9月7日14時から、実に5時間以上に渡り行われたジャニーズ事務所の記者会見。「僕のソーセージを食え」との過去の発言の真偽を巡る新聞記者と東山紀之新社長のやり取りは、ネット上を大いに賑わせました。そんな会見を取り上げているのは、メルマガ『施術家・吉田正幸の「ストレス・スルー術」』著者の吉田正幸さん。吉田さんは今回、この会見から感じ取ったという「自分でも気づきにくいこと」の正体を考察するとともに、一連の問題に関して忘れてはいけないことを記しています。
東山紀之ジャニーズ新社長「僕のソーセージ」の強さ
ジャニーズ事務所の会見が、9月7日(木)に行われた。
「人類史上最も愚かな事件」…
ジャニーズ事務所の新社長に就任した東山紀之は、ジャニー喜多川氏による性加害問題について、このように表現した。
その内容は、性加害の事実を正式に認めて謝罪し、再発防止策や被害者救済策に取り組む姿勢を明らかにしたもので、再発防止特別チームの提言を真摯に受け止めたものだということらしい。
5時間以上にも及んだこの会見は、コンサルタント会社の女性進行役で始まったが、まるでAIのような淡々とした進行で各メディアの質問者を抜粋していった。
中でも、Netflixの『新聞記者』というドラマのモデルにもなったと言われている望月という女性の質問がまどろっこしい質問に矢を射した。
『SMAPへ そして、すべてのジャニーズタレント』へという元ジュニアの木山将吾氏が書いた本を引き合いに出して東山のセクハラ・パワハラに対する質問をした。その瞬間、チャットにはものスゴイ激震が走るほどだった。
東山が「電気アンマでJr.の少年たちの股間を足で刺激していた、自分の隠部を見せつけていた、お皿の上に自分の陰部を載せて、『僕のソーセージを食え』と発言したというのは事実か?」と鋭い質問を望月がした。
その質問に対して、東山は「ネットで暴露本の内容は知っていた」と答えた上で「したかもしれないし、していないかもしれない。自身の記憶を呼び起こすのが困難である」という本音を吐露したのだ。
なんだ、この答えは?噴出して笑ってしまった。ようは記憶にございません、ということ。疑惑なんて、完全に払拭しきれない印象だった。困った表情は隠せない。見ているすべての視聴者が、これはもう事実なのだろうと感じたに違いない。
これら一連のやり取りに対しネット民は、「1番ダメな選択をした。『ジャニーズ』は終わり」「これから何百何千という被害者の声を聞き、何百億の補償の話し合いのテーブルにつく覚悟はあるのだろうか?」「政治家もそうだけど目立つ地位になったら、色々と過去の悪い事がでてくる。今回もそうなりそうな予感」という声が上がった。
一番重要なのは、「メディアも東山氏の過去の苦労話や栄光の記事を書いているところも有り、メディアの忖度はまだ続いていてメディアも変わらないと思う」と、今後のジャニーズ事務所や東山新体制に期待できないという声も散見された。しばらくして、「僕のソーセージ」がトレンド入りする始末。
しかし、この東山の会見はある種の強さを感じてしまった。
今回の「ジャニーズ会見」はただの会見ではないと感じる。それは今後の芸能界、マスメディア、性的異常志向者、権力の在り方、貨幣制度から二極化している現状などをすべて含んでいる内容だ。
ただ、被害者を置き去りにしているわけではないが、残念なことに藤島元社長、そして、東山新社長の真意も伝わってきて理解できる部分もあった。
それは、時代背景にある。
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実は東山、藤島それぞれ1966年生まれで自分と同い年である。
昭和から平成、そして令和へと駆けてきた日本カルチャーを同時期に体験している感覚的なものの理解だ。尚且つ、東山は母の億を超える借金を抱えて貧乏な時代をエンタメで乗り越えてきた。
もはや、そんなことは今回のジャニー喜多川の性被害にまつわる一件とは全く関係ないことは百も承知なのだが、昔と今の環境の違い、感覚の違いが嫌でもわかってしまうのだ。
ジャニーズ事務所の性被害を全く知らなかったという東山。会見で少しだけ出てきた彼の言葉には納得してしまった。「今のようにiPhoneもなくて自由にやりとりも出来ず、忙しくてまったく関りを持たなかった」
確かにそうなのだ。このスマホのあるなしで環境は全く違った見え方をする。逆に周りが何をやっているのかわからないから突っ走ることができた。
1年ほど前から昭和のドラマをチョコチョコと見ているとつくづく、あの頃は、確かに、そうだった…などというシーンが沢山あるのだ。
