東京都知事選に24人もの候補を擁立した上に、選挙ポスターの掲示枠の販売や候補者とは無関係のポスターを掲出するなど、悪ふざけの限りを尽くした「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。本人たち以外誰一人として面白いとは思っていないこの行為ですが、罪に問われる可能性はゼロなのでしょうか。今回のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』では、かつてNHK党の幹事長を務めた経験を持つジャーナリストの上杉さんが、考えうる「5つの罪」を挙げそれぞれについての「量刑」を考察。その上で、立花氏の違法行為が認められた後の展開を予測しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:都知事選 立花孝志氏(NHK党)の何が問題か?今後は?逮捕の可能性は?
都知事選 立花孝志氏(NHK党)の何が問題か?今後は?逮捕の可能性は?
都知事選が終わった。現職の小池百合子都知事が三選を決め、戦後の都知事選(官選以降)では現職以外当選しないというジンクスは続くことになった。
当選は確かに小池都知事だったが、選挙の主役は決して彼女ではなかった。公職選挙法の穴を衝いた「法匪」たちが、うんざりするような狼藉を働き続け、過去に類を見ない荒んだ選挙となってしまった。
中でも、NHK党の立花孝志氏などが引き起こしたモラルハザードは、国内のみならず海外のニュースにも取り上げられ注目を浴びた。
今回の都知事選において、立花氏とNHK党の振る舞いはどんな点で問題があり、今後、どのような展開が待っているのか、公職選挙法に抵触する可能性や逮捕などはあるのか、その違法性について分析する。
1.資格NHK党による選挙ポスターの「販売」
NHK党の立花孝志党首が、24人の候補者を擁立し、選挙ポスター掲示板の「販売」を行う異例の戦略を展開した。党への寄付者(事実上の販売)に掲示板スペースを提供し、選挙と無関係なポスターが多数掲示される事態に発展している。多くの専門家からは「選挙の公正性を損なう可能性がある」との指摘が上がっている。
公職選挙法第143条では、選挙運動のためのポスター掲示は、公営掲示板や個人の住居等に限定されている。NHK党が事実上ポスター掲示板のスペースを「販売」する行為は、この規定の趣旨に反する可能性がある。
【量刑】
この行為自体に対する直接的な罰則規定はないが、選挙の公正を害する行為として、公職選挙法第225条の選挙の自由妨害罪に該当する可能性がある。選挙の自由妨害罪の法定刑は「4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」である。
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2.候補者以外の内容を掲載
上記と同じだが、立花氏の飼い犬である「サスケ」のポスターを掲示したり、敵対する人物の顔写真を無断でポスターに使用し、大量に貼り付ける事例が発生している。そこに候補者の情報は存在しないものが多かった。とくに、NHK党から掲示板枠を購入した人物が、俳優の故三浦春馬さんの氏名と似顔絵を無断で使用したポスターを掲示した問題には批判が集中した。所属事務所のアミューズが抗議するまでに事態は発展している。
公職選挙法第142条では、選挙運動のためのポスターには、候補者の氏名、政党名、政策等を記載することが定められている。選挙と無関係な内容のポスターを掲示することは、この規定に違反する可能性がある。
【量刑】
公職選挙法第243条では、第142条に違反した場合、「2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金」と定められている。
3.大量擁立による選挙制度の悪用
NHK党の立花孝志党首が、都知事選で24人の関連候補を擁立し、ポスター掲示板の枠を一般に販売する「ジャック作戦」を展開した。これにより、候補者と無関係のポスターが多数掲示され、選挙の公正性を巡って議論を呼んでいる。
NHK党が24人もの候補者を擁立する行為自体については、直接的に違法ではない。しかしながら、選挙の公正を害する目的で行われている場合、公職選挙法第225条の選挙の自由妨害罪に該当する可能性がある。
【量刑】
前述の通り、「4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」となる。
4.風営法違反の可能性があるポスター
NHK党が渋谷区の掲示板に女性専用風俗店を紹介するポスター24枚を掲示したことで、警視庁が風営法違反の疑いで立花党首に口頭で警告した。警告を受け、同団体は別のポスターに貼り替えを行った。他にもQRコードで読み込んで不適切なサイトに誘導するなど、不正と疑われる行為を繰り返されている。
選挙ポスターとして不適切な内容を掲示することは、公職選挙法第142条違反となる可能性がある。
【量刑】
「2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金」(公職選挙法第243条)
5.選挙と無関係の大津綾香氏への「金返せ」ポスター
みんなでつくる党の大津綾香党首の顔写真を無断使用し、「債権者が困っています お金を返してください!」という文言を掲載したポスターが掲示された。大津氏は「肖像権侵害、名誉毀損等に該当しうる」として、法的措置を検討していると発表した。
このポスターは名誉毀損(刑法第230条)や侮辱罪(刑法第231条)に該当する可能性がある。また、選挙と無関係な内容であるため、公職選挙法第142条違反の可能性もある。
【量刑】
- 名誉毀損罪:「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」
- 侮辱罪:「1年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金」
- 公職選挙法第142条違反:「2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金」
想定される今後の展開
立花孝志氏を中心としたこれらの行為が複合的に行われていることを考慮すると、仮に有罪となった場合、懲役刑と罰金刑の併科が考えられる。具体的には、3~4年程度の懲役刑と100万円程度の罰金刑が想定される。ただし、実際の量刑は裁判所の判断によるため、状況によって変動する可能性がある。
立花孝志氏の状況を考慮すると、今回の都知事選挙で違法行為と認められた場合、以下のような可能性が考えられる。
■執行猶予の取り消し
立花氏はすでに執行猶予付きの有罪判決を受けているため、新たな違法行為があった場合、執行猶予が取り消される可能性がある。これにより、元の判決で言い渡された刑期(懲役2年6カ月)の服役が必要になる可能性がある。
■追加の刑事罰
風営法違反や公職選挙法違反など、新たな違法行為に対して追加の刑事罰が科される可能性がある。たとえば、風営法違反の場合、最大で2年以下の懲役または200万円以下の罰金が追加して科される可能性がある。
■公民権の停止
公職選挙法違反により、選挙権および被選挙権が一定期間停止される可能性がある。これにより、立花氏は一定期間、選挙に立候補したり投票したりすることができなくなる可能性がある。
■将来の立候補制限
連座制の適用により、今後5年間にわたって同一選挙・同一選挙区からの立候補が制限される可能性がある。
■社会的信用の低下
繰り返しの違法行為により、立花氏の政治家としての信頼性や社会的評価が著しく低下する可能性がある。
これらの可能性は、違法行為の内容や程度、裁判所の判断などによって変わる可能性がある。また、立花氏がすでに執行猶予中であることは、裁判所の判断に影響を与える可能性が高いと考えられる。
(本記事は有料メルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』2024年7月9日号の一部抜粋です。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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