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ホンマでっか池田教授が家庭菜園を続けて気づいた、マリーゴールドを植えることのメリット

家庭菜園をやっている人が必ず悩まされるであろう害虫や害獣。メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』の著者で生物学者、CX系「ホンマでっか!?TV」でおなじみの池田教授もその一人です。今回の記事では、池田教授が家庭菜園での攻防戦について語っています。

家庭菜園にやってくる害虫や害獣との攻防戦

今回はインパール作戦の続きを書くと予告したが、毎回シリアスな話が続くのは体に悪いので、今回は家庭菜園にやってくる害虫や害獣との攻防戦の話でもしようと思う。無農薬で家庭菜園を作ると害虫から逃れることはほぼ不可能である。普段はあまり見かけない害虫が、どこからともなくやってくるから不思議だ。数年前までキュウリを作っていたが、キュウリができる頃になると、ウリハムシが大量に発生して駆除しきれなくなったので、キュウリ作りはやめてしまった。キュウリはスーパーで1本70円くらいなので、手間暇かけて作るより買った方が安い。最初の年はウリハムシがほとんど来なかったので、1本の木に100個くらい成り、ウハウハしていたのだが、次の年からは毎年ウリハムシの大軍団にキュウリの葉が食われ放題になって、レースのようになってしまった。虫は食草をかぎつける超能力を持っているとしか思えない。スーパーの店頭に並んでいる見事なキュウリを見ると、どんな農薬をかけたのだろうかと思う。

それで、最近は比較的害虫が付かないトマトやパプリカやピーマンやトウガラシを作っている。ここ数年、晩夏になるとトマトの葉にはクロメンガタスズメの幼虫が付いたが、今年は見かけなかった。クロメンガタスズメは成虫の背面に髑髏の模様があるなかなか素敵なスズメガで、トマトの収穫がほぼ終わった頃にやってくるので、私はむしろ歓迎していたのだけれどもね。ちょっと残念な気がする。

例年ミニトマトが青いうちに穴を空けて、中の実を食べているオオタバコガの幼虫も、今年はあまりいなかった。その代わり、パプリカの実に入ることが多くなった。自宅で作っているのは「鈴なりリンリン」というミニパプリカと「ガブリエル」という12cmくらいに育つ大きなパプリカである。どちらも、実がこれ以上大きくならなくなって数週間経ってから赤くなり、食べ頃になる。青い実のうちはピーマンのようで、食べるには何の問題もないが、完熟して赤くなると甘味が増すので、我慢して待っている。しかし、この間にオオタバコガの幼虫に侵入されてしまうことが多く、待てば海路の日和あり、というわけにもいかないのだ。

よく見ると小さな穴が一つ空いている。それ以外は全く正常に見えるのだが、これをナイフで切ると、中に丸々と太った幼虫がいて種とワタを食い尽くして、糞だらけになっている。ナイフで切った時に、幼虫の体も真っ二つに切れてしまうこともある。穴が二つ空いている場合は、ナイフで切っても中はもぬけの殻で糞だけが入っている。一つの穴は侵入孔でもう一つは脱出孔なのだ。中を食いつくして他の実に移動したのである。実の上に止まって、外から食べていると捕食者に見つかる確率が高くなるが、食べ物の中に隠れていれば捕食者に見つかる確率は低くなる。とても賢い生存戦略だ。

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ところで、「ガブリエル」は日本デルモンテアグリが開発したパプリカの品種ということで、生でそのまま「ガブッ」と食べて味の違いが分かるところから、そう名付けたということだが、「ガブリエル」は聖書では「神の言葉を伝える天使」で、最後の審判の時にラッパを吹いて死者を甦らせる役を担うとされている。パプリカの品種名に使うのは余り相応しくないと思うのだけれどもね。

一番害虫にやられないのは、トウガラシ、ラッキョウ、それと野菜ではないがマリーゴールドである。トウガラシは茎にホオズキカメムシが付くくらいで、他に大した害虫はいない。ホオズキカメムシはメスが卵塊を産んで、そこから孵化した幼生が集団で暮らすので、時々、トウガラシやパプリカの茎に20匹位まとまって付いていることがある。虫の嫌いな人はぎょっとする光景だと思うが、私は全部素手で獲って、踏み殺してしまうので、何ということもない。イモムシも毒のないケムシも全部素手で獲るのが一番楽である。新芽にべっとりと付いているアリマキも素手で擦れば簡単に退治できる。殺虫剤など使う必要はない。

ラッキョウは他では知らないが、この辺りでは全く害虫が付かない。6月に前年植えたラッキョウを掘り出すと、3~5個の大きめのラッキョウが出てくる。その中で一番立派な粒を残して、8月の終わり頃に植えて、次の年の6月頃に掘ると、また同じように3~5粒のラッキョウが採れる。その年は見送って2年目に掘ると、10粒以上のラッキョウが採れるが粒はずっと小さい。これをエシャレットと称して売っているが、一粒のラッキョウを植えて2年間放置しておくだけだから、買うのは勿体ない。辛子味噌やマヨネーズをつけて、生で食べると旨い。

フランスにはエシャロットという野菜がある。食べ方も同じで、見てくれもよく似ているが、エシャレットはラッキョウでエシャロットはタマネギの品種である。もっとも、ラッキョウもタマネギもヒガンバナ科ネギ属なので、元々よく似ているのだ。マリーゴールドは野菜の傍に植えておくと害虫除けになるというので、パプリカやトマトの脇に植えてあるのだ。コンパニオンプランツと呼ばれている。確かに、傍の野菜にはアリマキは付かないし、マリーゴールド自体を食べる虫も見かけない。

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今年は庭に来る蝶が少なかった。毎年、サンショウの葉上に必ず見かけるアゲハやクロアゲハの幼虫も全くいなかったし、ホトトギスに付くルリタテハの幼虫も見なかった。夏が暑すぎたということもあるのかもしれないが、ネオニコチノイド(殺虫剤)の影響も大きかったのではないかと思う。何度も書いているが、ネオニコチノイドは人間には比較的毒性が強くない農薬だが、昆虫に対しては猛毒で、近年この農薬が頻繁に使われ始めてから、昆虫が激減した。今年、害虫が比較的少なかったのもそのせいかもしれない。

害虫に変わって猛威を振るったのは害獣である。自宅は東西を山に面した地に建っているので獣が結構出没する。タヌキ、ハクビシン、ニホンアナグマ、ニホンザル、イノシシ、イタチは自宅の庭や近所で見かけたことがあるので、確実に棲息していると思う。クマとシカはまだ見ていない。シカは高尾山にはすでに入り込んでいるので、そのうち自宅周辺にも出現すると思う。

かつてタヌキにカキを、サルにエダマメを食われたことがあった。やっと赤くなってきた大玉トマトを、見事に全部食われたこともあったが、犯人は分からなかった。大玉トマトは獣に食われてしまうので、今年は作りたくなかったのだが、かつての教え子が苗をくださったので、試しに植えてみたのだ。順調に育って、3個ほど収穫したまでは良かったのだが、一番立派に育って、明日の朝が収穫時だと思っていた大玉が、朝起きてみたら消えていたのだ。下を見ると、食われた残骸が落ちている。タヌキかハクビシンの仕業だなーーー(『池田清彦のやせ我慢日記』2024年10月11日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください、初月無料です)

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image by: Shutterstock.com

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