS MENU

日大アメフト大麻事件を考察。マスコミによる集団リンチが“別の犯罪を生んでしまう”皮肉

林真理子理事長が会見するなど大きく世間を騒がせた、日本大学のアメフト部「大麻・覚醒剤」事件。以前から不祥事のあった日大、そしてアメフト部で、なぜ再びこのような事件が起きてしまったのでしょうか?メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』ではジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんが、このような事件が起きてしまう日本大学の体質について分析。さらに、「大学」という組織そのものがかかえる構造的問題について考察しています。

日本大学アメフト部大麻事件に見る「大学の教職員の象牙の塔」

今週は、「日本大学アメフト部大麻事件に見る『大学の教職員の象牙の塔』」と題して、大いに話題になった内容に関してみてみたいと思います。

なお、ここでは大麻所持事件そのものに関してはあまり触れないようにしようと思っております。実際に、大麻所持事件に関しては警察が捜査しているところでありその全容が解明しているわけではありませんから、その結果が出てから、せめて捜査が終わって起訴されてからでよいのではないかと思います。

では何を語るのでしょうか。

実は「そのような事件が起きてしまう体質」ということについて見てみたいと思います。特に「大学における教職員」ということは、私もほんの少しですが経験がありますので、その体質などは何となく感じるところがあります。

医学部や大きな病院など「閉鎖的なヒエラルヒ的な権力構造」に関して「象牙の塔」というようなことを言うことがあります。私はドラマなどでそのような表現を使うのは、病院や医学部ばかりと思っておりましたが、私の経験上「大学という組織」がそのようなところを持ってしまっているということではないかと見直すようにしているのです。

そのうえで、日本文芸家協会(会長林真理子)で、林会長と話をしたときに「本当に苦労させていただいております」ということをうかがっているので、何となく共感できるところがあるのです。ちょっとそのことに触れてみたいと思います。

林真理子理事長と前理事長田中派の確執

何よりも注目を集めたのは、今回の事件が数年前に「悪質タックル」で問題になったアメフト部であるということではないでしょうか。悪質タックル問題について、今更また蒸し返すつもりはありませんが、しかし、ある意味でアメフト部が、以前の田中理事長時代の「遺物」であるような印象を持ってしまうのは私だけではないと思います。

実際に、スポーツ部というサークルは、試合に出て全国大会を目指すようになればなるほど、監督やコーチの権限が強くなりますし、また、その中における命令に対する服従という感じのものや、チーム全体での結束力が重要になってきます。これは「自由がない」というのではなく「チーム全体で一つの考え方を持って結束を強くしなければ、勝てない」ということであろうと思います。よく「1+1=」の答えで、数学では「2」と答えるのですが、このようなスポーツなどの場合は、より大きな力になると教えられますが、まさにこのようなスポーツ部に関してはそのような感覚になるのではないかと思います。

問題は、その時に「理不尽」や「ルールに違反する命令」が来た時に、チーム一丸となってルール違反や理不尽を受け入れてしまうのかという問題になってくると思います。

では、「教育者であるはずの大学教職員」が「理不尽やルールに違反する命令」を出すのでしょうか。実は、これが出てしまうのです。まさに大学という「閉鎖的な組織」であり、なおかつ、あまり原価などがない(実際は授業料や入学金が収入ですので、収入ということは考えられるのですが、それが原価売価という通常の商売とは異なります)ので、なおさらそのへんのところが大きな問題になってくるのです。

つまり「閉鎖的な組織内の価値観と、敵対する派閥を倒すことという目的意識に囚われてしまった場合」に、大学内の価値観だけで物事を行ってしまうという場合があるということになるのです。この辺は、「教育者」というような、世間一般の、または、戦前の学校教育に携わっている人々とは全く異なる所ではないかという気がします。

この記事の著者・宇田川敬介さんのメルマガ

初月無料で読む

マスコミの報道姿勢が別の犯罪を作ってしまう皮肉

さて、今回の場合、「象牙の塔」と言われる田中元理事長を中心にしたヒエラルヒーがあったのですがタックル事件と巨額脱税事件によって林真理子理事長が入り、そのことから、「守旧派(旧田中理事長派)」と「改革派(林真理子派)」に分かれてしまうということになったのです。

その派閥争いに、「対抗意識」と「味方の結束力」を行う場合、最も強い結束力の内容は「秘密の共有」が最も良いということになります。

もちろん、その「秘密」が犯罪行為である必要性は全くありませんし、そのように考えた田中派が指示したというようなこともないと思います。

しかし、ある意味で「自分たちが田中理事長を(またはその時のアメフト部の監督やコーチを)追い出してしまった」というように学生が自主的に思ってしまった場合には、その「秘密の共有」ということの中で通常の倫理観とは全く異なる選択肢を選んでしまう可能性があるということは否定できないのではないかと思います

そのうえ、「悪い大人」がいて、そのような大麻や覚せい剤などの非合法なものを勧めた場合、またはそのような「悪い大人」の中にアメフト部の先輩が入っていた場合、その道に入ってしまう人がいてもおかしくはないのではないかという気がします。まさに、「改革派と守旧派の対立を見ていた学生が、自主的に罪悪感を感じて、非合法の道に足を踏み入れてしまう」というような構図です。

この場合、日本のマスコミは集団リンチ的にこのような事件を取り上げ、袋叩きにしてしまいます。その場合の被害者、あえて「マスコミ被害者」と言いますが、その被害者は、様々な意味で結束を固め、なおかつ、「陰に隠れる」というような状況になります。

まさに「マスコミの報道姿勢がこのような別な犯罪を作ってしまう」ということがあるのではないかと思うのです。

そのことは、今回の事件では日本大学全体が対応できないような亀裂を作り出してしまったのではないでしょうか。

今回の事件、昨年のうちに通報がありながら、今年の7月までこのような状態が続いていた、つまり、アメフト部の寮の中では半年以上継続的に大麻が使用されていたことになります。もちろんどれくらいの頻度かわかりませんが、しかし、さすがに年1回ということもないでしょう。

ではなぜそのようになってしまったのか。それは守旧派が改革派に対して、事実を隠すようなことをしていたことまた、改革派は林真理子理事長の言葉にありましたがスポーツは不得意であり、学校の制度や組織を先に改革しようとして後手に回ったということもあったのではないかと推測するものです。

このように「前回の事件が対立を生み」、その対立が、一つは学生の間の事件を引き起こし、もう一つは、その事件の解決に際して大学が団結して行うことのできない心因的な環境になってしまったということになるのではないでしょうか。(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話2023年8月14日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・宇田川敬介さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: しんぎんぐきゃっと, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

宇田川敬介この著者の記事一覧

今回は有料で日本の裏側に迫りたいと思います。普段は意識したことのない内容や、どうしてこうなるの?というような話を様々な角度からお話ししてゆこうと思います。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話 』

【著者】 宇田川敬介 【月額】 ¥440/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け