アメリカ古典大衆小説である「ぼろ着のディック」という本をご存じですか? 150年以上読み継がれてきたそのお話には、多くの自己啓発エッセンスが詰まっていました。無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の著者である土井英司さんが今回、その一冊をご紹介しています。
【貧しくても成功する人の共通点】⇒『ぼろ着のディック』
『ぼろ着のディック』
ホレイショ・アルジャー・著 畔柳和代・訳 KADOKAWA
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する『ぼろ着のディック』は、150年以上読み継がれてきたという、アメリカ古典大衆小説の隠れた名著が、初めて文庫化したもの。
著者のホレイショ・アルジャー氏は、1899年に亡くなっていますが、著書累計が2000万部以上売れたと言われるベストセラー作家だったようです。
アルジャー氏は、牧師の子に生まれ、1866年3月にニューヨーク市に出て、新聞売りの宿泊施設に少年指導の牧師の口を見つけ、少年たちと寝食を共にし、一連の作品は、その時の体験が元になっているそうです。
主に、少年向けに100編以上の物語を書いたそうですが、本書はその記念すべき第一作。
みすぼらしい身なりの靴磨き少年ディックが、ひょんなことからチャンスを掴み、蓄財に成功し、教養を身につけていく話で、ストーリーからは、人間が重用されるための大事なポイントが見えてきます。
経済的成功と人間的成功、両方を手に入れるために何が必要か、深く考えさせられる物語です。
貧しいその日暮らしの少年が、友情と一張羅を手に入れ、蓄財に成功し、教育を受けて良い職を得る。
時に嫉妬に遭い、時に財産を奪われかけながらも、周囲の友人や恩人と一緒に成功していくディックの姿に、人生の真理を見る気がしました。
なぜ人間に教育が必要か、道徳が必要か、説教なしでわからせてくれる、素晴らしい作品だと思いました。
大人が読んでも感動的ですが、これはぜひ少年たちに読ませたいと思いました。
さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
にもかかわらず、ディックには長所もいくつかあった。卑怯なことや不名誉なことはしない。決して盗みはしないし、人を騙さないし、年下の少年に無理強いもしなかった。率直で、ごまかしがなく、男らしく、自立心がある少年だった。気高い性分の持ち主だったおかげで、ありとあらゆる卑劣な弱点はまぬかれていた
「これは、じいちゃんが子どもの頃かぶっててさ、死んだじいちゃんに敬意を表してずっと大切にしてきたんだ(略)」
「もちろん、きみが世の中で成功していくのを見たいんだ。読み書きができないと、その可能性はあまりないよね」
「人が言ったからって、本当にそうなるわけじゃないよ、ディック。ひとかどの人になろう、社会のまっとうな一員になろうと努めれば、いつかそうなるよ。お金持ちにはなれないかもしれない。誰もがなれるわけじゃないから。でも、いい職を得て、まわりから尊敬されるようにはなれるよ」
「きみは最初から正しいやり方をしているんだよ。どんな誘惑があっても決して他人の物を盗らない、ずるいことも恥ずべきこともしない、と決めたときから。そうすれば、きみと知り合う人はきみを信頼する。でも、うんと出世するには、どうにかしてなるべく教育を受けないと。そうしないと事務所や会計室で仕事の口は得られない。ただの雑用係としてもね」
「(略)印刷所にいた頃に手に入れて、お金よりも大事にしているものがある」
「なんですか?」
「読書と勉強が好きになったこと。ひまなときに勉強して自分を高めた。いま知っていることの大半はそのとき身につけた。あとで発明の糸口をくれたのも、その頃読んだ本なんだ。だから勉強する習慣は、ためになったし、お金にもなったんだ」
「労働に貴賎はないんだよ。まっとうな稼業を恥じる理由はない。でも、将来の見込みがもっとよくなる仕事につけるときが来たら、そちらを取るといい。それまでは慣れた方法で生計を立て、ぜいたくをつつしんで、できればお金を少し貯めるんだ」
自分ほど恵まれていない友を手助けしよう、自分が上へ登りながら、友が梯子段を上がってゆけるよう手を貸そう
いわゆる格言っぽいものがあるわけではありませんが、読者は、人生で大事な教えを行間から読み取ることができます。
貧しいながらも決して盗みはせず、卑怯なことも不名誉なこともしなかったディック。
親ならば、きっとこんな風に子どもを育てたいと思うのではないでしょうか。
「アメリカンドリームの原点、自己啓発の源流がここにある」という帯コピーに誘われて読みましたが、これは良い読書体験になりました。
ぜひ、読んでみてください。
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