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イランではない。戦争中のプーチンがハマスに「武器弾薬支援」をした“真の思惑”

ユダヤ教の安息日に当たる10月7日、突如イスラエルへの大規模攻撃に出たハマス。なぜ彼らはこのタイミングに、一般市民や外国人までをも人質に取るという大蛮行に出たのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、考えうる4つのシナリオを挙げそれぞれについて詳しく解説。さらに我々の関心が中東に向いている間にあっても、世界各地で「大規模戦争に発展しかねない案件」が確実に動いている現状を悲観視しています。

開け放たれたパンドラの箱。ハマスの蛮行が世界にもたらす大混乱

「世界はロシアがウクライナに侵略して、一部を占領することに対してはこんなに大騒ぎしているのに、もう70年以上イスラエルに占領されているパレスチナ、ガザの問題に対しては何も言わないのだろう?」

10月7日にハマスがイスラエルに対して攻撃を仕掛ける前、いろいろな会合や協議の際に必ず誰かがつぶやいている内容です。

まだその頃はこのようなアタックが起きるとは想像もしていませんでしたが、ハマスは平静を保ち、爪を隠しながら、攻撃のタイミングを見計らっていたようです。

今回のハマスによるイスラエルへの一斉攻撃と一般市民や外国人を連れ去って人質に取るという行動と選択に対しては、私は100%支持しませんし、ハマスが行っている蛮行に対して激しい怒りを覚えますが、イスラエルがガザのライフラインを封鎖し(注:その後、水と電気の供給は再開とのこと)、同じくガザに暮らす一般市民を“人質”に取り、無差別攻撃を加え、ガザを破壊し尽くしている状況にも激しい憤りを覚えます。

中東問題の専門家は口々に「欧米諸国は民主主義だとか人権だとか声高に叫び、ウクライナ問題に対して支援をするのに、70年以上もの間、イスラエルがパレスチナ人を“人質”に取っている事態に対しては、黙認するどころか、支持までしている。『これはダブルスタンダードじゃないか。世界よ、いい加減この矛盾に気づけ』というのが、ハマスが私たちに突き付けた問いではないか」と言います。

この認識と指摘に対しては、「なるほど」と理解はできますが、だからといってハマスの行いを支持し、称賛する理由にはならないと考えます。

しかし、この指摘された“矛盾”と“ダブルスタンダード”こそが、私たちが生きる国際社会の現実であり、日々、世界のどこかで多くの憎しみと報復の連鎖を生み出していることに対しては、これまで紛争の現場で調停に携わってきた身として、痛いほど実感しています。

ところでハマスはどうしてこの時期にこのような行為に及んだのでしょうか?

考えうる理由は何通りもありますが、その中で有効かなと思われるものをいくつかピックアップしてみます。

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国際世論におけるイスラエルの孤立を狙ったハマス

一つ目は【ハマスから“国際社会”への警鐘】という理由です。

これはすでに先ほど触れましたが、イスラエル建国後、入植地に対してイスラエル人が入ってきて、空き地に家を建てたり、ひどい場合には「ここはユダヤ教の教典の中で神が私たちに与えた土地だ」と一方的に主張し、パレスチナ人を家から追い出し乗っ取ってしまうという行為に出たりして、欧米からの支援と黙認の下、どんどん支配地を拡大し、その分、パレスチナ人を追いやり、閉じ込めるという政策が進められてきました。

今回、ハマスが一般市民と外国人を人質に取り、近日中には行われるとされるイスラエルによる総攻撃に対する人間の盾として用いることは、極悪非道で言語道断であると考えますが、見方を少し変えると、今、イスラエルがガザへの総攻撃を宣言し、ガザの市民が囲いの外に逃げることを許さないという矛盾に満ちた措置は、まさにガザに住む120万人の人たちを人質に取っているというようにも見ることが出来ます。

