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教育指導に「人権侵害だ!」と逆ギレ。小3女児を不登校に追い込んだ「いじめ加害男児の保護者」による“常軌を逸した”言動

自身の子がいじめの加害者となってしまった場合、多くの親は相手方への謝罪や再発防止のための我が子への適切な指導を考えるもの。しかしながら世の中には、理屈が通じない人間も多数いるようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、にわかに信じ難い「いじめ加害者の親」の言動を紹介。さらにそんな人間と直接交渉を希望する被害者サイドに対して、ひとつだけ授けているというアドバイスを記事内で公開しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:被害者になりたがるいじめ加害者の親の実態

「自分たちは被害者」。いじめ探偵に加害者の親はどんな相談を持ちかけてくるか

NPO法人ユース・ガーディアンには、いじめの被害相談が多数寄せられる。

8割方は被害者の保護者からの相談であるが、児童本人からの相談や学校関係者からの相談の他、加害者の保護者からの相談というものもある。

よろず相談どころではないので、相談は「いじめ防止対策推進法上のいじめ」に限ることにして、小中高及び高専に関するいじめ問題のみに限っているが、大学生や社会人、保護者間の相談申し込みもある。ただし、これら相談は、「いじめ防止対策推進法上のいじめ」ではないため、本来対応すべき相談で手一杯であるから、受付の段階で対応できない旨を伝えてもらい、相談を断っている。

他にも、他団体からの被害相談を装った電話やメール、被害保護者になりたいという意味不明な中年女性からの定期的な嫌がらせ電話などもあるが、一定数の間違い電話もある。間違い電話は主に2種類で、宅配のすしチェーンと信用確認の電話だ。間違い電話は、こちらが「ハイ、ユースガーディアンです」と言っても、何も確認せずに、内容を伝えてくるという点で共通点があるが、原則、間違い電話後は「着信拒否」に登録することになっている。それでも数が減らないというのは、なかなか面白いものだと思っている。

先日は、バスの遅滞がどこかにあり、Xにその問い合わせ先だと誤った投稿があったらしく、数分毎に、バス会社と勘違いした居丈高の間違い電話が殺到した。

間違い電話のくせに偉そうに「一言謝れ、バカタレが」と思うものばかりで、ずいぶん民度が低いものだ、バスが遅れた程度でクレームの電話を入れて、商談に遅れたら商談がダメになるから賠償寄越せというような半ば脅迫電話もあり、バス会社さんも大変だなと思った。ちなみに、きちんと詫びた人は一人もいなかった。

共通する「うちの子は悪くない!」という主張

さて、今回は、加害者からの相談を取り上げる。

正直なところ、加害者が更生のためにどうすればいいだろうという相談には応じるが、加害を消すためにどうすればいいだろうという相談ばかりだ。

だから、説得して加害を起こさぬためにこれからどうしたらよいかということをやりましょうと薦めるが、実際の相談は、「加害を消すため」という真意を隠して、被害者を装って相談してくるため、相談がある程度進んでから出ないと、「ああーこれは加害側だな」と気が付くのは難しい。

多くは共通しており、「うちの子は悪くはない、むしろ、被害者だ」という論調だ。

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「正直に思ったことを言っただけ」という無反省

北関東地域からの相談では、事故なのに加害行為をしたとされて教室から出て行けと言われているという内容であった。

詳しく聞くと、小学3年生のクラスで、真の加害側は真の被害者に「臭い」「メガネ猿」などと言い、周囲に同意を求めてからかったのだそうだ。

相談の母親曰く、息子は嘘をつけないので、正直に思ったことを言っただけなのだそうだ。

「悪気はないから、悪くはない」という主張だ。

百歩譲って悪気はなかったことは認めたとしても、クラスで身体が小さく喘息持ちで自己主張もあまり強くなく、人に怒ることはほとんどなく優しく寄り添うような女の子を「臭い」と因縁をつけ、「メガネ猿に似ているからモノマネをしてよ」とからかい、困っている様子を周りもわき込んで、指をさして笑う行為は、特定個人を中傷し傷つけていることには変わりはないから、これが悪い事なのだと教育する必要はあるだろう。

