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高市早苗から「笑顔」の仮面が剥ぎ取られた瞬間。G7サミットで露呈した“孤独な政治家”の素顔

意気軒高で乗り込んだG7エビアン・サミットの会場で高市首相が浮かべた「いつもの笑顔」と、ふとした瞬間に垣間見せた「険しい表情」。その姿は、国際舞台で存在感を示そうとする思惑の一方で、理想と現実の間で揺れる政治家の内面を映し出しているようでもありました。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、G7での高市氏の振る舞いや各国首脳との距離感を分析。さらに中傷動画問題を巡る国会答弁にも触れつつ、背景にある首相の政治家としての資質について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:笑顔と孤独。G7エビアン・サミットが見せた「宰相」の素顔

疲れ切った目、つまらなさそうな口元。G7サミットで高市首相が見せた「素顔」

高市早苗首相といえば、「笑顔」がトレードマークである。フランスで開催されたG7エビアン・サミットでも、たえず笑顔を振りまいていた。もはや“芸”の域に達していると言ってもいいほどだ。

もちろん、人間の集中力には限度がある。連日連夜公務に忙殺されてきた人に、一瞬たりとも緊張の糸を緩めるなというほうが無理だろう。

G7の会議が始まる直前。首脳たちが座る円卓の会場を動画は映し出していた。立ったまま談笑を続ける各国首脳を横目に、ただ一人着席し、所在なげに回転椅子を体で左右にまわす高市首相。人々の輪の中に苦もなく入っていけそうな開放的イメージがあるだけに、意外な光景ではある。それでも、笑顔をまわりの首脳に向けることで、かろうじて“一体感”だけは保っている。

だが次の瞬間、その集中力が途切れたのだろうか。カメラは残酷にも捉えていた。疲れ切った目、つまらなさそうな口元。それまでとはあまりに違う険しい表情だ。これは何を物語るのか。

「世界の中心で咲き誇る」。それが高市氏の夢想する外交の姿だ。日米首脳会談においては、トランプ氏から最大級のもてなしを受け、親密なハグをかわした。イギリスのスターマー首相、イタリアのメローニ首相、フランスのマクロン大統領も相次いで来日し、日本初の女性首相への称賛の言葉を贈ってくれた。

G7デビューとなるエビアン・サミットでも、きっと“主役級”の存在感を放てるものと高市首相は期待したに違いない。ところが、現実はどうだったか。イランとの戦争終結交渉で頭がいっぱいのトランプ氏は、にこやかに微笑みかける高市首相に軽く目を合わせただけで通り過ぎてしまった。他の首脳たちも雑談に夢中で、自分のことなど眼中にないかのようだ。

国際舞台で内弁慶であった日本のリーダーのイメージを覆したいと願う高市首相にとって、G7デビューは実力を示す格好の機会だった。中国による輸出規制が懸念されるレアアースなど重要鉱物の共同備蓄について、実績のある日本がノウハウを提供する。そのような経済安保にかかわる二つの提案を携え、意気揚々とヨーロッパに赴いた。

G7に先だって、次世代戦闘機を共同開発するイギリスとイタリアを訪問し、スターマー首相、メローニ首相と個別に会談したのは、単なる表敬ではない。高市提案を後押ししてもらうという重要な目的があった。そのかいあって、G7の共同声明には、それらの提案が盛り込まれた。

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夢想が現実に打ち砕かれるや恐ろしく頑なになる高市首相

日本の保守系メディアは、高市首相が経済安保を主導したと高く評価した。同行した産経新聞の記者はこう書いた。

高市総理は空き時間を使って各国の首脳に積極的に話しかけ、コミュニケーションを図っていた。過去に同行した外遊先でも、同様の姿が多く見られた。今回の議論の場でも、総理周辺が「言うべきことは全て言った」と話すように議論をリードする姿が見られ、イギリスのスターマー首相などは深く頷き「その通りだ」と言っていた(政府関係者)。

しかし、手放しで褒めたたえられるほどの“成果”だったのかというと、少しばかり疑わしい。

欧州各国にとって、中国は依然として巨大な市場であり、サプライチェーンの維持・拡大は国内経済の切実な課題だ。2025年暮れから26年にかけて、フランスのマクロン大統領やドイツのメルツ首相ら欧州首脳が相次いで“北京詣で”をしたのは、地政学的リスクを認識しつつも、実利的な関係改善を模索せざるを得ない欧州の台所事情を反映している。トランプ氏でさえ中国との関係を重視する姿勢に傾いており、経済安保上、日本の孤立が指摘される状況になっている。