ガザの窮状とイスラエルによる怒りに任せた行動は、アメリカという例外を除き、欧州各国でもその他の地域でも大きな懸念と非難が拡大する原動力になっています。

「世界はロシアによるウクライナへの侵攻と占領に対しては涙し、支援をするのに、パレスチナ人の置かれている窮状からは目を背けている」という先ほどご紹介した認識は、私たちに突き付けられる主張の矛盾に対しての指摘だと考えます。

ハマスが狙ったのは、この国際的な感情の隆起と国際世論におけるイスラエルの孤立だと考えられ、その点では、イスラエルの総攻撃を待たずして、目的は達成されつつあります。もちろん、自らが守るはずのパレスチナ人同胞の生命と引き換えにですが。

ここでイスラエルが本当にガザ地区への総攻撃に乗り出した場合、確実に国際世論はイスラエルに対して非常に厳しいものになるでしょう。

ただ、ここで私たちが勘違いしてはいけないのは、理由はともあれ、ハマスの取った行動は決して支持できない残虐なものであることです。

今後、ハマスはこの“事実”をいかに隠すか印象を薄めるかに力を注がざるを得なくなりますが、その結果は、今後、どれほど反イスラエル感情がアラブ社会とその外に拡大していくかによると考えますが、10月19日現在、それは功を奏していると思われます。

2つめは【アラブおよび世界のイスラム系勢力への蜂起の狼煙としての役割】です。

ガザ地区へのイスラエルによる徹底的な破壊と、病院や学校が爆破され、子供たちが犠牲になる映像が流れるほど、世界各地で反イスラエルデモが過熱します。

すでにニューヨーク、LA、ロンドン、ミュンヘン、クアラルンプールなどでデモが拡大し、ニューヨークでは親イスラエルと反イスラエルのデモがぶつかる事態になっているようですが、このデモ参加者の中に、我々が“過激化イスラム系組織”と呼ぶグループがたくさん混じっていることをご存じでしょうか?

アルカイダ系はこれを機に「欧米諸国の偽善と矛盾を徹底的に指摘し、今こそ世界中で蜂起すること」を訴えていますし、ISに繋がる枝組織の構成員も“世界的なジハード”を声高に叫んでいます(注:本来の“ジハード”は、自身のなまけ心を戒める自省の戦い─精神的なものを指します)。

イスラエルによる超強硬姿勢は、パレスチナ人のためというよりは、別のゴールを掲げる者たちによって目的をすり替えられ、拡大されるきっかけを与えてしまっています。

“テロ組織”については、世界的に監視の目が厳しくなっていますが、一匹狼的(Lone Wolf)に体制への暴力的訴えに出るケースが増える中、完全な阻止は不可能になってきていますので、今後、今回のことをきっかけに眠っていた狼たちが目覚めて攻撃したり、社会に対して不満を抱いたりしている者が、社会における混乱を狙って、行動に出るという副作用も拡大する危険性をはらんでいます。

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中東における影響力をさらに低下させたアメリカ

3つ目は【イスラエルの存在に対する再戦】という目的です。

ガザ、パレスチナ人の中に根強く流れる思いは【イスラエルの建国の際に、自分たちは騙され、財産も権利も奪われた】という記憶です。

その背後にはアメリカがいて、英国がいて…その事実は今も変わらず、欧米諸国におけるガザ支援やパレスチナへの連帯というのは、イスラエルに安定と安全、そして存在を永久にデフォルト化するための虚構だという強い思いです。

それに共鳴するのが、同じくイスラエルによって責められるレバノンのヒズボラであり、シリアであり、ハマスであり、そしてハマスとは緊張関係にありますが、ヨルダン川西岸に位置するパレスチナ自治政府ファタハです。

そしてStand with the Palestineを訴えてきた周辺のアラブ諸国とイランです。

アメリカの横やりによって、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化のための協議が急ピッチで行われていたことに対して警鐘を鳴らしたのが今回のハマスの蛮行です。

