生きづらさを抱える人たちの支援に取り組むジャーナリストの引地達也さんは、障がいを持っている人や疾患で支援を必要とする人たちの学びの場である「みんなの大学校」の学長でもあります。引地さんは自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の中で、全員が当たり前に学ぶ場をつくるためのガイドライン作成を始めています。
場づくりのガイドラインを使って次の行動を促したい
障がいのある人が地域で当たり前に「学ぶ」環境を整えるためには、各地域にある社会教育施設というハードを運営する方々の当たり前の意欲が欠かせない。
あえて「意欲」と書いているのは、支援が必要な方々への対応を考えるのには、従来の仕事の範囲内で処理できない場合もあり、ここはさらなるエネルギーが必要で、これらの仕事に目を向けない、もしくは避けてしまう傾向を多くの場面で目の当たりにしてきたから、この仕事をどう当たり前にしていくかが大きな課題である。
この解決に向けて現在取り組んでいるのがガイドラインの作成。
各地で研修や内部での学び合いに使ってもらい、共通認識のベースを作っていければと考えている。
このガイドラインは「社会教育施設における障がい者の学びの場づくり 『誰もが学べる』生涯学習の発展に向けて」は今秋に出版予定ではあるが、すでにいくつかの自治体から研修の依頼があり、この内容を反映させたプログラムを実施する予定である。
ガイドラインは全国で社会教育施設を指定管理で運営するサントリーパブリシティサービス株式会社の監修を経て、福祉の基本知識から来場者へのサービスの考え方まで、幅広い内容で「誰もが」学べるために、「誰でも」運営や企画、実践が出来る感覚を持ってもらうのも大きな狙いである。
研修は15日間にわたるイメージで、15項目を設定している。
最初の3日は「インクルーシブな「学び」の可能性を視野に置いた運営」をテーマに、「『学び』とは何かの確認-どんな障がいでも成立する学び」「文科省の政策及び方向性の確認-国が求める社会教育施設の役割」「障がい者に関する国際基準の確認-障害者権利条約を理解する」とし、障がいがある中で「学び」をどのように考えるかを整理し、実践の前提である「福祉」と「学び」の位置づけを理解する。
この記事の著者・引地達也さんのメルマガ
続いては「障がいへの理解促進を実証的に進める」とし、「行政区分の3障がいへの理解-それぞれの特性について」「重症心身障がい者―医療的ケアが必要な障がい者の特性と対応」「発達障がい-適切な対応を理解する」の3日間で、各種障がいと、その対応をライトに当たり前に考えてもらおうとの趣旨。
中盤の3回は「オープンな施設・イベントを企画する」と題して、事例から実際に企画を考えてもらうことを促す。
「青年学級の歴史と課題-公民館が展開してきた『青年学級』から学ぶ」「芸術活動と障がいの知見を高める―芸術作品や音楽、演劇等の活動との協働」「オープンイベントの事例検討-実際の運営状況の詳細から検討する」との切り口が立案を指南する。
それはどこでも出来る内容であり、ここに来ると、具体的な取り組みも見えてくるかもしれない。
さらに「地域に根差した障がい者への適切なアプローチを検証する」と題して、障がい者が教育・文化行政から遠い存在であることを自覚し、福祉という枠組みへの理解や、障がい者とは何かを整理しながら、学ぶ人としての輪郭を鮮明にすることを目的とした。
「地域福祉の成り立ちへの理解-福祉行政とのコミュニケーションを会得する」では、教育・文化事業とは距離がある福祉を身近に感じ、行動の礎にしてもらい、「福祉サービス区分と障がいの現状-福祉行政への理解を深め連携する」「アプローチの方法について―地域状況を理解し適切な関わり合いに向けて」はその具体策の検討である。
最後は、それぞれの組織体が民間の考え方を取り入れながら、実践する重要さを共有していく「民間企業の役割を検討しダイバーシティ社会の場づくりを探究する」である。
ここでは「民間企業としての役割の再確認-企業の特性を生かした取組を推進」「地域での事例と考え方・動き方から学ぶ─自治体・NPO(市民)主体編」「地域での事例と考え方・動き方から学ぶ─医療法人・学校法人主体編」と、組織別に実践例を示している。
この15項目を起点に、ディスカッション等で互いに学びを深めれば、確実に社会教育施設の運営に関する変革を促すと信じている。
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