旧統一教会との浅からぬ関係を疑われながら、これまで頑ななまでに無関係を装ってきた高市氏。しかし昨年末、そんな首相の主張を根底から覆すと言っても過言ではない「証拠」が隣国でスクープされました。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、高市氏と教団との関係性をうかがい知ることができる、韓国メディアが報じた旧統一教会の内部文書の内容を詳しく紹介。その上で、今後の高市政権の命運について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:韓国紙が暴露した統一教会の内部文書、高市政権を直撃か
大きすぎる「ウソ」の代償。韓国紙が暴露した統一教会の内部文書、高市政権を直撃か
新年早々、高市首相に重大な疑惑が浮かび上がっている。昨年末、韓国のハンギョレ新聞が報じた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の内部文書に、高市首相と教団との深いかかわりを示す衝撃的な内容が含まれているからだ。
これまで高市首相は教団系のメディアに何度か登場しながらも「無関係」を主張、教義や教祖の名すら知らない素振りを見せてきた。もし、文書の中身が事実なら、大ウソつきということになる。
韓国では昨年9月、政治資金法違反などの疑いで、教団の現総裁、韓鶴子(ハン・ハクチャ)氏が逮捕された。2022年1月、尹錫悦前大統領の側近だった保守系野党の国会議員に約1,000万円を渡し、教団への支援を求めた容疑がかけられている。
問題の文書は、「TM(True Mother、真の母)特別報告」。日本統一教会の徳野英治元会長が2018年から22年の間、222回にわたって韓鶴子総裁に報告したものだ。
そこに書かれているのは日本での活動ぶりだ。政治家とコンタクトを取って信者を中心とした後援会を結成、「教育」をほどこし、教団の思想を植えつける。政治家は教会のイベントで祝辞を述べるといった内容。「ギブアンドテイク」方式と呼ばれているらしい。2021年12月の衆院選後、「我々が応援した国会議員の総数は、自民党だけで290人に達する」と徳野元会長が誇らしげに報告した事実も記されている。
特筆すべきはこの文書全体で高市氏の名前が32回も出てくることだ。2021年9月に高市氏が初めて自民党総裁選に出馬したさい、安倍晋三元首相が強く推薦していたことや、教団と高市後援会が親密な関係にあったことを記載。「高市氏が総裁に選ばれることが天の望み」という記述もあった。
事実、高市氏は1994~2001年に複数回、統一教会系の日刊紙「世界日報」に登場して保守的な意見を述べてきた。だが、これまで一度として統一教会と密接な関係があると認めたことはない。それどころか、統一教会に関する知識すら皆無であるかのごとくふるまってきた。自民党総裁選さなかの昨年9月30日、YouTube番組でタレント・中田敦彦氏と対談したさいの高市氏は、まさにその実例だ。
中田氏 「統一教会の問題で不思議なのは、自民党の保守派が教団と懇意にしていたこと。保守派の考えと教会の教義は整合性が取れないと思いますが」
高市氏 「教義というのは私はわからない。清和会の人たちが接点があったとい
うのは不思議ですよね」
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首相が制定に執念を燃やす「スパイ防止法」という統一教会の悲願
中田氏は、日本を「エバ国」、韓国を「アダム国」とし、植民地支配の贖罪のために、日本が韓国にお金を貢ぐ必要があるという統一教会の教義を説明。安倍元首相の国家観を受け継ぐ高市氏としては、統一教会の幹部と安倍氏が首相公邸で懇談し、その後、教団が名称変更を文科省に許された経緯について、徹底検証するべきではないかと指摘した。そのうえで、さらなる疑問をぶつけてゆく。
中田氏 「統一教会について調べていないのですか」
高市氏 「すいません、勉強不足でしたね。関係を持たないようにするというレベルの知識だけしかありませんでした」
中田氏 「高市さんって経済安全保障とか徹底的に調べる人なのに、敬愛する安倍さんの死に関わるこの教団について一切、リサーチしなかったのは何か原因があるのですか」
高市氏 「ないです。いっぱいいっぱいです」
中田氏 「教祖の名前はご存じですか」
高市氏 「…」
中田氏 「文鮮明という方で、現在のトップは誰かご存じですか。韓鶴子という…」
高市氏 「ああ、あの、今。はい、まさに。“つる子”と言っちゃだめなんです
よね」
自分と教団を切り離したい一念であろうが、こうした返答ではかえって疑惑が深まるばかりだ。
むろん教団としては、「天の望み」どおり首相の座についた高市氏への期待感は高まる一方だろう。高市首相は「スパイ防止法」の制定に執念を燃やしているが、それは統一教会の“悲願”でもある。
安倍晋三氏の祖父、岸信介元首相が旗振り役となって1985年、「スパイ防止法」の関連法案を国会に提出した。人権侵害を怖れる世論や野党の反発を受けて廃案になったが、その後も、統一教会と“一心同体”の勝共連合が自民党の保守系議員とともに制定運動を継続してきた。
高市氏は昨年5月、党の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会の会長として、スパイ防止法の導入などを当時の石破首相に提言している。維新との連立合意書にも、スパイ防止法の検討を2025年に開始し、速やかに法案を策定、成立させるとの条項を盛り込んだ。
インテリジェンスの大切さを説く高市氏が、この国の政治に介入する勢力について何ら情報を持ち合わせないと言うのは、いかにも不自然だし、無理がある。
高市氏はこれまで、真相がうやむやにされたままの自民党と統一教会との関係について「再調査」するかどうかをメディアで質問されたさい、否定的な態度をとってきた。しかし、今回、韓国メディアによって、当事者が作成した有力資料の存在が明らかになり、自民党への疑惑がさらに深まった以上、首相である高市氏が知らぬ存ぜぬではすまされない。
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効果的だった教団から萩生田氏への「エルメスのネクタイ」贈呈
この「TM特別報告」には、参議院選を約3週間後に控えた2019年7月2日、統一教会と日本政界の蜜月関係が安倍元首相と日本統一教会の幹部らの「20分面談」の席で絶頂に達したと書かれている。
その日、6回目となる安倍氏との面談で、教団の徳野元会長は、安倍氏の推薦する北村経夫氏(現参院議員)への応援について「これまでは10万票だったが、今回は30万票とし、最低でも20万票は死守する」と宣言。それに対して安倍氏は「非常に喜んで安心しているようだった」とも記されている。
またその席で、徳野元会長は安倍元首相と自民党の萩生田光一幹事長代行(当時)にエルメスのネクタイを贈呈。「たった一本のネクタイだったが効果的だった」と韓鶴子総裁に報告したという。
自民党はこれまで、統一教会とは「組織的な関係はない」と説明してきたが、自民党の総裁であり首相であった安倍氏が、自民党候補の選挙応援について、教団幹部とこのような話し合いをしていたのであれば、その言い分はまったく通用しない。
1月23日から通常国会が開会する。野党各党はこの問題や、日本維新の会の「国保逃れ」について激しく追及をはじめるに違いない。統一教会と自民党との癒着問題が再燃すれば、連立入りするかどうかに注目が集まる国民民主党にしても、対応がさらに難しくなる。自らへの疑惑も含め、高市首相が全容解明に乗り出さなければ、高止まりしている支持率にも影響が及ぶだろう。
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image by: X(@高市早苗)