最近、ウクライナ紛争の裏で、次第に国際社会だけでなく、アラブ社会におけるパレスチナへの関心と共感が薄れていることに危機感を感じ、中東問題の専門家たちの表現を借りると「アラブ社会の雄であるサウジアラビア王国を失ってしまうと(サウジアラビア王国とイスラエルが手を結ぶと)、パレスチナの問題は永久に闇に葬られることになる」という恐れから、このタイミングをハマスが選び、同じくイスラエルの脅威に曝される同胞たちの蜂起を促していると考えられます。

もしハマスの声に呼応するかのようにヒズボラやシリア、ヨルダン川西岸の勢力が同時にイスラエルに攻撃を仕掛けた場合、複数方面に戦端が開かれることになり、イスラエルの安全保障は非常に困難な状況に陥ることになってしまいます。

そしてそこにイランのみならず、周りのアラブ諸国がパレスチナとの同調を叫んでイスラエルを包囲するようなことに発展した場合、これは中東地域のみでは収まらず、国際的な紛争に発展することとなります。

それが分かっているからでしょうか。アメリカのブリンケン国務長官はアラブ諸国を歴訪し、紛争に与しないように訴えかけていますが、その努力はアメリカ軍が2つの空母攻撃群を東地中海に展開するという【Pro-イスラエルの姿勢を明確に示す行動】によって打ち消されるかかなり弱められているように見えます。

そして18日に急遽行われたバイデン大統領のイスラエル訪問において発した「アメリカはイスラエルの味方であり、それは今日も、明日も、そして今後も不変だ」という言葉と、イスラエルに対する軍事支援の約束は、確実にアラブ諸国を遠ざけ、アメリカの中東における影響力をさらに低下させることになっています。

恐らく今回のことをきっかけに失われたアラブ社会におけるアメリカへの信頼は、今後、取り戻されることはないかと思われます。

欧州各国はイスラエルによる報復を黙認しつつ、イスラエルによるガザ包囲は行き過ぎの可能性があると少し距離を置き、同時にガザに対する支援を増額することで何とか欧州に非難と攻撃の矛先が向くことを避けようとしていますが、これも“ガザの人のため”というよりは、“自分たちに火の粉が降りかからないようにするため”であり、そのことは、ウクライナへの対応以降、アラブ諸国にもアジア諸国にもお見通してあることに注意が必要です。

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どうしても消えないロシアの関与への疑念

調停グループでも、先週から急遽、中東対応に時間とエネルギー、リソースを注ぎ、イスラエルとハマスの衝突がアラブ社会に伝播することがないように周辺国に対して予防調停を行っていますが、私たちが感じる緊張感と熱は、日に日に高まっており、それがまた懸念をさらに募らせる事態になっています。

18日にヨルダンに赴き、アブダラ国王(ヨルダン)、アッバス議長、そしてエジプトのシシ大統領とバイデン大統領が会談する予定でしたが、それもガザの病院の爆撃を受けてアッバス議長が3日間服喪すると発表したことと、アラブ諸国側がバイデン大統領と会うことで予想されるアラブ社会におけるバックラッシュを懸念したため、ドタキャンされる始末になり、なかなか解決の糸口が見つかりません。

イスラエルに対して停戦を呼び掛け、ガザへの総攻撃を思いとどまるようにプレッシャーをかけることが出来るのはアメリカだけなのですが、そのアメリカがイスラエルとべったりな姿を鮮明にしてしまったことで、アメリカによるいかなる調停も非現実的なオプションになってしまいました。

今後、反アメリカの波が、中東のみならず、他の地域でも巻き起こりそうですが、18日から19日にかけてイスラエルがヒズボラに対しても攻撃を始めたとの情報は、中東地域のデリケートな安定が遅かれ早かれ崩れ始めることを予感させます。

そして4つ目ですが【どうしても消えないロシアの関与への疑念】についてです。

これまで長い間、ロシアのプーチン大統領とイスラエルのネタニエフ首相は、互いを親友と呼ぶほど、非常に近しい関係でした(そして、きっと、今もその友情は変わらないはずです)。

