MAG2 NEWS MENU

日本はイランや中国とどう向き合うべきか?人気コンサルが「国益」と「倫理」のはざまで考えたこと

イラン・トランプに関する記事を発信した人気コンサルの永江一石さん。それを読んだ読者の方から鋭く踏み込んだ質問が届きました。永江さんはその質問に対し、自身のメルマガ『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』の中で、建設的な議論ができてうれしいと語りながら、丁寧に回答し、自身の意見を語っています。

日本は非人道国家と連帯すべきか?

Question

永江さんこんにちは。長らくnoteを拝読していますが、最近の永江さんのお考えに疑義があることが多く、少し踏み込んだご質問をさせて頂きますことをご容赦ください。(なお私は右翼でも左翼でもありませんし、大学では法律・国際法を学び今は会社経営をしており、永江さんがよく絡まれているネトウヨやパヨクとは無縁の人間です)

先週のイラン・トランプに関する記事で、永江さんは、ホルムズ海峡に通行料を課すというイランの動きを「頭が良い」「感心した」と仰ったり、中国が中越戦争以降大規模な軍事進攻はしていないので中国とアジアの一員として連帯していくべきとの趣意の発信があられました。私としては、イランと中国に対する考え方には反対ですので、以下ご意見をお聞かせいただけたら幸いです。

・イランについて

アメリカのイランへの攻撃はあまりに一方的で非があることも明白ですが、イランもイランで、自国民を弾圧し続けてきた非人道的政権で、ホルムズ海峡の通行料を取るというのも、国際海峡を通行する船を脅して通行料を取るのは違法である可能性が極めて高い行為です。これのどこが「感心する」のでしょうか。

また、永江さんは、イランの最近の自国民のデモ弾圧の際の死者数が4万人ではなく3~4千人だとネトウヨに抗弁されていたのも拝見しましたが、デモの弾圧で数千人規模の死者が出たとされるイラン政権について、どう評価されているのでしょうか。

つまるところ、永江さんが、アメリカの非は指摘して、イランの非を指摘しないことに大変疑問を感じており、なぜそうした発信をされているのかお考えをお聞かせいただけたら幸いです。(または私の解釈に誤りがあればご解説頂けたら幸いです)

・中国について

中国に関しても中越戦争以来に大規模な軍事侵攻をしていないとしても、南シナ海の軍事拠点化・台湾での軍事圧力、香港の弾圧や、ウイグルでの深刻な弾圧・人権侵害(アムネスティインターナショナルは人道の罪を指摘し、複数国はジェノサイドと糾弾)など、非人道的な行為への深刻な懸念が示されている国です。

なぜそうした非人道的な国の問題やリスクを指摘せずに、連帯を推奨するのでしょうか。内政からも外交姿勢からも、対話による解決がどの程度成り立つのかについても強く疑問を持ちます。

もちろん、トランプの動きがある中でアメリカにばかり依存するリスクも十分理解しますし、中国との関係は現実的に考えなければならないことも理解しますが、だからといって非人道的国家と連帯しようとはあまりに飛躍した考えではないでしょうか。会社経営で例えれば、しょうがないからといって反社との取引に会社を依存させにいくような考えだと思います。

この点についてもお考えを聞かせて頂けますと幸いです。(同様に私の理解が違えばご教示頂けますと幸いです)

永江さんからの回答

非常に鋭く踏み込んだ良いご質問をいただき、回答するのが楽しみでしたw。

ネトウヨでもパヨクでもないフラットな視点からの疑問は、ただの意見の相違であり、建設的な議論ができて嬉しいです。わたしの真意をイランと中国の2つのテーマに分けて、丁寧に回答させていただきますね。

まずはイランについてですが、わたしがイランのホルムズ海峡通行料の課金などを「頭がいい」「感心した」と言ったのは、彼らの行動が国際法的に正しいとか、道徳的に素晴らしいと言っているわけではありません。国家と民族の存亡をかけた生き残り戦略として非常に計算高く、したたかであるという事実を評価したんです。

イランとイスラエルが今やっていることは、負けたら自分たちの国や民族が消滅するという究極のサバイバルです。もしイランがイスラエルやアメリカから攻撃された時、おとなしくしてホルムズ海峡も封鎖しなかったらどうなると思いますか?

世界中の人々は、イランが攻撃されたことすら気づかずに終わるでしょう。アメリカやイスラエルの圧倒的な宣伝力によって「イランは核開発をするテロ国家だから叩かれて当然だ」というニュースだけが世界中に広まってしまうんです。実際にアメリカがベネズエラに侵攻して大統領を逮捕したというニュースを知っているのは何人いるか。Reuters/Ipsos調査ではなんと1/3のアメリカ人が知らないと回答しています。日本人なら7割は知らないと思います。アフリカやアラブの人たちはどうか。

だからこそイランは世界中に多大な迷惑をかけてでもホルムズ海峡を封鎖し、「我々は今、攻撃されているんだ!」と世界中に問題提起したわけです。生き残るためになりふり構わず、世界中を巻き込んでアメリカやイスラエルがおかしいと気づかせる。その手段を選ばない執念と計算高さを「頭が良い」と表現しました。

この記事の著者・永江一石さんのメルマガ

初月無料で読む

次です。

「イランは自国民を弾圧する非人道的な政権だ」とありますが、もちろんデモ弾圧で数千人の死者が出たことは事実であり、良くないことです。しかし、ではなぜアメリカはそれを理由にイランを攻撃しておきながら、他国(パレスチナ)の領土を不法占拠し、国連のレポートでも指摘されるような子どもを含む十万人規模の虐殺を行っているイスラエルとは一緒になって攻撃するんでしょうか。トランプはイスラエルを一切責めていませんよね。

