トランプ外交の「再始動」により、にわかに緊張感が増した2025年の国際情勢。その流れは今月3日のベネズエラへの軍事侵攻でさらに加速したと言っても過言ではありません。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、トランプ氏が国際法軽視のベネズエラ侵攻に踏み切った背景を分析し解説。さらに今後のアメリカとベネズエラの交渉の行方を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:迷走と混乱を極める国際情勢‐トランプ外交が導く世界的な悲劇
「平和の調停者」の張りぼて。迷走と混乱を極めるトランプ外交が世界に撒き散らす悲劇
「私は今、世界中で悲劇を引き起こしている数々の紛争を止め、平和の調停者として、世界に平和を取り戻すのだ」
トランプ大統領が2期目就任前からそう主張し、ロシア・ウクライナ紛争やイスラエルとハマスの相克についても“早期の解決”を宣言していました。
このコラムでも何度もお話ししている通り、戦闘を一時停止させ、話し合いによる解決を促したことについては、高い評価ができると考えていますが、実際には中長期的な戦略を一切持ち合わせない“張りぼて”の和平・仲介に終始し、ロシア・ウクライナ戦争はもうすぐ4年を迎え、イスラエルとハマスの間の“和平合意”も、イスラエルの抵抗もあって実際には第1段階も完了しておらず、それを根拠に、イスラエルはガザへの攻撃を再度強め、パレスチナ全域の支配に対する意欲を隠そうともしていません。
“成功”したと言われているコンゴ民主共和国とルワンダの国境紛争の調停も、まだ具体的な実施過程に移行しておらず、鉱物資源の権益を巡り、ルワンダとコンゴ民主共和国との争いに、米国が加わるという悪循環が起こっていますし、インドとパキスタンのカシミール地方を巡る衝突も、小康状態を保っているものの、いつ再発してもおかしくない状況です。
さらにはタイとカンボジア国境紛争についても、表面上の停戦は成立したものの、停戦後の補償や復興をどうするのかといった具体的なアイデアが示されていないため、こちらもいつ再発するか分からない不安な状況です。
唯一、アゼルバイジャンとアルメニアの間の仲介については、トルコとロシアを巻き込む形で状況は落ち着き、ロシアとウクライナを迂回する形での新しい通商の回廊を設置することで協力を深め、それが和平の維持に一役買っていますが、今後、トルコとロシアの意向が変わったり、アメリカのアルメニアへのコミットメント度合いが低下したりするようなことになれば、また何が起こるか分かりません。
トランプ大統領の“平和の使者”または“平和の調停者”としての成果は、非常にfragileかつ不安定な基盤の上でいつ消えてもおかしくない、危険な状況に置かれているというのが、最もバランスの取れた見解・認識なのではないかと考えます。
そのような中、トランプ政権のもう一つの顔が目立つようになってきました。それが、アメリカが誇る圧倒的な軍事力と経済力を盾に、一方的な価値観を押し付ける“力による外交”を前面に押し出す姿勢です(皮肉な言い方をすれば、2期目に入り、やっと世界最強とされる軍の使い方を理解し、それをトランプ流に活用したことで、圧倒的な軍事力を見せつけつつ、世界を混乱の極みに導いてしまうドアを開いてしまいました)。
例えば、2025年12月25日のクリスマスに合わせて強行されたナイジェリア国内のIS勢力への大規模攻撃は、表面上はキリスト教徒の保護を目的として謳っていますが、アフリカ大陸最大の原油埋蔵量を誇り、アフリカ大陸で南アに続く第2位の経済規模を持つナイジェリアの資源および投資機会の獲得を目的に、ISの扱いに苦慮していたナイジェリア政府軍を助けることで、経済的な見返りを得ようとしているとも言われています。
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大きな恨みを残す「ベネズエラ軍事侵攻」という愚策
