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アメリカ任天堂の元社長の自伝を批判する人が見えていない視点

任天堂の最大子会社であるアメリカ任天堂。その元社長兼CEOの自伝がさまざまな意味で話題となっているそうです。今回、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』著者である土井英司さんが、そんな話題の一冊を紹介しています。

【企業がグローバルで成功するには】⇒『崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男』

崖っぷちだったアメリカ任天堂を復活させた男

レジー・フィサメィ・著 東洋経済新報社

こんにちは、土井英司です。

本日ご紹介する一冊は、任天堂の最大子会社、アメリカ任天堂(Nintendo of America:NOA)の元社長兼COO、レジー・フィサメィ氏による自伝。

コーネル大学、P&Gを経て、アメリカ任天堂入社。2006年に社長兼COOに就任。2016年には任天堂本社の執行役員にもなった人物で、主にマーケティングが得意な方のようです。

既にアマゾンのカスタマーレビューにも書かれているように、自画自賛がひどく、「私」を多用した文体に閉口します。

土井も100ページくらい読んで、紹介するのをやめようと思ったのですが、「待てよ」と思い、残りを読んでやっぱり紹介することにしました。

現在の日本企業の活路は、明らかに「グローバル市場」にあるわけですが、そこで成功を収めるためには、異なる市場のルール、宣伝のルールを理解する必要があります。

著者が何度も経営陣とぶつかり、その度に海外市場の違いを説明して論破してきたエピソードを読んでいるうちに、これは日本企業が今、受け入れなければならないことなのだと思うようになりました。

CMで表現される家族や人間関係、プライシング(値づけ)、セット販売やネーミング…。

著者のマーケティング視点を知るうちに、これからの日本企業の経営者は、こうした視点を持つべきであると思うようになりました。

そして任天堂は、こうした視点を取り入れ、最終的にできる経営者に一任したからこそ成功したと言えるでしょう。

著者の仕事術、人生君が50のポイントとしてまとめられており、ここもサラリーマン処世術として読むと面白いと思います。

今回ピックアップしたのは、ほとんどがエピソードですが、ノウハウよりむしろエピソードを読んで欲しい一冊だと思います。

さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

どのゲームのCMも、今や有名なこの文句から始まる。

「Wii would like to play(Wiiがあなたとの対戦を待っている)」

私は広告代理店レオ・バーネット・ワールドワイドと共同で手掛けたこのCMを支持し、出来上がったものを事前に岩田氏にも見せていた。(中略)日本の任天堂の経営陣は、CMに出ている日本人ビジネスマンの、西洋の家族との接し方が馴れ馴れしくて、くだけすぎていると感じていたらしい。

「レジー、CMを変えてほしい」(中略)

これまで私がCMに携わってきた経験からいっても、この指摘は間違っている。(中略)話し合いが煮詰まる中、私は言った。

「ミスター・イワタ、あなたが私を任天堂に呼んだのは、任天堂の世界最大の販売地域に強力なマーケティング担当者が必要だったからですよね。あなたは私の業績をご覧になってきたし、私を昇進させてくれました。どういう結果が出るのか自信がありますから、お任せください。このCMはアメリカで成功します」

このとき学んだ教訓は、別の道や結果をオープンに受け入れるべきということだ。ともすれば私たちは、たった1つのプランや解決策に固執してしまう

大胆なアイディアを前に進める唯一の方法は、仲間を作ることだ

リーダーはプロジェクトを始める際に、スキルも素養も不十分なまま試練にぶち当たるもので、こうした状況で成功するために重要な要素が2つある。それは強いビジョンと、外部の専門家や経験から早急に学びを得る力だ

正しい行動が正しい結果をもたらすわけではない

私は大きなプレゼンを、物語として捉えている。観客を一緒に旅に連れていきたい。そこで初めに大きくガツンと言わせて、最後にもっと大きくガツンと言わせる

私は岩田氏に、「ブレーンエイジ」の西洋バージョンに数独を加えることを提案した。(中略)

「ミスター・イワタ、数独についての研究素材は、川島教授の理論と合致しています。頭のエクササイズを短時間集中して行うことは、記憶力の改善につながるようです。教授にそれを伝えて、これが西洋にとって意義がある理由を説明すれば、わかってくれるのではないでしょうか」

この名前(Wii)にひっかけてwee-wee(おしっこ)とからかう連中も出てくるだろうが、それも承知の上だ。多様性を受け入れる姿勢が込められた言葉だけに、敢えてこの名前で行こうと決めた

私たちは最終的に宮本氏と岩田氏に、西洋のマーケットで、「Wii Sports」をコントローラーとセットで販売することを了承してもらった

翻訳の疑問点と、著者の自慢話がちょっと気になりましたが、グローバル市場に進出したい経営者には、いろいろと学びがあると思います。

日本人感覚で切り捨てるのではなく、著者の思想やエピソードから、ぜひグローバルビジネスに必要な視点を学んでいただければと思います。

ぜひ、チェックしてみてください。

image by:  VDB Photos / Shutterstock.com

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Amazon.co.j立ち上げに参画した元バイヤー、元読売新聞コラムニスト、元B11「ベストセラーBookV」レギュラーコメンテーター、元ラジオNIKKEIレギュラー。現在は、ビジネス書評家、著者、講演家、コンサルタントとして活動中の土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介。毎日発行、開始から既に4000号を超える殿堂入りメルマガです。テーマ:「出版/自分ブランド/独立・起業」

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【著者】 土井英司 【発行周期】 日刊

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