つまり、悪気はないにしろ誰かを傷つける行為をしてしまったのならば、悪い悪くはないという軸ではなく、反省し、二度とやらないように教えるのが親としての役割だろうし、教育指導の在り方なのではないか。

さて、この真の加害者は、困惑する真の被害者の様子がおかしいと面白がり、3年生はじめの2024年4月から夏休みが始まる7月半ばまで続け、結果として、夏休み明けの9月からこの真の被害女児は不登校になってしまった。

教育指導は「人権侵害」。我が子は悪くないと確信した母親

9月下旬に真の加害男児は担任と校長から校長室で教育指導を受けるが、母親はこれに抗議し、「人権侵害だ!」と校長に迫ったらしい。我が子の前で、校長らをタジタジにさせたことで、「我が子は悪くない」と確信したそうだ。

こうして助長したのか、それから数日後、真の加害男児は体育の授業終わりに被害女児に身体が当たって床に倒れさせてしまったそうだ。

詳しく聞くと、体育の授業は何かの体操をするというもので、男女は相応の距離をおいて授業を受けていたそうだ。着替えのタイミングや場所と異なり、本来接触することがないだろうところで、なぜか真の加害男児は担任の指示を聞き間違えて、相撲の張り手をするような形で被害女児を押したということなのだが、母親が言うには、これは事故で、わざとではないのだそうだ。

「故意ではないから責任はないと思うんです。その後私も学校に行って、その子(被害女児)にわざとではないのよ。でも、怪我をさせてしまってごめんなさい。捻挫くらいで済んでよかったね。と謝ったんです。でも、そのあと、その子(被害女児)のお母さんが学校に来て、私に言うんです。絶対に許しませんって。謝ったのに、許さないって。事故なのに!」(真の加害児童保護者の言葉そのまま)

民法709条にはこうある。

(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

よく加害行為をしたものは、かなり軽い気持ちで加害行為を行うようだが、事態が悪いと思うと「わざとではない」と言うのだ。

しかし、法律を基準として考えると、故意であろうが過失であろうが、責任の大小はあっても、責任は負うのである。

一方で、相撲の張り手のような形を自身でそのポーズを取ってみればわかるだろうが、地面に足を根のようにはって、腰を落とし、片手を突きだすわけだから、推すという意思が働かないとこの形にはなかなかならないし、周囲に他の児童がいる中で、ピンポイントで特に体の小さい被害女児に張り手をして倒れさせるというのは、事故だというのは無理があるだろう。

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「わざとではなくて事故だって私その場で言ってやったんです」

さらに、学校で周囲が突然のことで唖然とする中、加害男児の母親が、怪我の治療等で保健室にいる女児にむかって、「捻挫くらいで済んでよかったね」はもはや発言としてもあり得ないことだろう。

母親本人からすれば、体格差から骨折でなかったからと思ったそうだが、被害女児からすれば、「今回は捻挫程度で済んだけどな…」という脅し文句に感じたかもしれない。

「で、学校はその子(被害女児)があと数日休むと、重大なんとかになるから、大変な事なので、一旦別室指導をするというんです。そんなの人権侵害だから、うちの子はわざとじゃないって言ってるじゃないですか、生徒のいうこと信じないんですか、それでも教師ですかって言ってやったんです。それで、別室は無くなったんですけど、今度は、教頭とかが教室にきて監視しているというんです。もう頭に来ちゃって、私抗議したんです。そしたら、その後、保護者会で、その子(被害女児)の母親がうちの子はいじめられていて、という話をしたんです。クラス委員っていう保護者の委員があって、その役員も一緒に。それじゃまるで、うちの子が悪みたいじゃないですか!だから、わざとではなくて事故だって私その場で言ってやったんです。悔しくて、これっていじめじゃないですか!保護者のいじめ、わかります?」(真の加害児童保護者の言葉そのまま)

私は、この母親がどこで息継ぎをしているのかわからないようなマシンガントークを続けているのを、「はいどうぞ」「それで?」の相槌を打って、話を続けさせていた。

「わかります?」のあとは、さすがにスッキリしたのか、息切れしたのか、話が途切れたので、とりあえず、「わかりません」と言っておいた。

その後は、保護者としてすべきことをしっかりやりなさいという説得をしてみたが、どうやら、私を訴えるそうだ。何で訴えるのかはよくわからないが、さすがに司法もそこまでバカではないだろう。