オバマ政権下でイスラエル軽視の姿勢が見え隠れし、一旦、トランプ政権時に関係が修復されましたが、バイデン政権になって、イスラエル・中東軽視の傾向がまた出てきたと言われています。

とはいえ、中東和平の実現のためとイランに対する牽制(特に中国がイランとサウジアラビア王国の国交樹立に一役買ってから)のために、イスラエルとサウジアラビア王国の国交樹立の仲介をしてきたのですが、その努力が水泡に帰することとなりそうです。

未確認情報ですが、今回のハマスの行動を支え、武器弾薬を支援してきたのは、イランではなく、ロシアだという情報が入ってきています。

ロシアは、ご存じの通り、自らが行ったウクライナ侵攻で非常に苦戦し、様々なリソースが割かれ、決してほかのところで大規模戦争を戦っている余裕がないはずですが、ここ数年、中東地域における影響力を著しく高めている中国と組んで、中ロのTermsでの中東地域の安定化に努めるという動きが出てきていました。

経済的なパートナーシップや軍事的な支援、そして欧米諸国とその仲間たちがロシアに科す経済制裁への不参加など多岐にわたりますが、私もまさかロシア(そして中国)の影響力がハマスにまで及んでいたとは考えてはいませんでした。

中ロともイスラエルとの良好な関係を築いていましたが、今回、それを断ち切りにかかったという見方もできます。

ただ、今、頭に血が上っているはずのイスラエル政府の高官たちは、不思議なことにロシアや中国への非難はあえて行っておらず、経済的な関係も切っていませんし、中ロもイスラエルの非難は行っていません。非常に不可解ですが、未確認情報ではこのロシアとイスラエルの微妙な距離は、水面下でネタニエフ首相とプーチン大統領がすり合わせた結果という話もあります(表立った話では10月7日以降両首脳が電話などを通じて話していないことになっていますが)。

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世界各地で動く大規模戦争に発展しかねない案件

ただ今回のことで中ロが得たものは、国際世論の非難の矛先をウクライナ・台湾・ウイグルから、中東に向けさせることで、自国に向く直接的な非難や攻撃をかわす時間的猶予です。

特に欧米諸国の目とリソースが急遽、イスラエルとガザ地区に投入される状況を作り出すことで、ゼロにはならないですが、ウクライナにおいてロシアと対峙するためのリソースと関心が割かれたり、アメリカが主導する対中攻撃の強度と頻度が低下したりしていることが分かります。

実は中国自身は、台湾の統一を宿願としつつも、軍事侵攻を本気で行うつもりも、アメリカと戦うつもりもないようですが、「アメリカはウクライナが落ち着いたら、今度は中国に戦争をさせるように仕向けるつもりだ」と北京周辺では認識されているため、その時をできるだけ遅らせるか無くすための工作を今、世界中で行っていると聞いています。

そしてプーチン大統領を北京に迎え入れることで、欧米諸国に対するプレッシャーを高め、いろいろと想像させることで、時間稼ぎを行っていると思われます。もちろんウクライナへの対応の確認、台湾有事の際の協働オペレーションの内容の協議、そしてイスラエル・ハマス問題の落としどころなどについても認識を合わせておくという狙いもあるでしょう。

しかし、ロシア政府および情報機関も、実際には10月7日のタイミングでの一斉攻撃には驚いたそうですし、中国も同じく驚き、双方ともに、すでにハマスに取られた自国民の人質が殺されるという悲劇も経験していますが、不可解なのは、そのことがほとんど両国の国内メディアで報じられていないということです。

これは一体どういうことなのでしょうか?

