2022年11月にChatGPTがデビューして以来、世の中は生成AIで盛り上がり続けていますが、AIと並んで将来を劇的に変えるであろうもう一つの画期的な技術革新に「量子コンピュータ」があります。
ここでもIBM、グーグル、マイクロソフト等の米国勢が先行していますが、日本でもNTT、富士通、日立、理化学研究所などが関わっており、世界中で多くのテクノロジー企業や研究機関による開発競争が繰り広げられています。
そのような中、米国時間12月9日、グーグルが自前の量子コンピューティング・プロセッサ「Willow」を発表しました。これまで、量子コンピュータについてはあまり取り上げていなかったかと思いますので、これを機会に少し解説してみたいと思います。
簡単に復習しておくと、従来のコンピュータはいわゆる2進法で成り立っており、ビット(bit)が単位になっています。1ビットは0または1の排他的な2値のどちらかの値を持ちます。
たとえば、2ビットであれば、00、01、10、11の4つの状態を表現することが出来ます。当然、ビット数を増やすほど表現できる情報量が増えていきます。この基本原理は、パソコンであろうがスーパーコンピュータであろうが変わりません。
これに対して、量子コンピュータは、量子力学の原理を応用したもので、「量子ビット(qubit; quantum bit、キュービット)」という量子状態の「重ね合わせ(量子波動関数)」や「もつれ」などの物理現象を用いて情報を表現します。重ね合わせとは――(この記事は約25分で読めます ※9,807文字)
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