「人権」を自分都合で使う母親の保護者の資格

当然、すべての人には生まれながらに人権を有する。学校教育でも日本国憲法は習うだろう。だから、加害者にも人権はある。一方で、被害者に当然人権はある。

ここでは、その人権の中でも特に「自由」についての事になろうが、誰もが自由にやりたいように行動をしていたら、他人の自由とぶつかり合う事態も起きるであろう。

私は法律家ではないという前提で記すが、例えば、お金がないから欲しい物が買えないけれど、横をみたら弱そうなやつが自分の欲しいものを自慢げに持っている。憲法で自分の自由な行動や活動は認められているから、自由な行動には制限はないんだとそれを奪えば、当然に窃盗なり強盗なり強要なりになろう。

それで、警察に逮捕され、検察に起訴され裁判で有罪になったら、刑務所に送られる。執行猶予というのもあろうが、有罪は有罪である。さらに、被害側から民事で訴えられれば、賠償責任も負うことになろう。そうなって、私は自由も奪われ賠償責任でお金も取られたから、これは被害者ではないかと言うのと、相談の加害者の母親が言っているのは同じなのである。

人権の自由権とは教科書によれば、他人の権利を侵害しないところまで、公共の福祉に反しないまでのことではなかったか。

家庭教育の中で、加害行為をさせないように丁寧にケアをしていくことを否定し、拒絶し、未熟な子どもを放任して、それを良しとするならば、この母親に親としての資質は皆無と思わざるを得ないだろう。

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「親と話せばきっとわかってくれる」という大いなる幻想

いじめ被害相談の中で、加害者の親と話せばきっとわかってくれるという被害保護者も多いが、きっとわかるという場合の条件があり、大半はわかりあうことはない。

話し合いでうまくわかりあうというのは、加害が起きた状況を学校が伝えた時点で、すぐさま謝罪をした親や謝罪の機会をくださいと言ってきた親の場合のみだ。

それ以外の多くは、こんなに責められて親である私が我が子を守らないと、という悲劇のヒロイン型の浅はかな思考に陥るなど、視野狭窄になって、どんなに良いアドバイスをもらっても、それに応じることはなかったり、あらゆる意味で声が大きい方の意見が通る無法者思考で押し切ろうとしてきたり、嫌がらせを始めるなどの攻撃を仕掛けてくることもある。

かなり高い確率で、常習いじめ加害者の保護者は、この親あってこの子ありだったかと思える言動を繰り返すし、このいじめ行為は親を真似たのだなと思わせるものだ。

仮にどうしても相手の親と交渉するという場合、私は1つだけアドバイスしていることがある。

「すべての前提において、わかり合えるとは思わないこと」

そもそも、この社会の中で真にわかり合えるということ自体の方が少ないのではないだろうか。現実問題を見れば、わかり合えるだろうカードのみで話すより、わかり合えないかもしれないけどのカードも用意して話す方がより手札も多くなるし、ショックも軽減されるだろう。

あまりに高いいじめ加害者が反社会的人格障害になるリスク

いじめ問題をこれだけ多くやっていると、一時期よりも教育指導の一環として、加害児童や生徒を別室指導する学校は増えてきている。

仮になぜ加害行為をした者が教室におらず別室にいるのか疑問を持つ同級生がいたとしても、それはごく少数で、大多数がいじめ行為を繰り返していたからだと認知していることが多い。こどもたちは口にこそしないが、目の前で起きていたことだとわかっているものだ。

こうした指導体制は、その後のいじめ予防にも効果があり、クラス運営が楽になったという教員もいた。一人では指導しきれないところもあり、目を離す時間や空間もあるから再発も防止できるというのだ。また、加害行為がなぜダメなのか見つめ直す機会や指導の機会がしっかりあり、別室と言えど授業は受けており教育の機会損失とまでは言えない。

