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肝心の中国経済が崩壊か。独裁国家の下に集結したグローバルサウスを待ち受ける困難

8月に南アフリカで行われた首脳会議で、イランやサウジアラビアなど6カ国の加盟を認めたBRICs。中ロの下に結集するグローバルサウスと呼ばれる国々ですが、このような動きを識者はどう見るのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、西側先進国と中ロ、そしてグローバルサウスそれぞれの関係性を改めて解説。さらにBRICsに参加する国々の思惑を考察するとともに、政治と経済が一体化している昨今の国際社会の状況に強い懸念を示しています。

グローバルサウスにも連鎖。迫りつつある中国経済の崩壊

こんにちは。

グローバルサウスが注目されています。その中心となるBRICsに入りたいという国が殺到しているとか。これには、米国嫌いの感情も影響しているようで、BRICsが米ドルに依存しない決済を始めれば、ロシアのような経済制裁を受けなくても済むと考えているのです。

日本国内でもG7は年寄りの国の集合体であり、これからはBRICsが存在感を増すと考えている人も多いようです。

また、サウジアラビアなどの中東産油国もBRICsに合流することが決まり、中東への依存率が高い日本は原油の調達ができなくなるのでは、と心配しています。

しかし、資源国は、資源を輸入する国があるからこそ、成立しています。グローバルサウスの国々の中には、原油産出国が多いのですが、グローバルサウス域内だけの貿易や経済では経済が成立しません。やはり、先進国に輸出することが成長の条件なのです。

それは、中国もインドも同じですが、なぜか、中国は自国の経済発展より、BRICsのリーダーになりたいようです。中国が先進国と縁を切ったままでは、中国経済が復活することはないでしょう。

実は、先進国とグローバルサウスは相互依存しているのです。

1.中国バブルの崩壊に大喜びする愚か者

中国バブルの崩壊のニュースを聞いて、大喜びしている人達がいます。中国だけが損失を出して、衰退していくなら構いませんが、世界経済は繋がっています。中国の製造業が衰退すれば、中国に部品や工作機械を輸出していた日本企業は売上が減少します。

ロシアがウクライナに武力侵攻した後、石油や天然ガス、穀物の流通が止まりました。すると、食料危機、エネルギー危機を警戒する声が増えました。資源の流通が滞ったことで、供給不足となり、欧米ではインフレが進みました。

中国とサウジアラビアが接近し、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成されるBRICsに、サウジアラビア、イラン、アルゼンチン、エチオピア、UAEが新たに加わりました。BRICsは米ドルの支配権から脱したいと考えています。まずは、各国通貨で原油取引を行うとしています。これでペトロダラーは崩壊します。米ドルは金本位制をやめました。現在の米ドルは、FRBの信用を裏付けに発行されています。それでも基軸通貨として認められているのは、原油取引はドルで行うというルール、ペトロダラーでした。しかし、ペトロダラーの枠組みは、一部の国で崩されました。明らかに米ドル経済圏は縮小しています。

そんな状況の中で、中国経済が減速しています。これまでの中国経済は異常でした。中国経済は借金で回っていました。そもそも、不動産の前払いという制度も借金で回しているということです。これは、その他の製造業も同様で、中国では前払いの商習慣が定着しています。企業は内部留保しなくても、銀行から融資を受ければいいと考えています。商品取引も前払いですので、本来ならばリスクはありません。しかし、これがバブルを膨らませたともいえます。資本がなくても、事業が拡大できるのですから、最終的に供給過剰になるのです。

しかも、不動産価格は政府が決定しているため、市場原理が機能しません。不動産の不良在庫が積み上がっても値下げができないのです。

異常な勢いでインフラ整備を進めてきた中国ですが、最早インフラ整備をする余地は少なくなりました。不動産バブルの崩壊と共に、インフラ整備関連のビジネスも消滅するでしょう。

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2.実は世界の組み立て工場でしかない中国

先進国は産業革命に成功し、経済成長を果たし、お金持ちになった国です。ほぼ全ての産業は先進国から始まり、労働集約型産業から人件費の低い国に移転しました。

現在、グローバルサウスと言われている国は、二つのグループに分かれます。

第一は、先進国に原油、天然ガス、綿花、羊毛等の資源を輸出している国々です。いわゆる資源国です。

第二は、先進国の下請け工場です。先進国から受注し、輸出して外貨を稼ぎます。下請け工場に仕事を出す場合、元請け工場は下請けが独立できないように工夫します。重要な素材や部品は下請けに生産させず、その調達先も厳しく管理します。あるいは、特許や商標等を持つことでビジネスの権利を守ります。

中国は「世界の工場」と自慢していますが、実は世界の組み立て工場であり、重要な素材や部品は先進国から輸入しています。中国の高鉄も車軸や車輪等は日本から輸入しています。