そして、苦労して努力して、ある種他人を蹴落として成り上がっていった団塊の世代の次の世代にいる僕らにとっては、「生ぬるいことをやっている奴が悪いんだ」という意識が芽生えやすい。
これは実際に組織化していた自分がもっともよく知っている。
こちらの常識は平成世代の非常識なのだ。
だからこそ、時代の流れに乗っかって価値観やセンスを柔軟にしようという心がけと、大げさかもしれないが訓練も必要になる。1966年生まれの同世代の人たち全員が抱えているかもしれない自分でも気づきにくいこと。
それをこの会見で感じ取った。きっと1966年生まれの昭和感覚がジェリー藤島も東山もどこかにあるはずだ。もうそのあやふやにしていても何も言われない時代は過ぎ去った。立派な「ホワイト化社会」は到来しているのだ。
約40年以上前、渋谷の交差点で坊主頭の少年に車から飛び降りて声をかけたのがジャニー喜多川だという。その坊主頭の少年が東山少年だった。
彼に対して性被害があったのかなかったのかを追求したって、喜多川氏無き今は決して真実が出ることはないのだろう。
もしあったとしても、東山は恐らくそんなことは墓場まで持っていく覚悟だろうから。貧乏な少年を救い、たとえ辱められても母の億の借金を返した恩義は忘れまい。
ある種、自分の背中を見せてきたという東山の後ろにいる成功したジャニーズタレントはパンピーなど入り込めない強靭な精神形態を取得していることは間違いない。
そこを十分に考慮してしっかりと補償をしてもらいたいものだ。
「性加害」は事実を素直に認めて謝罪をして、被害者への補償をしっかりやれば、時間はかかるが、まだ再起の道は残されているだろう。ジャニーズのファンも相当強靭な精神形態なのだから。
60年以上にわたり繰り返されてきたジャニー喜多川による性加害。34年前、元アイドルが被害について語った“告白ビデオ”が最近YouTubeで見られるようになった。映画監督の村西とおるが撮影したらしい。
その元アイドルとは、1967年~78年にかけて一世を風靡したジャニーズタレント「フォーリーブス」。解散から10年後の1988年。メンバーのひとり、北公次だ。
彼はジャニー氏から受けた性被害を赤裸々に綴った告白本を過去に出版している。翌年、ビデオでも被害を訴えていたのだ。それがなぜ今更?と思う。
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北公次はこのように語っている。
「正直言って我慢しなくちゃいけないという雰囲気に作られちゃって、この人の言うことを聞かないと、デビューできないな。実際にデビューさせてやるっていうことを聞いていましたから、この人の言うことを、ジャニーのいう事を聞かないと、デビューできないと思っていましたから」
話はジャニー氏とメリー氏の問題にも及んだ。
「一番ジャニーに考えてもらいたいことは、メリーにも考えてもらいたいことは、20年間まだ同じことを繰り返しているってこと。僕はそれを言いたい」
「騙すのはよくねえっつんだよ。子どもだけじゃなくて親までも騙してさ。俺が告白しなかったらどうなる?やめろよ、もう。繰り返しはやめろよ!」
この表情と言葉を見ていて、ストレートに彼の思いが伝わってきた。
「これから新しく生まれる、未来ある若手の若い子がまた同じ目にあって、それも親も知らずに、ジャニーズ事務所だから安全だとか、そういうことは絶対ありませんから。それだけは言っておきます」
これを34年前、すべてのマスメディアがスルーしたのだ。時代というのは恐ろしい。
最も重要なのは、自分自身を尊重し、自分の境界を守ることだ。そして、声を上げること。スマホがあるこの時代にはひとりの悩みの風通しはグンとよくなるはずだ。
他人に対しては尊重と理解を示す一方で、自分自身の権利を守るということ。不快な状況に遭遇した場合、相談や支援を受けることができる場所やリソースを探すことを前提にエンタメ業界へ入ることなどだろう。
しかし、忘れてはいけないことがある。この一連のジャニーズ問題の発端はガーシーだということを。
ガーシーの暴露によって34年前に北公次の訴えさえもこの鉄壁にかなわなかったが、一人の男がやってのけた。マスメディアも芸能界も企業も大きく動かした。
釈放されてから、また面白くなることだろう。
(メルマガ『施術家・吉田正幸の「ストレス・スルー術」』2023年9月9日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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