現代では、すでに一般にも浸透しているダイエットや健康のためのカロリー計算。ほとんどの食品にカロリーが表示されていますよね。しかし、メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者の糖尿病専門医の江部康二先生は、そのカロリー計算は間違いだらけであると指摘しています。
間違いだらけのカロリー計算
現行のカロリー計算は間違いだらけと思われます。
夏井睦先生も、ご著書「炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学」(2013年、光文社新書)の第六章で、現行のカロリー計算法に関して問題提起しておられますが、私も同感です。
「日経サイエンス 2013 12 特集 食欲」に掲載の記事「間違いだらけのカロリー計算」R.ダン(ノースカロライナ州立大学) P53-56を読んで、大変興味深かったので、抜粋を要約して簡単に紹介したいと思います。
鍵となる概念
(A)
現在売られている食品はほとんど全てにカロリー数がラベル表示されている。
だが、これらの数値の大半は消化の複雑さを無視した平均値に基づいており、その意味で不正確だ。
(B)
食物から得られるカロリーが、食物の種類はもちろん、調理法や腸内微生物の種類、食物を消化するのに私達が費やすエネルギーによって変わることが、近年の研究で明らかになった。
(C)
現在のカロリー計算はこうした要因をまったく考慮に入れていない。
消化は非常に複雑で入り組んだ過程なので、カロリー計算の改善に取り組んだとしても、完璧に正確なものにするのは不可能だろう。
鍵となる概念(KEY CONCEPTS)に関して、R.ダン氏の言う通りと思います。
今まで、19世紀の米国の化学者アトウオーターの計算式が、現在までさしたる疑問もなく使われ続けたのが不思議と言えば不思議です。
アトウォーターの換算係数は、例の
脂質:9kcal/g 蛋白質:4kcal/g 糖質:4kcal/g
というやつです。
食物の熱量=「食物を空気中で燃やした熱量」-「同量の食物を食べて出た排泄物を燃やして発生した熱量」
これの概算値が得られるのが、アトウォーターの換算係数です。
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今までアトウォーターの換算係数に基づくカロリー計算に関して、きっちり追試した研究は皆無だったのですが、ハーバード大学のカーモディーが近年研究したものがあります。
カーモディーの原著までは、調べていません。
マウスにさつまいもか赤身の肉を与えて、体重の変化を比較したものです。
1)生で形もそのまま
2)生で砕いたもの
3)形はそのままで加熱
4)砕いて加熱
結果は、食材を砕いても体重は増加しませんでしたが、加熱すると、さつまいもでも赤身の肉でも、加熱していない餌のマウスに比べて体重が増えました。
加熱によって、消化吸収しやすくなり、摂取エネルギーが生食マウスに比べて、多くなったったと考えられます。
こうなると、アトウォーターの換算係数に基づくカロリー神話は、加熱という調理法だけでも、簡単に崩壊していることがわかります。
さらに、上記A)B)C)の、3つの鍵となる概念(KEY CONCEPTS)を考慮すれば、人体の消化・吸収におけるカロリー計算はそう簡単にはいかないということがわかります。
また、B)を勘案すれば、太りやすさには個人差があることが容易に理解できます。
このように、食物の正確なカロリー計算は、ほぼ不可能と言えるのですが、生肉、生魚、生野菜を食べると、加熱するよりは減量しやすいことは確かなようです。
通常、魚の刺身はOKですね。
しかしながら、生肉はハードルが高いです。
生食用の牛レバーと豚肉は提供禁止です。
ユッケは腸管出血性大腸菌O111による食中毒の危険性がありますので、規格基準の要件が、大変厳しくなりました。
鶏肉を生や半生で食べると、カンピロバクター食中毒やサルモネラ食中毒のリスクがあるのでこちらも要注意であり、規格基準がとても厳しくなりました。
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