ただ、これまでとは違い、露骨にアメリカの軍事力を用いる過激な方向に傾いているように見え、今後、世界をより危険に晒し、無法状態を強める恐れを感じます。
その動きがより鮮明になったのが、1月3日に行われたベネズエラへの奇襲攻撃とMaduro大統領夫妻の連行・拉致です。
1月3日に米陸軍特殊部隊のデルタフォースと海軍第160特殊作戦航空連帯(通称“ナイト・ストーカーズ”)によるベネズエラへの奇襲攻撃が行われ、大統領夫妻が捉えられてアメリカに連行されるという衝撃の事件が起きました。
攻撃前にサイバー攻撃によって首都カラカスを停電させ、真っ暗闇の中を米軍のヘリが飛び交い、大統領夫妻を確保するという作戦は、アメリカ側に全く犠牲者が出ることなく作戦を遂行したという点では軍事的には大成功と言えますが、国際政治および倫理上は大きな恨みを残す愚策だったと考えます。
ベネズエラ国防省および内務省によるとこの攻撃で100名以上が死亡し、うち40数名はキューバ政府から派遣されていた軍事顧問団だったとのことですが、その他に攻撃に巻き込まれた一般市民も犠牲になったと言われています。
内相が何度も公言するように、今回の事件を受けてベネズエラ国民の感情をさらに反米にすることになりましたが、このベネズエラへの奇襲攻撃と国際法を一切無視した(軽視した)アメリカの行いは、中南米諸国に暗い影と極度の緊張を与えることになっています。
すでにトランプ大統領自身がSNSなどで発言していますが、アメリカの威嚇の矛先はコロンビアのグスタボ・ペドロ大統領や、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領にも向けられ、「米国への麻薬の流入を阻止する行動に協力しないのであれば、Maduroと同じような扱いを受けるだろう」という不吉な脅迫が行われています。
この“米国への麻薬の流入を阻止する”というのが、今回、トランプ大統領が用いた“対ベネズエラ攻撃の正当化要因”の一つですが、果たしてこれはどれほど事実に基づいているでしょうか?
実はベネズエラからアメリカへの麻薬の流入というのは、国連で麻薬対策の中心的な役割を担っているUNODC(国連薬物・犯罪事務所)やCND(国連麻薬委員会)によると、トランプ政権が主張しているほどの大量のケースではなく、さらにベネズエラの麻薬密輸組織が扱っているのはほぼ全量が隣国コロンビアから米国に密輸されるコカインであり、ベネズエラはあくまでも中継地としての役割しか果たしていません。
また合成麻薬フェンタニルについては、中国が主な産地であり、それがメキシコを経由して米国に密輸されているというのが実際の流れであり、このフェンタニルの密輸にはベネズエラは“オフィシャルには”関与していません。
もし本当に“麻薬”問題が今回の奇襲作戦の正当化要因であるならば、ベネズエラへの攻撃と大統領の連行という荒業は説明できないのではないかと考えます。
あえてベネズエラと麻薬との関わり、そしてMaduro大統領と麻薬との関わりを見るのであれば、大統領を含む政権幹部が“太陽のカルテル(Cartel de los Soles)”と呼ばれる蜘蛛の巣のような組織を政府内および国軍内に張り巡らし、麻薬密輸の仲介から得た金銭を受け取っているという確たる証拠がありますが、果たして主権国家を攻撃し、国家元首を拉致・連行するほどの正当性を持つかどうかは非常に疑わしいのではないでしょうか(どちらかと言うと、バイデン政権時に受け入れたベネズエラからの経済難民の中に紛れて米国に入国したと言われている麻薬カルテルのトレン・デ・アラグアが、すでに米国内16の州で拠点を築き、中南米および中国からの麻薬の流入・密輸を助ける組織的な基盤が出来ていることの方が、はるかに深刻だと考えますが、これについても、これ以上は言及を避けておきたいと思います)?
