MAG2 NEWS MENU

テスラと戦っても日本のトヨタに勝ち目なし。既存の自動車メーカーが太刀打ちできないワケ

EVシフトにおいて大きく遅れをとった日本の自動車メーカー。先行するテスラに追いつき追い越すのは極めて困難になっているようです。テスラのどこが優位で、トヨタを始めとする既存メーカーのどこが足りないのでしょうか。メルマガ『週刊 Life is beautiful』著者で、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さんが詳しく解説。まもなく発表されるテスラの安価なEV「モデル2」が市場投入されれば、カローラ、プリウスなどの看板車種も影響は免れないと予想しています。

テスラと戦っても既存の自動車メーカーに勝ち目はない

先日、知り合いのエンジニアと「Tesla vs. 既存の自動車メーカー」の話になったのですが、話せば話すほど、既存の自動車メーカーには勝ち目がないように思えて来ます。

既存の自動車メーカーの問題点は、

などが指摘されていますが、それは「症状」であり、根っこはもっと深いところにあります。その根っことは、Teslaが長年に渡って莫大な先行投資を行ってきた「仕込み」にあります。

これらのすべての点において、Teslaは既存の自動車メーカーの数年先を走っており、これが大きな差別化要因になっているのです。実際、充電ネットワークに関しては既に諦めてTeslaのネットワークに便乗するメーカーが増えています。

トヨタ自動車は、ようやく重い腰を上げて、Teslaと同じギガキャストを採用した工場を作り始めていますが、そこが生産を開始するのは2024年以降になります。電池に関しては、全固定電池に賭けているようですが、実用化の目処はまだ立っていません。

自動運転用の半導体に関して言えば、既存の自動車メーカーは、NvidiaやQualcommから数千ドルするチップを購入する選択肢しかなく、結果として、Teslaのように全車に必要なハードを搭載した上で、ソフトウェア・オプションとして自動運転を提供するのは非常に困難です(チップの製造原価はとても低いので、自社製チップを持つTeslaは、全車に搭載することが可能なのです)。

この記事の著者・中島聡さんのメルマガ

初月無料で読む

ソフトウェアに関しては、経営陣がソフトウェアを全く理解できていないので(会社の歴史から考えて当然のことです)、今起こりつつつある「Software 2.0」へのシフトが何を意味するのかを理解出来る経営者はいないし、自動運転機能もデンソーあたりに丸投げしてしまうのが目に見えています。

ちなみに、Teslaがまもなく発表する安価なEV(「モデル2」と呼ばれています)は、リーク情報によると、コスト削減のためにCybertruckのような塗装なしのフィニッシュになるそうです。既存の自動車メーカーは「色が選べない自動車なんて」と馬鹿にするでしょうが、私は「モデル2」が既存の自動車の販売に与える影響は、Model Yをさらに上回るものになる、と予想しています。トヨタのカローラ、プリウス、カムリですら、その影響は免れないでしょう。

さらにその後、Tesla車によるロボタクシーが実現した際には(規制や世論も関わるので、これが何年後になるかを予想するのは非常に困難です)、消費者が自家用車を持つ必要がなくなるので、自動車産業全体が破壊的なまでのダメージを受けると予想できます。

(『週刊 Life is beautiful』2023年10月17日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

この記事の著者・中島聡さんのメルマガ

初月無料で読む

image by:Robert Way/Shutterstock.com

中島聡この著者の記事一覧

マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 週刊 Life is beautiful 』

【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け