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北朝鮮が「岸田首相は訪朝するかも」などと口にし始めた訳。水面下の日朝交渉は難航か

昨年末、突如として韓国を「敵対的な交戦国」とし、南北統一の立場の放棄を宣言した北朝鮮の金正恩総書記。ロシアとの急接近が伝えられる北朝鮮ですが、韓国との戦争をも辞さない姿勢を見せ始めた裏にはどのような事情があるのでしょうか。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では國學院大學栃木短期大學兼任講師の宮塚寿美子さんが、韓国を敵国認定した北朝鮮国内で起きている変化を紹介するとともに、金総書記の思惑を解説。さらに総書記の妹である金与正氏が、岸田首相の訪朝の可能性を口にしだした理由を考察しています。

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2024年2月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

韓国は敵国。北朝鮮から「統一」が消える

2023年12月26日~30日に北朝鮮で開かれた党中央委員会総会で金正恩総書記は、「北南関係はもはや同族関係ではない敵対的な二つの国家関係、戦争中の二つの交戦国関係に完全に固着した」、と述べた。韓国を「敵対的な交戦国」と位置付け、「統一を志向する特殊関係」という従来の立場を放棄したのである。

その後、金総書記は、2024年1月15日に行われた最高人民会議では、「共和国の民族の歴史から『統一』、『和解』、『同族』という概念自体を完全に除去しなければならない」と演説したのである。この演説から、次々と北朝鮮から「統一」が除去され始めたのである。

まず、平壌市内にある南北の統一を象徴する「祖国統一3大憲章記念塔」である。2006年6月に初の南北首脳会談などで統一を求める機運が生まれたことを受け、2001年8月に故・金正日総書記が建てたものである。記念党は平和統一通りにあるアーチ形の建物であり、観光スポットとしても知られていた。

その後、北朝鮮外務省のウェブサイトに掲載されている北朝鮮の国歌「愛国歌」の歌詞のうち「三千里の美しいわが祖国」という部分から「三千里」の単語が削除され、「この世界美しいわが祖国」へと変更されていることが確認された。他にオンラインで確認できるものに、北朝鮮の貿易と投資に関する専用サイト「朝鮮の貿易」では、赤く塗られた朝鮮半島が含まれる世界地図が削除された。北朝鮮の対外向け出版物を発行する外国文出版社が運用するサイト「朝鮮の出版物」からも朝鮮半島の画像が削除された。

このように次々と韓国を除外し、「統一」が消えていっている。最新で判明したものでは、2月20日駐朝ロシア大使館のFacebookによると、北朝鮮の首都平壌を走る地下鉄の「統一」駅の名前から統一が削除され、単なる「駅」とのみ表示されていたと確認された。これら一連の変化は、金総書記が韓国との平和統一を放棄する政策転換を表明したことを受けた措置のためである。

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では、なぜこのような政策転換に進んだのか気になるところである。いくつかその背景が考えられる。筆者は、まずは、2019年の米朝首脳会談の決裂にも起因すると考える。そして現在まで行われている核開発の進展が大きく後押ししていると考える。また、社会面では、脱北者の脱北理由には、韓流文化の浸透で韓国への憧憬が大きな割合を占め、体制維持のためには、経済力の差が大きい南側の韓国に「吸収統一」を避けたいからである。

韓国側の衝撃もさながら、「祖国統一」を信じてきた在日朝鮮人の思いは如何ばかりか…。

金与正氏が「岸田首相が平壌を訪れる日が来るかもしれない」など日本との関係をめぐる異例の談話を発表した。これは、日本側の今後の出方を注視する姿勢を示し、日米韓3か国の連携に揺さぶりをかける狙いもあるが、水面下の日朝間の交渉は難航していることの表れでもあると考えられる。

(國學院大學栃木短期大學兼任講師 宮塚寿美子)

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  • 【198】2.【北朝鮮便り】韓国は敵国。北朝鮮から「統一」が消える(2/20)
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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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