衆議院選挙が終わり、その結果が多く報じられる中で、意外に知られていないのが「女性の当選者が過去最多」という事実です。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、健康社会学者の河合薫さんが、日本をここまで衰退させた理由について、この「女性の地位向上」を後退させてきた我が国の責任であると厳しく断じています。
日本が衰退する理由
衆議院選挙が終わりました。投票率は53.85%。政権交代が起きた2009年は69.28%と7割近かっただけに物足りないとしかいいようがありません。
しかし一方で、投票率が低いと組織力のある与党に有利に働くとされる中での与党過半数割れですから、多くの人たちが「変化」を求めているのでしょう。
今回、NHKで開票結果をずっと見ていたのですが、「女性の当選者、結構多い!」というのが率直な印象です。
衆院選に立候補した人のうち女性は過去最高の23.4 %。立憲は候補者のうち22.4%が女性でもっとも多く、当選した女性議員も、もっとも多い30人でした。
目標の3割には届かなったものの、立憲は21年に国会議員による「女性候補者支援チーム」を立ち上げ、22年の参院選では擁立者の51%、当選者の53%が女性を占めるなど精力的にジェンダー平等を勧めてきました。
一方、自民党は女性候補者は16.1%で、21年の9.8%からは増えてますが小選挙区に限ると9.4%と前回より減っています。
今回の選挙では、裏金に関連する議員の比例代表との重複立候補を認めなかったため、比例名簿の空いた枠に、有権者に刷新感を訴えるために女性を入れたのです。
理由はともあれ、女性議員を増やすには比例名簿の上位に上げる方法も有効です。
実際、衆院選で当選した女性は73人で過去最多。当選者に占める女性割合は15.7%で前回の9.7%から6ポイント増加しました。
前述したとおり当選者は立民が最多の30人ですが、自民が2位で19人。国民民主党6人、日本維新の会、公明党、れいわ新選組が4人、共産党3人、参政党2人で、政治団体
「日本保守党」は1人という結果です。
ご承知のとおりジェンダーギャップ指数で日本はマンネンビリグループを爆走中です。
とりわけ政治・経済分野の同質性が高い。どこもかしこもオールブラックで、昔の名前で出ていますというような、同じメンバーで動き続けています。
法政大の田中優子前総長が高市早苗氏を、「安倍さんが女装した」などと発言し、炎上しましたが、日本社会は紅一点主義を貫いてきたわけですから、当然の末路です。
この記事の著者・河合薫さんのメルマガ
紅一点主義における女性は「ガラスのショーケース」に入れられる存在だったり、男社会への同化を強いられてきました。
今ではさすがに言えなくなりましたが、「スカートをはいたおっさん」になるしか紅一点の女性は生き残る道がなかった。ジェンダー問題を進展させるどころか、後退させてしまったのが、今の日本社会です。
今年のノーベル経済学賞を受賞した米マサチューセッツ工科大(MIT)のダロン・アセモグル教授らは、政治制度と国家の繁栄について分析を行いましたがその結果はまるで「日本!」です。
アセモグル教授の著書『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源』を読むと、かつて世界を席巻した日本が、衰退途上国と揶揄されるようになった原因がとてもよくわかります。
国が繁栄し、国民の生活が豊かになるには、開かれた多元的な政治体制が不可欠であると。
政治家などの公職に就くための平等な競争が担保され、開かれた多元的な政治体制が存在する時。つまり、新しい政党や政治リーダーが生まれやすい環境が必要なのです。
今回の与党過半数割れや、女性議員が増えたことが「繁栄」のきっかけになればいいのですが、「機会」は「力」を加えない限り、広がりません。
その力とは、人の知恵と勇気です。変わろう!という意思です。
果たして、若者や女性の政治家が増える環境を、今の政治は作っているのか。
この先作ろうとしているのか。
この先、誰が国のトップになるかはわかりません。
すでに色々な駆け引きが報じられていますが、「私」たちの大切な1票を権力闘争でないがしろにして欲しくないです。
「山が動いた」との名言を吐いたのは、与野党逆転を果たす躍進を遂げた社会党の土井たか子委員長です。あの頃の日本の政治には、まだ、なんとか変わろうとしていた。
そういう熱気が社会にあったように思います。
みなさんのご意見も、お聞かせください。
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