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「安全」の裏にある覚悟。ハドソン川の奇跡と日航機墜落事故という2つの事故から考える“使命感”

「奇跡」と呼ばれた出来事の裏側には、必ず“理由”があります。今から16年前、ニューヨークの冬空の下、1人のパイロットが成し遂げた奇跡がありました。両エンジン停止という前代未聞の緊急事態の中、155人全員の命を救った“判断力”。その陰にあったのは、決して特別な才能ではなく、日々の「準備」と「信念」でした。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、日航機墜落事故から40年という節目に、米ハドソン川の奇跡を取り上げながら、あらためて「安全とは何か」「プロフェッショナルとは何か」を問い直します。

16年前の奇跡はなぜおきた?

日航機墜落事故から40年もの月日が経ってしまいました。

当時の航空業界での経験については、Yahoo!の記事で公開してありますのでご覧ください。

日航機墜落事故から40年ー語り続けなければならないあの瞬(2025年)

メルマガでは別の角度から、飛行機事故について書き綴ります。

今から16年前、奇跡を起こしたと世界中から賞賛された、1人のパイロットがいたことを覚えていますか?

チェズレイ・サレンバーガー氏。「ハドソン川の英雄」と称えられたUSエアウェイズ1549便の機長です。

1549便は、米ニューヨーク・ラガーディア空港離陸直後、両エンジンの同時バードストライクというレアケースによって両エンジンがフレームアウト(停止)し、飛行高度の維持ができなくなりました。

当初、空港管制は、進行方向の延長上にあるテターボロ空港への着陸をアドバイスしましたが、高度と速度が低すぎるため機長はキャンセル。ハドソン川緊急着水を、自らの判断で宣言したのです。

ハドソン川になんとか着水させた後、機長は2回にわたって機内を見回り乗客全員を機外に脱出させました。乗客たちは機長の指示に従い、川に浮かんだ飛行機の翼の上で救助を待った。

その結果、誰1人として氷点下の川の水に濡れることなく助かりました。

乗員・乗客155人全員無事。機長のとっさの判断力と行動力が人命を守り、機長は世界中から讃えられました。そして「ハドソン川の奇跡」(Miracle
on the Hudson) と呼ばれ、機長は一夜にして英雄になりました。

ところが、その翌日、サレンバーガー機長の突然の対応が、同社の規定どおりの手順に従わず不時着したことが、「155名の乗客の命を危機にさらした」と問題視され、事態は急展開。“英雄“は容疑者扱いされることになってしまったのです。

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この裁判は映画にもなりましたので、ご覧になった人もいらっしゃるかもしれませんが、機長の無実を証明したのは機長自身でした。機長が常日頃から「乗客の命を守る」という自分のミッションを決して忘れないで努力をして、働いていたからこそ「規定」より「自分の判断」を信じ、彼は真の「英雄」になったのです。

機長はハドソン川の奇跡について聞かれると、こう答えます。

「いつも常に準備していたことをチームで行った」と。

そして、いつも持ち歩き、フライト前に確認する航空路線図には、中華料理店で引き当てた「おみくじ」を貼っていました。

「遅れても災難よりまし ~A delay better than disaster~」──。

おみくじに書かれたこの言葉を決して忘れず、「時刻通りに運行しろ!」「予定通り飛行機を飛ばせ!」と社内外から浴びせられる要求に屈しないために。

「我々にはパーキングブレーキという武器がある。安全な飛行ができると機長が確信できなければ飛行機を出発させない」と肝に銘じるためにです

冒頭のYahoo!ニュースに書いた「有形無形の大切な道具とミッション」が、機長の体内に刷り込まれていたからこその「奇跡」だったのです。

これってどんな仕事でも同じなんですよね。

先日、米国野球殿堂入りを果たしたイチローさんのスピーチでもルーティンについて語っていましたね。

さて、あなたの大切にすべき道具はなんですか? あなたのミッションは何ですか?

お盆休み中に、ぜひ、自問してください。みなさんのご意見、お聞かせください。

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image by:  Austin Deppe / Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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