日本のスターバックスが客から不評だった紙ストローを廃止し、植物由来のバイオマスプラスチックを使ったストローに切り替えると発表した。一応、バイオプラは石油由来プラスチックよりも“環境にやさしい”というロジックは用意されている。だが実際には、トランプ大統領の“紙ストロー禁止令”が影響しているのは明らかだろう。興味深いのは、多くの日本人がスタバの英断を歓迎し、批判や抗議の声はほとんど聞かれないこと。地球環境問題はどこに消えたのだろうか?メルマガ『武田邦彦メールマガジン『テレビが伝えない真実』』より、著者の武田邦彦氏が背景を詳しく解説する。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ大統領の「紙のストロー」の禁止令
紙ストローからプラストローに回帰、トランプ大統領の鶴の一声
トランプ米大統領が就任して、次々とこれまでにないようなスピードで新しい政策を打ち出しているが、日本の政治家にもこのぐらいの人が欲しい。
ところで、今回取り上げる紙ストローの禁止令(※紙製ストローを廃止し、プラスチック製ストローに切り替える)は重要政策ではないとはいえ、なぜバイデン側が大統領選挙で敗北したのか?環境問題とは一体何なのか?など、現代の問題を深く考えるには適切なニュースだった。
数年前、亀の鼻にプラスチックストローが刺さっている刺激的な写真が全世界を駆け巡った。写真自体が刺激的だったが、亀の鼻から血が流れていて、それがさらにこの写真を印象的にしていた。
そして、プラスチックストローの追放運動が始まり、その後、マイクロプラスチック排斥、プラスチック排斥と進み、日本では小泉進次郎氏、小池百合子氏が登場し、それに御用学者が活躍して、多くの人は、「プラスチックは海洋に残る」と信じるまでになった。
でも、奇妙である。
亀は自分の手が鼻に届かないし、もし届いたとしても亀は自分の鼻の中にストローを差し込むほど器用でもなく、かつ海流や波では鼻に入らない。何か特別な力と器用さが必要である。
この写真が出てしばらくして、写真をどのようにして撮影したのかという報道があった。
それによると、あるアメリカの世論工作の会社がストローを亀の鼻に入れて写真を撮ることになり、アメリカで数人の学生がアルバイトとして中米に行くことになり、学生が悪ふざけでストローを亀の鼻に突っ込んだということだった。
環境運動というのは実にいかがわしいもので、湾岸戦争の時にも水鳥に重油をかけ、それを撮影してピュリッツァー賞を取るという悪どいこともやっている。もともと、環境運動に「環境を改善しよう」などという善意はほとんどなく、多くの環境運動が利権と暴力にまみれていることも確かで、それを利権政治家が煽るというのが普通である。(次ページに続く)
環境問題は嘘をつく。子供を動員して大人たちを騙す
だから、多くの環境問題は嘘がバレないように小学生などの子供を動員する。
リサイクル運動のときには小学校4年生が作った標語を全国の自治体が使い、地球温暖化では、これも小学生が輪になって手を繋ぎ、「私たちに何ができるの?」と歌い、それをNHKが報道したりしている。
事実、プラスチックストロー追放運動では、直ちにコーヒーチェーンなどが売上増加を目的に宣伝し、それを日本の環境アホ政治家が取り上げ、日本でも全国のホテルでプラスチックストローや歯ブラシが全廃されるなどの活動が展開された。
アンデルセンの童話の代表作に「裸の王様」というのがある。この話は、もともと14世紀の地方の話にあったものを、アンデルセンが少し修飾して優れた寓話にしたものである。
あるインチキをする仕立て屋が、王様を騙してお金を取ろうと思い、手に何も持たないで、王様に「この素晴らしい着物が見える人は正直な人で、心に悪いものを持っている人は見えません」と言って騙す話である。
実際に着物を仕立て、王様がそれを着て街中を歩く。街の人は自分が正直な人と思われたいから、「大変、素晴らしい洋服ですね」とおだてる。ところが、一人の少年が「なんで王様は裸なんですか?」と聞き、それで嘘がバレるという物語である。
つまり、人間が自分のために嘘をつく弱さを示したものであるが、現在の社会が欺瞞に満ちているとか、プラスチックストローの問題とかもまた「裸の王様」と同じ現象だ。
だから今回、トランプ大統領があらためて紙ストローの禁止令を出しても、誰もが環境問題なんて実は嘘だとわかっているので反対をしない。嘘だと知っているけれども、自分も「環境に優しい人」と思われたいから、今まで黙っていたということになる――(『武田邦彦メールマガジン『テレビが伝えない真実』』2025年2月26日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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