東京都庁で開催された「第5回TOKYO Data Highwayサミット」を取材した、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さん。しかし、メンツと座組が良かったにも関わらず、そのイベント内容は不満が残るものだったと言います。石川さんが、その問題点について説明しながら、大災害が来たときの対処について議論すべきだった内容について詳しく解説しています。
大災害時に「つながる東京」は実現するのか?
2024年12月21日、東京都庁で「第5回TOKYO Data Highwayサミット」が開催された。小池百合子東京都知事を筆頭に宮坂学副知事、村井純慶應義塾大学教授、NTTドコモ・前田義晃社長、KDDI・高橋誠社長、ソフトバンク宮川 潤一社長、楽天モバイル・矢澤 俊介社長ら相当たるメンバーが揃った。
TOKYO Data Highway構想は、2019年にスタートしたこともあり、当時は都内における5Gネットワーク構築などがテーマであったが、今年は1月1日に能登半島地震があったため「つながる東京」として、災害時の対応などが議題となっていた。
特に宮川社長は「東京都と自衛隊、通信事業者との共同訓練の必要性」ならびに「72時間以上、電力を維持できるビルなどの情報開示」などを訴えていたのが印象的であった。宮川社長は、東日本大震災発生時に、現場に入って復旧活動の陣頭指揮をしていただけに、災害時に通信事業者と自治体はどう対応していけばいいのかを身をもって理解しているようだ。
このサミット、豪華なメンバーで、東京都が世界に誇れる通信ネットワークを実現するための座組としては立派なのだが、肝心の議事自体がイケていない。
開催時間は1時間に限られ、知事挨拶、村井教授の挨拶に続いて、4キャリア、さらにNTT東日本、JTOWER、NTTブロードバンドプラットフォーム、ワイヤ・アンド・ワイヤレスがそれぞれプレゼンをするため、圧倒的に時間が足りないのだ。今回も、各社がプレゼンしたのち、本来であれば、意見交換する時間が設けられているのだが、「23分押し」ということで、意見交換することなく、村井教授がまとめのコメントを発して会が終了してしまったのだ。
その後、メディアに向けたフォトセッションが行われたのち、小池都知事が退出するはずが、そこで立ち話となり、災害時にどうすべきかの議論が巻き起こったのだった。
各社長の意見も結構、貴重だっただけに、できれば本番で議論してもらいたかったものだ。
毎年、プレゼンが長引く傾向があるだけに、来年は、各社のプレゼンはすっ飛ばして、事務局が設定したテーマに議論から入っていくような進行にすべきだろう。
4キャリアと自治体が未曾有の大災害に向かって訓練や準備を進めておくことは重要であるし、こうした取り組みを東京都が実践できていれば、他の地域で大災害が起きたときも、4キャリアと自治体で連携して動きやすくなるはずだ。
もはや5Gネットワークが当たり前の環境になってきただけにTOKYO Data Highwayサミットは大災害時でもすぐにつながるネットワークに復旧できる体制に向けた座組にシフトしていくべきだろう。
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