そうした国際情勢のなかで、中国を総理就任早々に「台湾有事発言」で怒らせた高市首相が、中国への懸念を念頭に、重要鉱物の共同備蓄を推進しようとG7諸国に持ちかけているのだ。共同声明に盛り込みはしたが、欧州各国首脳の間では、大手を振って賛成し、中国に睨まれたくないという思いが共有されていたのではないだろうか。

欧州と日本の“温度差”を否応なしに突きつけられた“不完全燃焼”こそが、高市首相の垣間見せた表情の正体ではないか。そんな気がしてならない。

夢想したことが現実によって打ち砕かれる時、高市首相はおそろしく頑なになる。

日本国内でさまざまな問題を抱えているのは周知のとおりだ。円安とコストプッシュ型の物価高に有効な対策が打てず、じわじわと支持率が落ちている。おまけに週刊誌にサナエ・トークンや中傷動画の問題を暴き立てられ、心身ともに疲労は極限に達している。

中傷動画問題における国会答弁が常軌を逸しているのは、自分は「こうありたい」という理想を守ろうとするあまり、それに著しく反する現実を受け入れられないためではないか。嘘をついてでも、なかったことにしたいのだ。

AIに造詣の深い起業家に中傷動画の作成・拡散を依頼した疑いが持たれている木下剛志秘書はこの20年間、地元を丹念にまわり、高市陣営の選挙対策の中核を担ってきた。選挙はきれいごとではすまない。人間の欲望が渦巻く世界だ。

高市氏はアメリカ連邦議会の立法調査官という経歴を売り物に、情報番組のキャスターとしてテレビ界に登場した。米議会にそんな職業は存在しないといわれ、詐称を指摘する声も上がったが、ひるむことなく自己アピールにつとめ、テレビ出演で得た知名度によって当選を果たし、政界に進出した。カイロ大学卒業を看板にのし上がった小池百合子氏(現東京都知事)を思い出させる話だ。

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見え透いた逃げ口上に走るがゆえに立ってしまう「悪評」

高市氏について、「息を吐くように嘘をつく」とか「虚言癖がある」という悪評が見受けられる。これも「自分はかくありたい」という切実な願望に縛られるがゆえに、きれいごとでは済まない現実を受け入れられず、ついつい、見え透いた逃げ口上に走ってしまうせいではないか。

イメージが先行する高市氏の足らざるところを補い、いわば裏の戦いを牽引してきたのが木下秘書であろう。「高市事務所は他陣営の誹謗中傷をしたことがありません。それが矜持です」と胸を張る高市氏の理念と、木下氏が担う“現実”の裂け目から、ヘドロのようにオモテに噴き出してきたのがサナエ・トークンと中傷動画の問題といえる。

よく知られた事実がある。2024年の自民党総裁選でテレビ出演したさい、20人の推薦人のなかに6人もの“裏金議員”がいると指摘されて、高市氏が発した言葉。

「誰を推薦人に入れるかはチームに任せている。総裁選告示翌日の新聞を見るまで知らなかった」。

今回の中傷動画をめぐる答弁でもしばしば出てくる言い逃れの一典型だ。総裁選に立候補できるかどうかのカギを握る推薦人である。知らないわけがないではないか。平気でそんなことを言うから、悪評が立つのだ。「嘘も方便」ということもある。だがそれは、利己的なごまかしではなく、思いやりや知恵としての嘘を指す。

G7の会場で高市首相が垣間見せた苦悩の表情。むろんここには、ごまかしも何もない。一人で“タバコ部屋”にこもり、思うように動いてくれない自民党幹部や官僚たちに不満を募らせる孤独な宰相そのままだ。

高市氏が追い求める「世界の中心」を叶えてくれるはずの舞台は、彼女を映し出す鏡のようでもあった。笑顔という仮面を剥ぎ取った先に見えたのは、強気な答弁の裏側に隠し続けてきた、誰にも助けを求められない孤独な政治家の素顔だった。

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image by: 首相官邸

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