MAG2 NEWS MENU

寄付は誰かのため、そして自分のため。『Giving』に宿る幸福感について

もうすぐ年の瀬。今年を振り返り、来年の自分に少しだけ思いを馳せる──そんな季節にぴったりなのが、静かに広がりつつある「Giving」という考え方です。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で健康社会学者の河合薫さんは、そんな『Giving December』について紹介しています。

「Giving」と小さな幸福感

Giving December(寄付月間)を知ってますか?

これは、2015年12月に日本で始まった民間主導の啓発キャンペーンのこと。アメリカを中心に世界に広がっている「Giving Tuesday」を参考に、寄付にもっと関心を持ってもらおうと、寄付に関連する活動をしていた団体が呼びかけました。

合言葉は「欲しい未来へ、寄付を贈ろう」です。

その柱にあるのが「一年の終わりに、未来を考え寄付をしよう」という温かいメッセージです。

日本は世界的にも「寄付をしない国」と言われ続けてきました。これは日本がなかなか脱却できない不名誉な現実の一つです。

英国のチャリティーズ・エイド財団(CAF)が発表する「世界人助け指数(World Giving Index)」でも、日本は長年、先進国の中で最下位です。全体でも万年ビリグループで、2023年版(2024年発表)では、142カ国中141位とブービー賞でした。

世界人助け指数は、「見知らぬ人を助けたか」「寄付をしたか」「ボランティアをしたか」の3項目で測られ、日本は特に「見知らぬ人を助けたか」「寄付」の2項目でスコアが低くなっています。

例えば、1位のインドネシアでは66%の人が「見知らぬ人を助けた」と答え、90%もの人が「寄付」をし、65%の人が「ボランティア」をしたのに対し、日本では「見知らぬ人を助けた」は24%と、4人に1人です。「寄付をした」人は17%、「ボランティア」をした人は19%、という衝撃の結果です。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

11年の東日本大震災では、多くの国民が寄付やボランティア活動に参加し、社会全体の寄付への関心が大きく高まりましたし、寄付自体は増えています。それでも世界基準には追いついていません。

しかも、増えている寄付の多くは「ふるさと納税」です。

ふるさと納税は節税対策になったり、返礼品目当ての利用も多いため「欲しい未来への寄付」とは、少々異なるように思います。

24年度のふるさと納税への寄付額は、1兆2727億円と前年度比で14%増え、5年連続で過去最高を更新。特に、コメを返礼品とする地方自治体への寄付が伸びたそうです。

一方、アメリカから世界に広がったGiving Tuesdayは、感謝祭後のブラックフライデーやサイバーマンデーといった商業イベントに対抗するキャンペーンです。

「与えること(Giving)」に焦点を当て、人々は寄付、ボランティア、スキル提供、親切な行いなどを、様々な方法で助けを必要とする人々やコミュニティに貢献し、世界をより良くすることを目指します。

この時期は、SNSでも#GivingTuesdayの投稿が増え、色々な人たち、さまざまな団体が、それぞれのやり方で、誰かのために、温かい、行動をしていて。その投稿を見るだけでも楽しくなるほどです。

日本でも古くはお布施や托鉢、金銭や物資を出し合い、困窮者を助けたり、共同の目的のために貯蓄したりする相互扶助組織「講」や「結」といった寄付の文化はあります。江戸時代の大阪商人の間では、「きたのう貯めて、きれいに使う」といった独自の寄付の精神もありました。

なのに、今は世界ビリ。増えた寄付が「ふるさと納税」とは・・・残念です。

人は寄付をすると幸福感が高まることが、心理学や神経科学の研究で一貫してしめされています。また、「寄付された人」より「寄付した人」の幸福感の方が高いとの報告もあります。

Giving December。ちょっとだけ温かい気持ちになってみませんか?

みなさんのご意見、お聞かせください。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Shutterstock.com

河合 薫この著者の記事一覧

米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』 』

【著者】 河合 薫 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け