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習近平とプーチンは大喜び。イラン核施設破壊に巻き込まれるアメリカが「全面戦争」を望まないワケ

4月19日、イランによる初の「本土攻撃」への報復としてドローンでのイラン直接攻撃に踏み切ったイスラエル。各国大手メディアはこの攻撃を警告の意味合いが強い「限定的」なものであったと報じていますが、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは「別の見方」もあると言います。今回北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、イスラエルの攻撃が大規模作戦前の「偵察」である可能性を示唆。さらにイランの核施設破壊を目論むイスラエルとアメリカ両国首脳が今後の展開に関して頭を悩ませていると見て、その理由を解説しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:今度はイスラエルがイランを攻撃。その「実に悩ましい現状」とは?

「4正面作戦」を望まぬアメリカを何としてでも巻き込みたいイスラエル

全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。

今度はイスラエルが4月19日、イラン攻撃を行ったようです。『日テレニュース』4月20日。「“イスラエルがイラン攻撃”当局者が認める 米メディア報道」

イラン中部の空軍基地への無人機による攻撃について、アメリカのメディアは、複数のイスラエル当局者がイスラエルによる攻撃であることを認めたと報じました。

 

中部・イスファハン近郊の空軍施設への攻撃について、イランのメディアは、防空システムによって3機の無人機が撃墜されたと伝えました。

 

イスラエルは正式な声明などは出していませんが、「ニューヨーク・タイムズ」は2人のイスラエル当局者などがイスラエルによる攻撃であることを認めたと報じました。さらに、他のアメリカメディアはこの攻撃について、「限定的だった」という見方も伝えています。

ここまでの流れを、とてもざっくり振り返ってみましょう。

まず、2023年10月7日、ハマスがイスラエルを奇襲し、民間人を虐殺しました。イスラエルがこれに反撃し、戦争がはじまりました。イスラエルの攻撃は非常に激しく、「民間人の犠牲が大きすぎる」と批判されています。

ハマスの黒幕はイランです。そして、イランの手下の、レバノン・ヒズボラ、イエメン・フーシ派などが、イスラエルを攻撃しています。

2024年4月1日、イスラエルは、シリアのイラン大使館を攻撃。イラン軍の将官を含む13人が亡くなりました。

2024年4月13~14日、イランは多数のミサイルとドローンでイスラエルを攻撃しました。ちなみに、イランがイスラエルを直接攻撃するのは、これがはじめてです。

そして、2024年4月19日、今度はイスラエルがイラン領を攻撃しました。ドローンによる攻撃だったようです

※ ちなみに、「なぜそもそもハマスはイスラエルを攻撃したの?」に関しては、これまで何度も書いてきたので、今回は触れません。「報道されていないから理由がわからない」という方は、必ず以下の記事をご一読ください。

【関連】イランがイスラエルを報復攻撃。なぜイスラエルはイラン大使館空爆という“挑発”に出たのか?(『まぐまぐニュース』4月16日付)

今回の攻撃、国際社会は「限定的だった」という見方で一致しています。「中東大戦争に発展しないで、世界中がホッとしている」といった感じでしょう。

しかし、今後の展開については、二つの見方が存在します。

一つは、「イスラエルは、イランとの全面戦争を望まない。国内世論を考えて報復しないわけにはいかないが、限定的にすることで、イランからの再反撃を抑えた。つまり対立の鎮静化を図っている」というもの。

もう一つは、「今回のは、大規模な作戦を行う前の『偵察攻撃だった』」というもの。

習近平とプーチンが望む「イスラエル―イラン全面戦争」への米の参戦

今まで何度もお話ししましたが、イランは昨年3月時点で、ウラン濃縮度を83%まで上げていました。さらに、昨年9月、「IAEAの査察を拒否する」と宣言した。なぜ?おそらく、ウラン濃縮度が90%を超え、核兵器を作れる状況になったのでしょう。イランの手下のハマスが、イスラエルを奇襲したのは、その1か月後の昨年10月です。

イスラエルは、日本でいえば四国ぐらいの大きさしかありません(イランの領土は、日本の4.4倍!)。イランは、イスラエルを国家承認しておらず、反イスラエルが国是です。そんな国が一発でも核兵器を保有することは、四国並の領土のイスラエルにとっては、まさに「国の存亡をかけた危機」になります。だから、なんとしても、イランの核施設を破壊したいところでしょう。

こういう現状から見ると、イスラエルとしては、「なんとかしてアメリカも巻き込んで、イランの核施設を破壊したい」という流れだろうと思います。そして、北朝鮮の核保有を許してしまったアメリカも、イランの核計画をつぶしてしまいたいはずです。

ところが、「ウクライナ―ロシア戦争」「イスラエル―ハマス(黒幕イラン戦争)」を戦うアメリカは、「中国、北朝鮮の動向」も考える必要があります。

イスラエル―イランの全面戦争が起こり、アメリカがイスラエル側について参戦すれば、まずウクライナを支援する余裕がなくなり、プーチン・ロシアが大いに喜びます。そして、習近平は「ライバルアメリカは、勝手にロシア、イランと戦って弱体化していく!」と、笑いが止まらなくなるでしょう。人民解放軍幹部は、「アメリカがロシア、イランと戦っている今が、台湾に侵攻する千載一遇のチャンスですぞ!」と進言することでしょう。

というわけで、現在の状況をまとめてみましょう。

現状は、そんな感じなのでしょう。

あなたがネタニヤフ首相だったら、バイデン大統領だったら、どう動きますか?想像してみると、「実に悩ましい現状」であることが理解できるでしょう。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年4月20日号より一部抜粋)

image by: Benjamin Netanyahu – בנימין נתניהו - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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