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軍事侵攻の「本当の理由」の隠れ蓑に用いられた麻薬対策
麻薬と言う観点からは、ベネズエラ攻撃後、トランプ大統領がメキシコやコロンビアに対して発しているメッセージは、まだ説得力があるように思いますが、それでもメキシコやコロンビアに対して何らかの攻撃を仕掛ける確固たる理由にはなりません。
メキシコとコロンビアに対しての脅迫ともいえる物言いは、恐らく今、アメリカ政府と協議中の別のディールでの妥協・譲歩を迫るための脅しではないかと思います(これについては、他にいろいろと言いたいことはありますが、諸事情により控えておきます)。
それはアメリカが80年前に創設に加わった国連の憲章第2条第4項にある「いかなる場合にも、主権国家に対して武力による威嚇または武力行使を禁止する」という内容に違反し、国連憲章が例外的に武力行使を認める第7条の「自衛権の行使」の要件も満たさないと考えるからです。
中国からメキシコ経由で米国に流入している合成麻薬フェンタニルや、コロンビアからベネズエラを経由して米国にコカインが流入している現実は、もちろん国際的な対策および厳しい規制と監視が必要で、かつこの問題に対して米国が国内において何らかの対策を取ることについて異論はありませんが、それが主権国家に対しての武力行使を容認するような理由にはなり得ないと考えます。
米国政府も恐らくそのことは十分に理解しているかと思いますが、(トレン・デ・アラグアのネットワークを通じた)米国内における麻薬の横行への危機感の高まりと、トランプ政権発足時に掲げた公約において“麻薬問題への対応”が挙げられていたこともあって、麻薬対策を“本当の理由”の隠れ蓑に用いたのではないかと推測します。
では、“本当の目的”は何だったのでしょうか?
【ベネズエラの石油利権を“独占する”こと】と【中南米諸国における中国・ロシアとの勢力争いを制すること】ではないかと考えています。
チャベス前大統領時代にベネズエラの国有石油会社(1970年代に設立されたPDVSA)が、外資と協力で行ってきた石油事業の過半数を掌握することを義務付けましたが、その後、特に外資を締め出した事実はなく、アメリカもシェブロン社を窓口にベネズエラの石油の主要な輸出先となってきました。
ただここ10年ほどは中国がベネズエラの石油の最大の輸出国となり、中国も原油の確保のため、チャベス政権時代から合計100億ドル以上の融資をPDVSAに行う最大の融資国にもなっていて、それが中南米地域を“裏庭”として認識するアメリカの外交方針に対する危機と捉える要因になったのではないかと考えられます(ちなみにロシアは、石油会社ロスネフチを通じて数十億ドルの融資を行い、同時にベネズエラ軍に武器などを供与している関係にあります)。
今回の攻撃を受けて、ベネズエラの石油セクターは完全に操業停止しており、再開のめどが立っていないと言われていますが、最大の輸出国中国は「ベネズエラ産の原油を調達できないのは残念だが、機能が開発するまではイラン産の原油で需要を満たすことができる」としていますが、今後、ベネズエラの石油セクターを米国企業が握り、再編することには、強い警戒を抱いているようで、今後、石油セクター再編のアレンジメントの内容によっては、新たな米中間の緊張が高まることも予測できる事態です。
ちなみにこの“ベネズエラの原油”ですが、現在、埋蔵量は世界トップの3,030億バレルと見込まれており、全世界の埋蔵量の約17%を占めますが、設備の老朽化などで石油関連施設がフル稼働できておらず、原油を要する国々から見ると、非常に魅力的な“案件・権益”に映ることは間違いないものと思われます。
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報じられないベネズエラの原油を巡る米中ロの主導権争い
このベネズエラの石油を巡る相克は、報じられているようなものではなく、背後には米中(そしてロシア)との主導権争いが存在します。
その中で今回の攻撃に際し、見えてきたのが、これまで関係が深かったシェブロン社のコミットメントの強化ではなく、新たにエクソン・モービル社などをかませて、ベネズエラの石油セクターの再建を米企業に主導させ、事実上、アメリカのコントロール下に置くことで、原油を対中ディールの駒に用いようという思考(戦略ではなく)です。