正直、私にもわかりません。

ここまで4つほど可能なシナリオと考えうる結果について触れてみましたが、イスラエル・ハマス問題の解決の糸口が全く見えず、今日明日にもイスラエル軍によるガザ総攻撃が予想され、さらなる悲劇が生まれることが見えてきますが、私たちの関心と目がイスラエルとハマスの攻防と、ガザで引き続き起こる悲劇の惨状に向いている間に、世界各地では大規模戦争に発展しかねない案件が多数動いています。

ナゴルノカラバフを取り戻したアゼルバイジャンは、勢いに乗って、アルメニアを攻撃するという噂が高まり、実際、アルメニアとの国境に軍が集結しているという情報が入ってきています。

ロシアによる抑止力が全く機能していない中、アゼルバイジャンが行動に出た場合、アルメニアがアゼルバイジャンを押し返す力はないものと思われ、ここでもカギは欧米諸国による支援と後ろ盾になるのですが、どこもすでにウクライナ支援に疲弊し、中東で生まれ激化している紛争に掛かり切りであるため、アルメニアのために力を注ぐ余裕がないように思われます。

アゼルバイジャンの後ろ盾のトルコは、クルド人勢力の掃討には軍事力は使っていますが、その他の紛争においては、ドローン兵器の供与や軍事訓練などにコミットメントを限り、自らが戦闘の場に出てくることはありませんので、同胞でもあるアゼルバイジャンの戦いに対して何らかの助太刀をすることは大いに考えられます。

そこに最近、トルコ、アゼルバイジャンとも関係を強化しているカザフスタンが加わると、中東アジア・コーカサスの勢力図は大きく変わることになります。

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これまでにないほどの混乱と緊張に包まれる世界

ロシアの野望に対抗するためにウクライナを支援する欧米諸国とその仲間たちも、複数フロント(正面)で大きな紛争が同時的に勃発すると、対応に狂いが生じ、大きな遅延も発生することになるでしょう。

その結果、ウクライナ支援の輪から離脱せざるを得ない欧米諸国とその仲間たちが出てきて、それはドミノのように波及し、ウクライナが振り返った時には誰もいない状況で、ロシアと対峙する必要が出てくるという、これもまた悲劇的な状況が発生し得ます。

アメリカ政府については、その実現可能性には疑問符が残りますが、11月17日に有効期限を迎える臨時予算の後継として、ウクライナ支援とイスラエル支援を抱き合わせにした予算案を提案していますが、イスラエル支援では超党派の支持は取れそうですが、ウクライナについては、打ち切られる公算が高くなってきているようです。

欧州各国は、イスラエルにシンパシーを持ち、ハマスの蛮行を非難しつつも、どうしても問題からは距離を置く姿勢が見られますし、ウクライナへの支援にいたっては、英仏独伊における国内情勢の動きとは別に、中東欧諸国がウクライナへの支援よりもまずは私たちの国を助けるべきという姿勢に変わってきており、それが今後、そう遠くないタイミングでのウクライナ支援からの脱退という事態に発展しそうな感じです。

今週に入ってアメリカ軍がウクライナに提供したM39 ATACMS弾道ミサイルが対ロ攻撃に投入され、早速戦果を挙げているようですが、ウクライナの希望とは裏腹に、下手にロシアを刺激できないアメリカが(これまで以上に、NO.1プライオリティのイスラエル支援に乗り出す必要から)ウクライナから退くというシナリオも現実化しそうな気がしてきます。

イスラエルとハマス。ロシアとウクライナ。アゼルバイジャンとアルメニア。セルビア系住民とアルバニア系住民の間での衝突が再燃してきているコソボ。ミャンマーにおける内戦の激化。大地震によって壊滅的な影響を被っているアフガニスタン…

いろいろなところで紛争が起き、新たな国際紛争の種が同時進行的に起こりそうな中、平和的解決を図るためのリソースが絶望的に不足しており、どこかで起こる戦争を調停できない恐れが出てきました。

調停グループにとっても喫緊の課題なのですが、残念ながら妙手はなかなか見つかりそうにありません。

出来る限りの努力はもちろんしますが、今後、私たちが生きる世界は、これまでに経験したことがないほど混乱と緊張に満ちたものになるかもしれません。

以上、今週の国際情勢の裏側でした。

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image by: Anas-Mohammed / Shutterstock.com

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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