自国民を数千人弾圧した国を非難するなら、他国民を十万人規模で虐殺している国の方を先に非難すべきではないでしょうか?国連ははっきりとイスラエルのやっていることを「ジェノサイドだ」と認定しています、この強烈なダブルスタンダードがおかしい、と言っているんです。さらにミャンマーや北朝鮮やインドネシア、アフリカ諸国でも数万単位の弾圧は過去に行われましたがアメリカは攻撃していません。攻撃するメリットがないからです。

海外にいるイラン人はもっと攻撃して政権を転覆させてほしいと言っていますが、彼らはもとパーレビ国王派で革命で海外に逃げた人たち。バーレビ時代は米国と仲が良く、パーレビ王政の秘密警察 SAVAK は、反体制派の監視、逮捕、拷問、処刑で知られていました。

また、1976年のアムネスティ報告では、SAVAKの拷問が詳述され、シャー体制は当時「世界最悪級の人権侵害国」とされた、とEncyclopedia.comがまとめています。規模感としては、1974~75年ごろ、アムネスティはイランの政治囚を2万5,000人~10万人と推計していました。革命期には、シャー側治安部隊によって約500~3,000人が殺されたとの推計があります。つまり海外にいるパーレビ派も同じことをしていたわけですよ。

さらに言えば、イラン国内の反政府デモには、トランプ政権をはじめとするアメリカが裏で大量の武器を供給し、政権転覆を狙っています。デモ側からも銃撃があり、治安部隊側にも数百人の死者が出ている。つまりアメリカが意図的に内戦状態を煽っているテロ支援国家的な側面もあるわけです。

だからわたしはイランの非を無視しているのではなく、イスラエルやアメリカがイランを非人道的だと責める資格なんて全くないという現実を指摘しているんです。

この記事の著者・永江一石さんのメルマガ

初月無料で読む

次に中国についてです。結論から言うと、わたしが言う「連帯」というのは、中国の強権的な体制や人権弾圧を素晴らしいから見習おうと言っているわけではありません。アジアの巨大なビジネスパートナーなのだから、わざわざ喧嘩を売って無駄な敵対をする必要はないという、極めてドライで現実的な戦略の話です。

質問者さんは会社経営に例えて「中国と連帯するのは反社で取引するようなものだ」とおっしゃいましたが、では国際法というルールに照らし合わせた時、本当の反社はどこでしょうか?

イラクに大量破壊兵器があると嘘をついて侵攻しました。イラク人全体の戦争関連死約 15万人~46万人超、研究によっては65万人超です。これはもうナチスドイツ並みですよね。

ベネズエラを攻撃したり、国連の決議もなしに他国への武力侵攻しているのはアメリカです。一方で中国は中越戦争以降、他国への本格的な武力侵攻は行っていません。今の世界情勢だけを見れば、あちこちを侵攻して回るアメリカよりも、中国の方がよほどマシで信頼できると考える国(ヨーロッパや中東も含めて)が増えているのが現実です。アメリカ人でさえ、中国に不信感をもっていた4割強が2割まで減ったと伝えられています。

ウイグルでの弾圧は、我々から見れば非人道的で恐ろしいことです。しかし中国政府のロジックでは、あれは国内問題なんです。

ウイグルに関しても、歴史を辿ればかつて彼ら(ウイグル側・騎馬民族・清のルーツ)が何百年も漢民族(今の中国共産党の中核)を支配し、弾圧してきたという複雑な背景があります。今の中国政府からすれば、あれは歴史的な復讐であり、民族浄化という内政の延長なんです。もちろん弾圧は悪いことですが、そういう歴史的感情のマグマがあることを知っておく必要があります。

また「自国民を弾圧する国とは付き合えない」と言うならアメリカはどうでしょうか。ネイティブ・アメリカンから土地を奪って虐殺し、アメリカ南部では黒人と白人が結婚すれば逮捕され、黒人には投票権すらなく、凄惨なリンチが合法的に行われていたんです。

今でもブラック・ライヴズ・マター運動が起きるほど根深い差別が残っています。自国民への弾圧という点でも、アメリカは決してクリーンな国ではありません。

南シナ海の軍事拠点化にしても、実は中国だけでなくフィリピンやマレーシアなど周辺7カ国がお互いに領有権を主張して基地を作っているのが現実で、中国だけが一方的に悪事を働いているわけではないんです。

長くなりましたが、わたしが言いたいのは「アメリカの宣伝を鵜呑みにして、無自覚に中国を仮想敵国にするのはやめよう」ということ。会社だって競合他社や腹の中が読めない相手ともジョイントベンチャーを組んで利益を出すことはありますよね。

日本はアメリカ一辺倒になるのではなく、アジアの一員として中国とも経済的にしっかり連帯し、したたかに国益を追及すべきです。感情論で「非人道的な国だから敵だ」と切り捨てるのは簡単ですが、それではこの複雑な国際社会を生き残ることはできません。

わたしのイランと中国に対するリアルな見解は以上ですが、皆さんのビジネスや国際情勢を読み解くヒントになれば幸いです。ご意見・反論など大歓迎ですので、またいつでもご質問ください。(この記事は、メルマガ『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』を一部抜粋したものです。そのほかの質問や、今週のニュースなど、メルマガ全文をお読みになりたい方はぜひ初月無料のメルマガにご登録ください)

この記事の著者・永江一石さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Shutterstock.com

永江 一石この著者の記事一覧

商品開発や集客プロモーションを手がける会社を設立し多くの企業のマーケテイングを行う。メルマガでは読者から寄せられたマーケティングのお悩みに対し具体的な解決策を提示。ネットショップや広報担当を中心に多くの購読者から支持されている。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ 』

【著者】 永江 一石 【月額】 初月無料!月額330円(税込) 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け