震度7の激震に襲われた能登半島は、多額の国家予算を注ぎ込んで作成される「全国地震動予測地図」でノーマークの地域でした。では逆に、発生確率が高いとされる南海トラフ巨大地震や首都直下地震は?これに関して、ジャーナリストの辛坊治郎さんは「日本ではいつでもどこでも大地震がくると覚悟して対策しなければならない」とした上で、公的機関の発表する「地震発生確率」が人為的に歪められている可能性を指摘します。(『辛坊治郎メールマガジン』より)
「全国地震動予測地図」は信頼に足るか
文部科学省傘下の研究所の一つに、毎年100億円を超える予算を確保している「防災科学技術研究所」という組織があります。
この研究所が毎年改訂、発表しているのが「全国地震動予測地図」です。
正式に国家予算を使って「研究」している研究所の発表はメディアにとても重要視されていて、改訂版発表の度に、新聞は全紙大で地震発生確率ごとに色分けされた日本地図を掲載します。
この地図が掲載されるたびに、新聞の読者は、自分の住んでいる場所をこの地図から探し出して正に「一喜一憂」するわけです。
「ノーマーク」だった能登半島で震度7
この地図の最新版は昨年の7月18日に公開され、「2023年1月を地震発生確率算定基準日」にした地図が昨年夏に新聞紙上に載りました。
この地図、関東地方から紀伊半島南部、四国に至る太平洋側が地震の高発生確率を意味する紫から赤で塗り潰されている一方、日本海側の地震発生確率は概ね低く、薄い黄色が目立ちます。
その中でも特に色が薄いのが能登半島です。この地図は今でも「防災科研」のホームページで見られますから、皆さんの目で確認してみてください。
能登半島ではここ数年、群発地震めいた地震が発生していてそれなりに警戒感を持つ人は多かったでしょうが、昨年7月発表の地図で、「専門家」が、「能登半島は日本で一番、震度6弱以上の地震発生の確率が低い地域」と言っている訳ですから、耐震診断や耐震補強に金を出そうという人は少数派だったでしょう。
何せこの地図は、全国の自治体が「我が地域は地震発生確率が低い」と堂々と企業誘致の材料に使って来たほど重要視されていますからね。
例えば熊本の自治体が、熊本地震発生まで、この地域の「地震発生確率」が極めて低い事を「魅力」としてアピールポイントに使って企業誘致していたのは有名な話です。
その後、熊本が阪神淡路大震災と同規模の直下型地震に見舞われたのは誰でも知っています。今後、この手法で企業誘致した自治体は、大地震の後に企業から訴えられる可能性すらあります。だって、これって「詐欺」みたいな話ですからね――等々、ラジオなどで主張していたら、私の元に一冊の本が送られて来ました。
「南海トラフ」は口実?背景に地震利権
これは東京新聞(=中日新聞)の小沢慧一さんという記者が書いた『南海トラフ地震の真実』という本です。
前書きの中に「防災行政と表裏一体となって進むことで膨大な予算を得てきた地震学者が、行政側に言われるがまま科学的事実を伏せ、行政側の主張となる確率を算出した」とあります。
この記事の著者・辛坊治郎さんのメルマガ
「地震大国日本」を食い物にする者たちの正体
この本は、一部の地震学者の「今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は70~80%」という主張について、その主張の根拠となった一つ一つの事実を洗い出すことによって、いかにこの「確率」なるものが科学的でないかを論証しています。
ちなみに、先の全国地震動予測地図について、「プレート型地震の発生確率を示したもの」という意図的な誤報が流布されていますが、この地図は、地震学者が主張する「活断層」についての発生確率も記載した地図です。
能登半島、特に半島先端部は、今回の地震まで全く「ノーマーク」だったのです。
そしてまたも地震学者の口から出たのは、「未知の活断層が~」「海中の活断層が~」という言葉でした。
阪神淡路大震災の時には「あそこに活断層があるのは知っていた。地震学者の間では危険性は認識されていた」と地震学者たちはこぞって言いました。
「未知の活断層」にせよ、「活断層の存在を知っていた」にせよ、そこに住んでいる人に「地震は他人事」と思わせた罪は大きいです。
そもそも、「活断層が周期的に地震を起こす」という地震確率計算の根拠となっている理論は、世界の地震学者の間では否定されています。
※編集部註:辛坊治郎氏の見解。一方、小沢慧一氏は理論自体は否定せずに地震発生確率算定の問題点を指摘する
活断層というのは「数十万年前以降に繰り返し地震を起こし、今後も地震の原因となり得る断層」という定義ですが、地下にひずみが溜まったら、「過去数十万年前以降に切れた断層」以外の場所が地震原因になることは十分あり得る訳で、「活断層があるところでしか直下型の地震は起きない」訳では決してありません――
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