ちなみにエクソン・モービル社と言えば、トランプ第一政権時に国務長官を務めたレックス・ティラーソン氏が、国務長官に就任する前までCEOを務めており、就任に際して現国務長官のルビオ氏がエクソン・モービル社のロシアとの親密さに対して懸念を示したことでも知られますが、現在、停滞はしているものの、トランプ政権がロシアに示したロシア・ウクライナ戦争の和平案の中にある“ロシアにおける石油・天然ガスセクターの共同開発”という軸の、アメリカ側の筆頭がエクソン・モービル社であることから、これは勘繰りに過ぎませんが、ロシアにおける開発とベネズエラの石油セクターの回復と近代化をパッケージにしたディールをロシアに仕掛けているのではないかと推察します。
もしそうだとすれば、今回はエクソン・モービル社に対してルビオ氏が噛みつかない理由が少しだけ分かる気がします。
そしてそのルビオ国務長官ですが、彼はキューバ系の移民で、キューバの現体制に対しては非常に厳しいスタンスを取ることで知られていますが、そのキューバの現体制が依存しているのがベネズエラの石油です。ベネズエラから石油を融通してもらう見返りに、キューバは軍事顧問やキューバの医療スタッフをベネズエラに派遣する関係を確立していますが、今回のアメリカによる攻撃でベネズエラの石油が実質上、しばらくは生産不能に陥り、輸出も停止することから、キューバではエネルギー安全保障に対する脅威となっています。
どうもルビオ国務長官はそれを“キューバ現体制潰し”の材料と見ているようで、現在、暫定大統領を務めるロドリゲス副大統領(ベネズエラ)との交渉でも、キューバとの関係遮断を要素に含めていると聞きます(同様のことは、同じくベネズエラの石油の主要な輸出先でもあるコロンビアにも言えるかもしれません)。
今回のアメリカの想定外の行動の背後にはいろいろな理由があるのかもしれませんが、主権国家に対して攻撃を仕掛けたという事実は到底受け入れがたく、米国内でも「明らかな主権侵害であり、それに米国民が巻き添えになった事実は受け入れがたい」と非難が相次ぐなど、事態の収拾はさほど容易ではないと思われます。
とはいえ、起こしてしまった事件をキャンセルすることは出来ず、すでに1月5日にMaduro大統領夫妻を法廷で訴追するというカードを切ってしまっているので、次のステップを考え、行動に移さなくてはなりません。
アメリカ政府はルビオ国務長官を交渉の窓口に据え、ベネズエラの今後について交渉をすることになりましたが、そこでカギになるのが、今回、ベネズエラの暫定大統領になったデルシー・ロドリゲス副大統領です。
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アメリカとベネズエラの交渉で想定される第1のシナリオ
そのデルシー・ロドリゲス副大統領(暫定大統領)は、自身は弁護士資格を持ち、これまでに外務大臣のほか、通信情報大臣、経済財務大臣を歴任し、2018年からは副大統領兼石油大臣を務めており、兄のホルヘ・ロドリゲス氏(元副大統領)は国民議会議長を務めていて、兄弟でベネズエラ政界のトップを務めています。
外交があまり得意でないMaduro大統領に代わり、ベネズエラの対外政策を担うことも多く、弁護士および外交官としての背景から、非常に交渉に長けていると言われている人物です。
チャベス元大統領に心酔し、2003年に国会議員になった後、チャベス政権の大統領府長官を務め、生粋のチャビスモ(チャベス氏の政治思想である反米・社会主義、ラテンアメリカ統合主義)の担い手とされています。
今回、Maduro氏がアメリカ政府に拘束(拉致)・創刊されたことを受け、1月5日付で暫定大統領に就任していますが、実質的な強力なチャビスモであり、かつMaduro政権のナンバー2であることには変わりなく、思想及びこれまでの人権侵害に関わる行動や麻薬カルテルとの関係などをベースに、2018年から米国からの制裁対象になり、2019年からはコロンビア、そして2020年以降はEUの制裁対象とされ、現在、それらの国々への入国が禁止されているという側面もあります。
生粋の社会主義者であり、反米主義者として知られ、チャベス・Maduro政権下で横行した人権侵害や誘拐事件、そして麻薬取引に係る問題に中心的に関与していると言われています。
そのような背景をもつロドリゲス氏ですが、今回、ベネズエラ政府を代表して、米国政府と交渉に臨むことになっていますが、果たしてどのようなシナリオがあり得るでしょうか?
