北朝鮮と中国それぞれの首脳が散歩をしながら談笑した記念の足跡銅板、これが撤去されていたことがわかりました。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、その詳しい内情を紹介しています。
「中朝密月の象徴」金正恩の足跡銅板が中国から消えた
2018年5月、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の中国大連訪問当時、習近平国家主席と散歩しながら親交を深めたことを記念して設置されたとされる「足跡銅板」が最近除去されたことが分かった。
6月10日、複数の消息筋によると、当時の金正恩と習主席が散歩しながら談笑した大連郊外の休養地、防秋伊島(バンチュイダオ)の海辺にあった足跡の銅板を今は見つけることができない。
北朝鮮事情に詳しい消息筋を通じて中央日報が入手した最近の写真によると、銅板があった場所には黒いアスファルトコンクリートで覆った跡だけが残っている。中央日報は過去に銅板が設置されている写真も入手したが、そこには同じ方向に向かう2組の足跡が並んで写っていた。
中国側が特別に銅板設置と関連した事実を公式に発表したことはないが、現地では金正恩と習主席が散歩したことを記念して両首脳の足跡を真似て作ったと広く知られているという。
このような状況から見て、外交界では朝中両国首脳の足跡を消したのは、習主席の承認がなかったら不可能なことだという分析が出ている。該当事案に詳しい現地消息筋は「中央から指示が降りてきて除去した可能性が高い」と話した。
別の消息筋は、「バンチュイダオビーチ近くの食堂の『7号閣展示室』も閉鎖されたと聞いている」とし、「該当展示室には金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)がバンチュイダオを訪問した当時の写真などが展示されており、金正恩も訪問したところだ」と話した。
足跡銅板と展示室閉鎖の正確な時点は確認されていないが、現地でもこのような一連の措置が通常ではないと見る見方が多いという。
統一研究院のオ・ギョンソプ研究委員は「このような変化は朝中関係に問題があったり、どんな理由であれこれ以上銅板を維持・管理する必要性がなくなったためと見られる」と話した。
当時の朝中の出会いの象徴性を考慮すれば、こうした疑問はさらに深まる。金正恩は当時、ドナルド・トランプ米大統領との1回目の朝米首脳会談(2018年6月12日)直前に大連を電撃訪問した(同年5月7~8日)。
事実上「作戦会議」だった。専用列車ではなく、専用機(チャムメ-1号・IL-62M)で訪中した金正恩は、公式会談歓迎晩餐-バンチュイダオ海岸散策-昼食へとつながるハードな日程を習主席とともに消化したが、ハイライトは海辺散策だった。
当時、両首脳は通訳だけ同行したまま並んで歩き、親交を誇示した。防秋伊島(バンチュイダオ)は毛沢東時代から中国指導者たちがトップクラスの外国人との会談や休養のために訪れたところだ。金正恩の祖父である金日成主席も数回訪問した。金正恩と習主席の「散歩外交」がここで行われた背景でもある。
中国官営CCTVは、両首脳の防秋伊島の海辺散歩場面を繰り返し放映し、習主席の「ソフト外交」を浮き彫りにしたりもした。朝鮮中央通信によると、金正恩は中朝関係を「新しい全盛期」「切り離せない一つ」と表現し、習主席は「両国は運命共同体、変わらない順治の関係」と答えた。
このように朝中関係の完全な復元を象徴する首脳間の出会いが行われた場所で銅板が消え、展示室が閉鎖されたことについて両国間の異常気流が流れる兆候と見る見方もある。
実際、北朝鮮外務省は先月27日、韓日中首脳会議直後、中国までまとめて批判する談話を出すなど異例の態度を示した。北朝鮮は同日深夜には、軍事偵察衛星の打ち上げを強行した。金正恩が中国に対して露骨に不満を示したものと解釈できる。
これについて外交筋は「中朝国交正常化75周年を迎える年なのに、中国の態度が非常に厳しいと北朝鮮は見ているようだ」と伝えた。また、今年4月の全国人民代表大会(全人代)常務委員長の訪朝と関連し、「当時も序列3位が北を訪問したが、事実上贈り物はなかったため、北朝鮮の不満が大きかったと聞いている」と述べた。
中国が昨年11月の米中首脳会談で米国と衝突防止のための「ガードレール」構築に合意する一方、最近になって韓国と日本など米国の同盟国と関係管理に乗り出すのも金正恩としては焦りを募らせるに足る動きだ。中国は不法武器取引を軸とする朝露間の密着にもある程度は距離を置いている。
これは本質的に北朝鮮と中国が血盟であり伝統的な友好関係だが、韓米同盟のような価値同盟とは性格が違うためだという見方もある。党対党での交流を基盤に理念を共有しながらも、それぞれの利害によって関係の優先順位設定を変えてきたのが現実だ。
2013年3月の習主席就任直後、中国は北朝鮮よりも韓国に密着する姿を見せた。2016年の高高度ミサイル防衛システム(THAAD・サード)配備決定で韓中関係が急転直下したものの、その前までは習主席は前例を破って北朝鮮ではなく韓国を先に訪問したほどだった(2014年7月)。習主席と金正恩間の首脳会談は2018年、習主席の訪朝は2019年6月に初めて行われている。[中央日報参照]
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