地域住民の集う場として日本全国の市区町村に設置されている公民館。そんな公民館を静岡県浜松市は「協働センター」と呼び、特色ある運営を行っているといいます。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」学長の引地達也さんが、同市で開催された会合に参加し実感したという、視点を変えることにより広がる「公民館の役割」と、現場の職員が語った協働センターの目指すべき方向やそのために重ねている努力等を紹介しています。
利用か居場所かそれとも─、融合で変わる公民館の位置づけ
静岡県浜松市では公民館を「協働センター」と呼び、地域の住民をつなぐ役割を担っている。
このたび、同市で開催された文部科学省主催の共生社会コンファレンスに出席し、私はあらためて公民館の役割は視点を変えることで行動が広がることを実感した。
浜松市市民部市民協働・地域政策課によると、市内には34の協働センターと9のふれあいセンターがあり、各所にコミュニティ担当職員を配置し、昨年度の時点で人員は81人から124人に増加したという。
センターが「目指す姿・期待すること」は、「住民にとって最も身近な相談窓口」「人が集う気楽な場所」「その地域ならではの活動」と明示する。
つまり、地域住民の利用を促す、というよりは地域の中に溶け込む場所として機能することが大きな方向として示されている。
さて、実際の現場はどうだろう。
浜松市北部協働センターの佐藤拓男さんは施設の大切していることとして「協働センター、人が集いつながる場所であれ」「理想は高く、足は大地に」「やらまいかを応援」「よいアイディアは雑談から始まる」を説明した。
地域がつくるイベントは延べ1,645人が参加したが、ここでは、中学生ボランティアが大人と力を合わせての企画を実行しており、地域のイベントとして根付いていることや、地域の学びの場、居場、地域のリーダー的人材の育成の場になっているという。
これは「地域が主役。職員は仕掛け役」に徹することが大事だと強調する。「地域に根差した施設、人が集う場」にするためにも「『つなぎ役』『調整役』に徹すべき」で、「スーパー地域人」(キーパーソン)の発掘・育成が重要、との認識を示した。
この記事の著者・引地達也さんのメルマガ
浜松市冨塚協働センターの野嶋京登さんは「地域コミュニティの原点は楽しい時間を共有すること」として、そのために「1.エリア特性を知る」「2.声・要望・提案などを受ける」「3.声・要望・提案などをカタチにして実現する」「4.相互交流・みんなのために何かやろう!」のプロセスを提示した。
「一番大事なのは、信頼関係を築く」こととし、関係する人の名前を知ることはもちろん、特技を知ることの効果を話した。
同センターでは「あおぞら公民館」「ワークショップヤーヤーヤー」「ゴミゼロフェスタ」等の多くのイベントが開催されており、「やりたいことをかなえさせる」ことで「多様な人が来るのではないでしょうか」と話した。
これらを「イベントで終わりにするのではなく、どうやっていくか」を考えること、「声・要望をカタチにして実現」することで結果的に「生活・地域・社会の課題解決の糸口になる」と整理した。
一方で誰でも集う場所としては福祉領域との連携は欠かせないが、浜松市社会福祉協議会浜松地区センターの鈴木光昭さんの説明では、地区社協の活動として「見守り」「居場所」等が重要で、家事支援活動は35地区で展開、地域カフェも広がっているようだ。
これは生活支援体制整備事業として地域での生活支援の位置づけで、「重層的支援体制事業」を実施しており、これは複雑化・複合化したニーズに対応する包括的な支援体制を整備し、個別の支援と地域への支援を通じて行うもの。
「包括的相談支援事業」「多機関協働事業」「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」がある。
鈴木さんは、これらの事業を通じて「他業種・他職種との関わり合いに新たな可能性」を見出しているとし、「お互いののりしろが力になっていく」と話す。
協働センターとの連携はこれからの課題だが、福祉と協働センターが大きな目標を共有できれば、その融合は必ず面白い化学反応をもたらすと思う。
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