1つ目のシナリオは【ベネズエラが米国から提示される条件を受け入れて、政治体制および治安の安定化に努める】というものです。
アメリカ政府(トランプ大統領)は、ロドリゲス副大統領を暫定大統領として直接の交渉相手として認め、ルビオ国務長官との交渉に臨むことを要請しています。
暫定大統領就任当初は、「Maduro大統領のみが憲法上選出された正当な大統領だ」と公言し、一刻も早い釈放と帰国を強く訴えかけ、アメリカと直接対峙する姿勢を示していましたが、今は「国際法の下、外交と対話を通じてベネズエラの安定化に向けて米国と協力する」という融和姿勢に転換したように見えます。
しかし、あまり報じられないのですが、実際には「米国との対話および協力については、アメリカ政府がベネズエラ政府に対して命令するような形式ではなく、あくまでもequal standing、つまり対等の立場で行う」という条件を突き付けていますが、これは恐らくアメリカ側が受け入れることができない条件だと思われます。
そのような中、巧みに譲れるものは迅速に譲り、アメリカ側が何かを獲得している、またはベネズエラ政府が妥協しているように見せつつ、肝心なところは譲らないという交渉術を実施しています。
例えば、石油権益について「3,000万バレルから5,000万バレル程度をアメリカに渡す」というニュースが流れましたが、これは新規のものではなく、国営石油会社の所有権強化の動きによって、ベネズエラ国内に残されたと言われている(より正確にはベネズエラ政府によって取り上げられていた)アメリカ系企業(主にシェブロン社)の既所有相当分を“返す”ことを意味するに過ぎません。
トランプ大統領およびルビオ国務長官が求めている“ベネズエラの石油権益をアメリカの管理下に置き、その収入はアメリカが管理し、いずれベネズエラ国民に還付する”という要求については、まだ交渉さえ始めていないのが実情のようです。
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トランプがさっそく繰り出したお得意の「SNS経由での圧力」
トランプ大統領はSNSで「ロドリゲス氏が石油権益を譲ることに同意するだろう」的な話をしていますが、ロドリゲス氏側はこれについてコメントしていませんので、これはお得意のSNS経由での圧力なのかなと考えています。
治安の安定化または政治の安定については、ロドリゲス氏は非常に反米の自身の素性は一旦隠し、反米的なアピールをパドリノ国防相やカベジョ内務・法務相に任せ、国内における親チャベス・Maduro勢力の引き締めと連帯の強化を図っているようです。ゆえに“安定”はしていますが、これが望ましい状況かどうかは不明と言わざるを得ません。
一件、非常にスピーディーに対応し、アメリカからの第2次攻撃を回避する策を取っているように見えますが、実際にはMaduro派に広がる混乱を鎮め、団結を強めているのが実情です。
今のところ、アメリカ政府曰く、ロドリゲス氏との交渉は順調に進められているとのことですが、チャベス氏を心酔し、Maduro政権の要とまで言われたロドリゲス暫定大統領の交渉術の前に、国内外にアピールできるような成果を獲得できるかは不透明です。
またこのシナリオの危険性は、アメリカが今後を話し合っているロドリゲス暫定大統領は、あくまでも生粋のMaduro派であり、欧米的な立場では人権侵害および麻薬横行の片棒を担いでいる張本人とも言われていて、制裁対象にしているような人物を相手に“将来”を決めようとしているプロセスが、果たして反Maduro派の人々に受け入れられるかは非常に怪しいと考えています。
2025年度のノーベル平和賞を受賞したMachado女史をはじめとする野党などがロドリゲス暫定大統領とその仲間たちが“決めた”内容に従うのは難しいでしょうし、現政権のみならず、国軍も行政機関もMaduro派で固められた状態で、反Maduroの方針を推し進めるのは困難だと思われます。
アメリカの政府関係者曰く、このシナリオ下でのベストシナリオは、「アメリカとの協議の末、ベネズエラ国内政治が安定を取り戻したのち、ロドリゲス暫定大統領が総選挙を行い、選挙で選ばれたリーダーがベネズエラを統治するという“平和裏の権力の移行”が行われること」だそうですが、果たしてうまくいくでしょうか?
私は懐疑的です。
2つ目のシナリオは――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年1月9日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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