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Japanese pub beer cheers

種類と量に気をつければお酒は割と楽しめる。現役医師が明かす糖質制限とアルコールの関係

糖質を摂取することで脂肪が蓄えられるメカニズムについて、前回記事「肥満ホルモン」インスリンが関与。内臓脂肪と脂肪肝の違いとは?で説明した、メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者で糖尿病専門医の江部康二先生。今回は、糖質制限中のアルコール摂取について詳しく解説。飲んでいいお酒とNGなお酒を上げ、糖質制限食を実践する先生自らが、夕食や晩酌でどういうお酒をどのくらい飲んでいるかを明らかにしています。ただし、アルコールの摂りすぎには弊害がさまざまあるとして、適量を意識することを薦めています。

内臓脂肪と脂肪肝、アルコールと糖質制限食の関係について その2

Question

内臓脂肪と脂肪肝は別のものでしょうか?糖質制限食ではアルコール摂取をどう考えればよいのか教えて下さい。

江部先生からの回答

今回は2つ目のご質問、糖質制限食とお酒に関する考察です。糖質制限食実践において、お酒は飲んでも良いのですが、OKのものと、NGのものがあります。

まずは、OKのお酒ですが、蒸留酒があります。蒸留酒には糖質は、ほぼ含まれていません。原料が麦でも芋でも米でも黒糖でもOKで、ウィスキー、焼酎、ウォッカ、ジンなどがあります。

醸造酒には糖質が含まれているので、原則的にはNGです。普通のビールや日本酒や紹興酒はNGです。

その中で、糖質ゼロビールや発泡酒は大丈夫です。最近、糖質ゼロビールを、大手のキリン、サントリーが販売しているので糖質セイゲニストには嬉しいですね。

ワインも、日本食品標準成分表では、糖質含有量は100mlあたり、白ワインは2g、赤ワインは1.5gとなっていますが、辛口であればもっと少ないので、2~3杯(200~300ml)はOKです。

私の場合、夕食~晩酌で、糖質ゼロビール350m1本、赤ワインをボトル1/3、25%焼酎のロックを2~3杯くらいです。適量より、やや多めですが、肝機能など全て正常です。

赤ワインは、最近はピノノワール単独が多いです。カリフォルニアワインやオーストラリアやニュージーランドワインを飲んでいます。おつまみは、天日干しスルメ、チーズ、焼き海苔、糖質の少ないナッツなどです。

◆糖質制限食OKのカクテル

私はたまにしか飲みませんが、カクテルも一部OKです。昔読んだ、レイモンド・チャンドラーの名作『長いお別れ』の中で、私立探偵フィリップ・マーロウが好むカクテルがギムレットです。

『プレイバック』のフィリップ・マーロウの決めセリフ「タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない」(生島次郎訳)(If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive. If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.)かっこいいですね。人生で一回ぐらい言ってみたいです。

結局、糖質制限OKカクテルはジンベースかウオッカベースが多いです。
・ジンベース
ギムレット、ジンライム、ジンリッキー、マティーニ
・ウオッカベース
ブラディーメアリー、ウォッカマティーニ

◆アルコールと血糖低下作用

アルコールには、血糖低下作用があります。しかし、個人差が大きいので、(A)gのアルコールが血糖値を(B)mg、低下させるというように一律にはいきません。

エネルギー源としては、[アルコール→糖質→脂質→タンパク質]の順で利用されます。焼酎、ウィスキーなど蒸留酒には糖質は含まれていないので、血糖は全く上昇しません。

しかし、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて、優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。

血中アルコール濃度が上昇している間は、糖新生はブロックされるので、個人差が大きいと思いますが、酒を飲んでいる最中は、血糖値が下がる人もいると思います。

また、一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。アルコールの血糖低下作用については個人差が大きいので、ご注意ください。

なお、SU剤内服中の糖尿人やインスリン注射中の糖尿人は、過度のアルコール摂取により糖新生が阻害されると低血糖になりやすいので要注意です。正常人でも、空きっ腹で大量のアルコールを摂取すれば、低血糖になる可能性もあります。

◆アルコールの適量

世界がん研究基金2007年の勧告では、アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。1杯はアルコール10~15グラムに相当します。

米国糖尿病学会は、アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
・ビール(5%)なら600ml
・ワイン(15%)なら200ml
・ウイスキー(43%)なら70ml
・焼酎(25%)なら120ml
・糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
に相当します。

◆アルコールのリスク

世界がん研究基金の2007年の勧告で、アルコール摂取は、「口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん」の確実なリスクであり、「肝臓がん、大腸がん(女性)」のリスクとなるので要注意です。

それから、過度のアルコール摂取は、肝細胞内での脂肪酸からの中性脂肪の過剰合成を引き起こします。その一部は肝臓外へ分泌されて高中性脂肪血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。

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image by: shutterstock.com

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(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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