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なぜ、小野田少尉は「ジャングルに30年間一人で潜伏」しても孤独ではなかったのか?

フィリピンのルバング島で、終戦後も30年間にわたって潜伏し続けて生還した小野田元陸軍少尉。当時は多くのメディアが彼の帰国を報道しました。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』で紹介しているのは、小野田氏のルバング島での体験を聞いた貴重なインタビューです。

ルバング島で30年間潜伏、元陸軍少尉の小野田寛郎氏に「孤独感」がなかった理由

フィリピン・ルバング島のジャングルで、太平洋戦争終了後も約30年間潜伏し、生還した元陸軍少尉の小野田寛郎氏。

『致知』2008年7月号に掲載された記事より、心に残る話をご紹介します。

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ルバング島にいた30年間で発熱は2回でした。

それは仲間が負傷して、介護疲れでちょっと出しただけです。

熱が出たところで、医者も薬もないですから、まずは健康でいることが大事です。

そして健康でいるには頭をよく働かせなければダメです。自分の頭で自分の体をコントロールする。健康でないと思考さえ狂って、消極的になったりします。

島を歩いていると、何年も前の遺体に会うこともあるんです。それを埋めながら、「早く死んだほうが楽ですね」と仲間に言われ、本当にそうだなと思ったこともあります。

獣のような生活をして、あと何年したらケリがつくか保証もないですし、肉体的にもそういつまでも戦い続けるわけにもいかない。

いずれはこの島で死ななきゃいけないと覚悟しているので、ついつい目の前のことに振り回され、「それなら早く死んだほうが……」と思ってしまう。

結局頭が働かなくなると、目標とか目的意識が希薄になるんです。だから、仲間と喧嘩をするのも、頭が働かずに正しい状況判断ができない時でした。

右に行くか、左に行くか。そっちへ行ったら敵の待ち伏せに遭うから嫌だと言う。

しまいには、「隊長は俺たちを敵がいるところへ連れて行くのか、そんな敵の回し者みたいな奴は生かしておけない」と言って銃を持ち出します。

「馬鹿、早まるな。やめろ」と言えばいいんですけど、こちらもついつり出されて銃を構えてしまう。

しまったと思って、「じゃ命があったらまた会おう」と言って回れ右して、僕は自分が行こうと思っていた道を行くのですが、背中を見せるわけだから、そこで撃たれたら死んでいました。

だから僕らの場合は議論をするにも命懸けでした。

いずれにしても、頭がしっかり働かなくなると正しい状況判断ができなくなる。

よく孤独感はなかったかと聞かれましたが、僕は孤独なんていうことはないと思っていました。

22歳で島に入りましたが、持っている知識がそもそもいろいろな人から授かったものです。すでに大きな恩恵があって生きているのだから、決して一人で生きているわけではないのです。

一人になったからといって昔を懐かしんでは、かえって気がめいるだけですから、一人の利点、それを考えればいいんです。

一人のほうがこういう利点があるんだと、それをフルに発揮するように考えていれば、昔を懐かしんでいる暇もなかったです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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