2025年10月16日に発表された新型「iPad Pro」には、最新のM5チップだけでなく、自社設計による通信モデム「C1X」や新たな「N1チップ」が搭載されています。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、果たして、アップルはこのC1Xを今後どのように展開していくのか、M5チップとの連携、そして将来的な「1チップ化」への布石を読み解いています。
アップルがM5チップを搭載したiPad Proを発表―-自社設計のC1Xモデムは今後、他のデバイスに拡大するのか
アップルが2025年10月16日、M5チップとともに「MacBook Pro」「iPad Pro」「Apple Vision Pro」を発表。10月22日に発売する。
昨年のM4はiPad Proが2024年5月に発売となり、10月にM4 ProやM4 Maxのファミリーがそろった形でMacBook Proが発表となった。
おそらく、M5 ProやM5 Maxを搭載したMacBook Proは来年の春あたりに発売になるのだろう。
個人的に注目したいのがM5だけでなく、C1XモデムやN1チップを搭載してきたiPad Proだ。C1XではBand11や21といった日本特有の周波数帯にもしっかり対応してきた。アップルがいかに日本市場を重視しているかの現れと言える。
いろんな媒体で書いているが、まさかアップルが本当にクアルコムに対抗するモデムを作ることができるとは正直、思っていなかった。おそらく、モデムの性能としてはクアルコムの方がまだ上なのだろう。しかし、アップルとしてはモデムに最高峰の性能は求めておらず、iPhoneやiPadにちょうどいい通信性能があればいいと割り切っているのではないか。
その点、アップルはM5やA19 Proといったチップに加えて、iOSやiPad OSなどのOSも手がけ、ハードも設計している。全体的に最適なパフォーマンスを発揮できるよう、バランスの良いモデムになっているのではないか。
今後、期待したいのが1チップ化だ。将来的にはMやAシリーズにCの名がつくモデムやNの名がつく通信チップも統合されていくのだろう。そうすれば、さらに省電力化が進み、筐体の薄型化、小型化が進む可能性が出てくる。
そのときこそ「クアルコムに対抗するSoCになった」といえそうだ。
今年のiPhone発売時、アップルのプロダクトマーケティング バイスプレジデントであるボブ・ボーチャーズ氏にインタビューをしたのだが、チップの内製化について「アップルが持つ半導体の専門知識をモデムに組み込むというのは、我々としては長期戦と考えている。戦略的投資と技術開発によって、iPhone 16 Proに比べて消費電力は3割減、性能はC1に比べて倍の能力を誇るC1Xが誕生した。我々のシリコンチームは地球上で最もベストと言える技術チームだ」と胸を張ったのが印象的であった。
モデムを統合したチップが出てきた際、MacBook Proなども5G対応してくるのか。やはり、iPadではなく、いつでもどこでも簡単にセルラーでインターネットにつながるMacBook Proを出してもらいたいものだ。
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