一方で、別室指導なんてとんでもないという学校は未だに多いし、別室指導なんて聞いたことがないとそれ自体を非常識だという学校多くある。

ある講演会で、PTAの役員が、別室指導導入について、そんな学校はないと聞いたが、本当ですか?という問いを受けたことがあるが、「え?今どき、普通に導入しているところもありますよ」と正直に答えている。きっとその学校には二度と呼ばれないかもしれないが、別段講演会をするためにこの活動をしているわけでもないし、こういう講演会の報酬はびっくりするくらい安いので、御呼ばれしなくてもどうということはない。

別室指導は罰ではなく教育であるからだ。新聞記事で読んだが、湖西市でいじめ根絶の講演会をした大阪の「子どもの発達科学研究所」の和久田所長によれば、「いじめの加害者は反社会的人格障害になるリスクが4倍」だという。こうならないためにも、教育でなんとかできるならば、しっかりと指導しなければならないだろう。

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いじめ問題の解決を放棄してしまった日本という国

海外ドラマを見ていて、「なんて理不尽な…」「おいおい、すげーわがままだな」と率直に感じることが多いです。その度に、文化の違いかと思っていましたが、色々なトラブルの相談を受けていると、うーん日本も変わらなくなってきたねと率直に思います。

ちなみに、私は下町育ちで襖挟んで隣の部屋でテレビがついている中で受験勉強とかを集中してやっているという環境で育ったので、すこしうるさかったり、テレビがついているなどしていた方が集中するのです。ですので、海外ドラマとかが流れている中で仕事をしていることが多いです。当然、打ち合わせとか電話相談などの際、音は消しますが、だいたい流れっぱなしです。

さて、今回は加害保護者からの相談を取り上げました。

多くの方が、「なんだこの親、イカレテンノカ!?」と思ったでしょう。私も率直にそう思いました。実際は、被害保護者を装って電話をしてきましたし、論理的かつ各事例を挙げて、例え話を混ぜ、懇切丁寧に、ご説明差し上げましたが、自分に共感しない、意のままに従わないことで、声を荒げ、最後は「訴えます!」でガチャ切りです。

驚くことに、2025年に入って受けた加害保護者からの電話相談10件のうち、8件はほぼ同様でした。残り2件は「やっぱり駄目ですよね」と言われて終わり、他カウントしていない電話相談は、加害責任から如何に逃れるかを教えろということをハッキリ言ったので、受付段階でお断りしています。受付をしているスタッフによれば、ごく自然に、教えるのが当然だという態度だったそうで、もう「馬鹿タレ」ですね。

いじめ問題では、学校が責任を負いたくないということから家庭の問題に無理やりねじり込むという隠ぺいの仕組みが徐々に明らかになってきていますが、この場合は被害側の家庭問題に落とし込むという二次被害が発生しています。

一方でいじめの研究をしている専門家の多くは、加害側の家庭環境の問題を指摘するケースがもともと多くあります。研究する側には利害や利権もないので、第三者的に論理的にみれば、加害側の背景に影があるなと気が付くわけです。あくまで「多い」というだけです。

家庭か学校かどっちが悪い論のみで考えることは、問題の本質から目が逸れていると思えてなりません。もちろん、ものすごい隠ぺいをやる学校があるので、全てがというわけではないのですが、隠ぺいができてしまう構造に目を向けるべきだと思っています。

少子化もそうですが、いじめを減らすということに真に向き合うのであれば、研究や調査は必須であるにもかかわらず、現状では、理由なき研究調査の中断などが相次いで起きていました。問題解決への放棄です。

私は言葉を信じません、行動のみを評価するほぼ冷血人間になってしまいました、本業探偵でも難解事件や専門調査ばかりやっていると、欲望の先にあるトラブルを扱うことになり嘘まみれの世界で本質を突けなければ、生き残れません。死線を超え続けた結果、そういう思考になりました。

つまり、日本は行動ではいじめ問題解決を放棄したが、一応口先ではやってます、当然やりますの姿勢です。あとは、日本語の利便性を使い、いかに軽く聞かせるか、やっているようにみせかけるのかになってきているのだと思います。

ですので、私は日本のいじめ対策は後退するだろうと冷静に見ています、それではいけないので、様々な働きかけをしています。私の微力ではそよ風も起きないでしょうが…。まだ諦めはしません。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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