石破総理のもと新たな体制となった自民党、その幹事長である森山裕氏とはどのような人物なのでしょうか。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、著者で辛口評論家として知られる佐高信さんが彼の「中身」を語っています。
石破山か石森山か
『ZAITEN』でやっている「佐高信の賛否両論」という対談で自民党の議員や元議員には片っ端から登場を断られてきた。
一匹狼を自負しているらしい村上誠一郎や護憲派の古賀誠、さらには野田聖子までノーだった。
唯一、イエスと言って実現したのが石破である。
向こう見ずなのか、よく知らなかったのか、印象は悪くなかった。向こうもそうだったようだが、やはりボンボンであることは否めない。
そこで幹事長にした森山裕をどうコントロールするかである。
つまり、石破の主導する石破山なのか、森山の方が実権を握っていて、石破は飾りにすぎない石森山なのか、ということになる。
現在のところ、いきなり解散になって、石破が言っていた論議してからはどこかへ飛んでしまったから、石森山なのだろう。
では、森山とはどういう人物なのか。田中(角栄)派の大番頭だった二階堂進の後を継いだ森山をよく知る平野貞夫に尋ねると、一言、彼は漢方薬療法だよ、と言った。
つまり、外科手術はしないということである。
しかし自民党は、いま、それでは病いを治せない重病人ではないのか。危篤なのに漢方薬ではどうしようもないだろう。
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辻元清美に『国対委員長』(集英社新書)という体験記がある。辻元は2017年に立憲民主党の国会対策委員長となったが、相手は森山だった。
森山は、辻元が親しかった山崎拓が率いる山崎派に属していた。当時は安倍晋三首相、菅義偉官房長官の強権内閣である。それで森山に無理を言ってくる。
自民党が野党だった時、自民党の要求で、質問時間は与党が2で野党が8の割合になっていたのを、5対5にしろと言うのである。
菅は「議席数に応じるのは国民からすればもっともだ」などと、民主主義のイロハも弁えない放言をする始末。要するに加計学園問題などを追及されたくない自民党が野党の質問時間を減らそうとしたのだった。安倍や菅に森山は抵抗できない。
あまりの理不尽に怒った辻元は森山の属する山崎派の事務所に乗り込んだ。たまたま、顧問の山崎がいて、「夜遅くまでご苦労さん。5対5なんて聞いたことがない」と辻元をねぎらい、「国会の長い歴史の中で、与党に質問時間を半分よこせ、などという話は一度もなかった。安倍総理はよっぽど疑惑を追及されるのは嫌なのか。自信がないのか。総理大臣として野党の質問を堂々と受けて立たなければ」と続けた。
そばにいた森山は苦笑いしていたという。苦労人と言われる森山に大胆な改革を求めることはできないだろう。その森山に石破は安倍と違った対応を指示できるのか。
辻元が森山と初めて言葉を交わしたのは、2012年に鶴岡市で行われた加藤紘一の母親の葬儀でだった。
多分、自民党の政治家はその席に少なかったと思うが、森山には加藤を慕うハト派的な側面もあるということか。私はタカと闘わないハトは存在意義がないと思うが、森山は高市早苗らと闘うハトかどうかである。
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