「ブルーカラービリオネア」という言葉が米国を中心に広く使われるようになりました。きっかけは人気司会者マイク・ロウ氏がホストを務めた番組「汚い仕事(Dirty Jobs)」です。番組では下水道清掃員や高所作業員など、きつくて汚くて危険だが社会になくてはならない仕事を体験し、彼らの尊厳とプライドを世に知らしめました。熟練の溶接工や配管工は大学教授より稼いでおり、トランプ政権もブルーカラー養成を支援しています。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では著者で健康社会学者の河合薫さんが、ブルーカラービリオネアの実態と日本を支える現場労働者の誇りについて語ります。
「ホワイトカラーエリート」への逆襲
「ブルーカラービリオネア」が話題になっています。
明日(22日)公開の日経ビジネスの連載でも取り上げましたが、本メルマガでは「その実態」について書こうと思います。
「ブルーカラービリオネア」という言葉が、米国を中心に広く使われるようになったのは、人気司会者のマイク・ロウ氏がホストをつとめた「汚い仕事(Dirty Jobs)」がきっかけと言われています。
「Dirty Jobs」では、マイク・ロウ氏が、全米各地の「きつくて、汚くて、危険だが、社会になくてはならない仕事」に弟子入りし、実際にその作業を体験するドキュメンタリー番組です。
都会の地下に潜り、凄まじい悪臭と闘いながら泥を掻き出す「下水道の清掃員」、農業や畜産業の、命と隣り合わせの生々しい現場で働く「家畜の去勢や死体処理員」、常に命の危険があり、過酷なインフラ整備をする「炭鉱夫や高所作業員」、私たちが出したゴミを、再利用するために手作業で分別する「清掃係員」など、文字通り「泥にまみれる仕事」を自ら体験し、彼らの彼女らの尊厳と、尊さ、プライドを世に知らしめました。
マイク・ロウは視聴者に問いかけます。
「大学へ行って借金を背負い、やりたくもないデスクワークに就くのが唯一の正解なのか?」と。
そして、彼ら彼女らの給与明細を公開し、「熟練の溶接工や配管工は、大学教授より稼いでいる。しかも彼らは、自分の仕事に誇りを持ち、誰よりも人生を謳歌しているぞ」と、現場のリアルを伝えたのです。
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日本を支えるブルーカラー
さらに、彼は財団を設立し、「Work Ethic(働く倫理)」を重んじる若者に奨学金を出すなど、「現場仕事=知的で誇り高い、勝者の選択」というイメージを定着させました。
大卒の学位なんて意味がない。嘘のつけない現場で戦う人たちが、自分を軽視してきたホワイトカラーエリートたちへの逆襲を、極めて誠実な形でマイク・ロウは伝えたのです。
実は、トランプ政権も「ブルーカラービリオネア」を後押ししています。
エリートの象徴である、ハーバード大学など有名私立大学への助成金をカットしようとする一方で、ブルーカラー養成を支援します。
昨年、7月に成立した減税・歳出法(OBBB)では、政府が奨学金「ペル・グラント」の支給対象に、従来の一般大学の授業料だけでなく、26~27学年度から職業訓練などの短期資格取得プログラムの費用も加えることも決めたそうです。
実は、私は工場が好きです。講演会などで呼ばれると可能な限り「現場」を見せてもらうのですが、足を踏み入れた途端、胸が熱くなります。
工場で働く人たちの実直なまでの真面目さに、無性に感動する。彼らからは「上司に評価してもらおう」とか、「いいところを見せてよう」とか、「他人をおとしめてやろう」といった、卑しさや野心を微塵も感じません。
ブルーカラーこそが、日本を支えているのだと、心から思うのです。
みなさんのご意見お聞かせください。
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