二つのグループに共通するのは、先進国に依存することで、効率よく稼げるということです。資本もノウハウも全て先進国が提供してくれます。あとは、注文通りに資源を輸出し、製品を輸出すればいいのです。

先進国では、グローバルサウスに依存していることばかりが強調されますが、実はグローバルサウスも先進国に依存しているのです。しかし、グローバルサウスは、先進国に依存しないと言い出しました。これは可能でしょうか。確かに、資源があって、組み立て工場があれば、既存の商品は作れます。しかし、その多くはコモディティ商品であり、常に価格競争に晒されています。

3.台湾有事でも日本への石油供給を止めない中東産油国

資源産出国は、資源を買ってくれる国があってこそ、豊かさを享受できます。しかし、世界中で化石燃料を使わなくなれば、石炭、石油、天然ガスの産出国は大きな打撃を受けるでしょう。資源の価値もなくなります。

サウジアラビアの最大の顧客は中国です。中国は、石油を大量に輸入し、世界の工場を回していました。また、穀物も大量に輸入しています。かつて、中国は農業国でしたが、土壌汚染や農民工の流出等により、すでに国内重要を満たすだけの穀物はありません。

中国のバブル景気下の製造業、不動産開発業では膨大な資材、部品、素材、機械等を輸入していました。重要な部品や中国手は生産できない資材等は、先進国から輸入していました。

中国とサウジアラビアが接近したことで、米国べったりの日本を心配する声もあります。台湾有事で、中東産油国が日本への石油供給を止めるのではないか、という心配です。

しかし、日本の原油輸入は長期的かつ計画的な契約をしています。これは生産者にとってありがたい顧客です。売上の計画が立ち、しかもキャンセルされることはありません。

中国の原油輸入量は多かったでしょうが、日本のような買い方はできません。ですから、原油産出国の全ての原油を中国が買ってくれるなら別ですが、今後不景気となり、原油の重要が減れば、その分をどこかの国に売らなければならないのです。

このあたりの調整は、すでに商社が動いているはずです。新たな油田開発も並行して進めているでしょう。目先の需給バランスに一喜一憂するのではなく、輸入先のバランスを考えています。もちろん、資源国ともコミュニケーションを保っていると思います。

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4.教育支援や産業支援のノウハウを持たない中国

中国はBRICsのリーダーを目指しているそうです。アフリカ諸国には以前から投資や支援を行っています。しかし、バラマキ外交は長続きしません。各国が自立できるような教育支援、産業支援等が必要です。しかし、中国にそのノウハウはないと思います。

これまで中国は大量の原油を輸入していました。しかし、中国の輸出産業が崩壊し、インフラ整備が停止した現在、どれほどの需要があるのでしょうか。また、今後の輸入量はどれだけ減少するのでしょうか。

当然、中東の産油国も先進国との取引をやめる気はないでしょう。彼らの目標は米ドル以外の通貨決済ですから、ユーロ、円決済の可能性はあります。人民元の決済も進んでいますが、中国の金融危機が深刻になり、人民元が暴落する可能性もあります。それでも、人民元を受けとるのでしょうか。

もちろん、米ドルの暴落の可能性もあります。しかし、どちらが危険かと言われれば、人民元の方が危ないでしょう。中国の金融崩壊が起こればバラマキ外交もできなくなります。それでもアフリカ諸国は中国についていくのでしょうか。

ロシアも原油や天然ガスを先進国に売りたいはずです。その邪魔をしているのは米国バイデン政権です。もし、バイデン政権が失脚し、トランプ政権が復活すれば、ロシアとの関係は劇的に改善されるでしょう。

BRICsは、各国が様々な思惑を持って参加しています。経済的には中国に依存し、軍事的にはロシアに依存したいと考えている国が多いと思います。そして、米国に制裁されても生き残れるような仕組みが欲しいのです。

しかし、肝心の中国経済が崩壊した場合、BRICsに所属する資源国が最も悪影響を受けると思います。そうなっても、BRICsは先進国への挑戦を続けるのでしょうか。

皆仲良く持ちつ持たれつ。「締めの都々逸」

「お前は嫌い 商売止める それじゃ景気は 戻らない」

日本は資源の輸入国だから、資源を止められることに敏感です。資源の輸出国は、ボイコットされるのが恐怖です。現在のロシアのように、西側先進国が結託してボイコットされると経済は衰退します。

以前は、政治と経済は分離していたのですが、最近は政治と経済が一体化しています。これはこれでヤバイと思うんです。

商売の基本は売買ですから、売り手と買い手が揃わなければ商売が成立しません。EVのように生産するだけ生産したら、大量の不良在庫が残ります。

日本の周辺海域には大量の資源が眠っているという話があります。しかし、安く売ってくれる国があるなら、そこから買えば良いのです。自国で資源開発をしても、コストが上がってしまうことがあります。それでは意味がありません。

皆仲良く持ちつ持たれつでいきたいものです。(坂口昌章)

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image by: BRICS INFORMATION PORTAL

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