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あの麻生太郎ですら「敵に回したくない男」と語る“福岡県議会のドン”が受け取ってきた驚愕の金額と本人の言い分

本来ならば、地域住民の意思を政策に反映させるため汗をかく役割を担う地方議会。しかしその実態はあまりに不透明であることもまた事実です。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、福岡県議会で浮上した金銭授受疑惑や歴代県議らの証言をもとに、「ムラ社会」と化したその実態を検証。さらに地方政治の腐敗を生み出す構造的な問題を批判的に論考しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:「蔵内ドン」の福岡県議会スキャンダルが暴いた地方政治の末路

「ムラ社会化」する地方政治。「藏内ドン」の福岡県議会スキャンダルが暴き出した不都合な真実

嘘も方便という。それは利他的な目的があるから許される。だが、自分のエゴのために、いけしゃあしゃあと見え透いた嘘をつける政治家を放っておくと、ろくなことはない。

今回は、高市首相のことではない。福岡県議会で“ドン”と呼ばれる人物とその側近にまつわる話だ。

福岡県議会は最大会派・自民党を中心とした最も古典的な「ムラ社会」といえる。大ボスが君臨し、取り巻きたちが暗躍。議長や副議長をめざす議員に数千万円にもおよぶ現金を要求し、ポストを配分してきた。

おまけに、県や県議会の職員がかしずいてくれるのをいいことに、県民の血税を使って“お手盛り”三昧。海外視察名目の“議員御一行”ツアーも超豪華版で、ハワイでは一人1泊10万円超の高級ホテルにご宿泊とか。なんとこの3年間で計25回も海外に渡航し、費用は2億8,500万円にもおよんだという。

福岡県の場合はたまたま「ムラ」の外にはじき出された議員の一人が実名告発したから悪行の数々が白日の下にさらされた。全国を見渡せば、似たようなケースはこれまでにもあったし、これからも闇の中からオモテに出てくるだろう。なぜなら、形骸化した審議、高額な議員報酬、県職員のことなかれ主義など、腐敗のもととなる構造がどこの議会にも横たわっているからだ。

福岡県の金銭授受疑惑を“告発”したのは、2020年から1年間にわたり福岡県議会の議長を務めた吉松源昭県議である。

2018年12月、議長ポストに意欲を燃やす吉松議員に当時の自民党県議団会長、原口剣生議員から「他会派への根回しのため懇親ゴルフ代・宿泊代が必要」と550万円を要求され、支払った。だがこれはほんの“序章”にすぎなかった。

「応じなければ冷遇される。議長に限らず、議運の委員長などのポストもあるが、そういったものから外されるだろうなという思いでした」(吉松氏)

そして、2019年10月。自民党県議団幹事長だった中尾正幸氏(現副議長)が要求してきたのは1,000万円だ。当時、自民党に所属していた吉松氏が会派の部屋にいたところ、中尾氏から「ちょっといい?」と応接室に呼ばれた。

吉松氏は録音していたその時の音声をこのほど公開した。

中尾氏 「あした松本会長が預かります」

吉松氏 「そうなんですね、はい」

中尾氏 「ちょっとね、大金やけんね。管理しとかんと」

松本会長とは、自民党福岡県連会長の松本国寛県議のこと。その翌日、吉松氏は議会棟内で中尾副議長同席のもと松本会長に1,000万円を手渡した。松本会長がその金をどうしたかはわからないが、「預かります」というからには、最終的にその金を受け取る人物は別にいるということだ。

吉松氏は言う。

録音に入っていないところでは「藏内氏に渡すから」という話だった。松本会長はあくまで『預かる』、預かって誰に渡すかというとそれは藏内氏だから、藏内氏に説明責任があるし、県民に納得のいく説明を果たさないといけないと思う。

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実力より金力がものをいうようになった「ムラ社会」

福岡県議会議長、藏内勇夫氏。1987年の県議選に初当選して以来、10期連続で当選を果たし、全国都道府県議会議長会の会長をつとめる大物中の大物だ。自民党県議団はもちろん、野党会派にまで影響力をおよぼし、「数」をまとめる力で議会を支配しているため、その意向は国政選挙の自民党公認候補選定まで左右するほどである。福岡には麻生太郎氏、武田良太氏といった大物政治家がいるが、彼らとて藏内氏を敵に回したくはないだろう。

そんなわけで、福岡県議会の議長、副議長などのポストは、蔵内氏の腹一寸で決まる状況が長年にわたって続いてきた。蔵内氏の歓心を買って余禄に預かろうとする連中がはびこるのも当然で、いつの間にか、彼らが形成する「ムラ社会」においては、実力より金力がものをいうようになった。

議長就任に1,000万円、副議長就任には500万円。これが慣例だったと吉松氏は言う。それを裏付ける発言をしたのは吉松氏が議長だった1年間、副議長を務めた江藤秀之県議だ。

吉松氏は2019年10月に議会棟の中で1,000万円を松本氏に手渡したが、江藤氏の場合は、就任前に博多の老舗料亭で開かれた懇親会で、茶封筒に入れた500万円を直接、藏内氏に手渡したという。この宴席には議長・副議長に就任予定の吉松氏、江藤氏と、蔵内氏、中尾氏、原口氏ら幹部5人が顔を合わせた。「藏内さんが早めに来たので、現金500万円を手渡した。慣習に従った」と江藤氏は説明する。

しかし、彼らの証言は、藏内氏、松本氏、中尾氏、原口氏によって一斉に否定された。藏内氏は記者の問いにこう答えている。

記者 「直接的にも間接的にも誰からも金銭は受け取っていないということでいいか」

藏内氏 「議会内の人事に関して、私はそういうことはあり得ません」

記者 「選挙の公認や支部長などに関してはどうか」

藏内氏 「全くありません」

それなら、日弁連ガイドラインに基づき、独立性の強い第三者委員会で客観的な調査をしたらいいようなものだが、藏内氏にはその気が全くない。その理由は「選挙が近い。それまでに短期間で調査をやっていただくことが大事」。つながりのある弁護士に任せて有利な結論を得ようとしているようだが、それで県民が納得するだろうか。

音声を暴露された中尾氏はメディアの声紋鑑定結果を受けて、自分の声と認めざるを得なくなった。それでも「そもそもお金を受け取ってない」という主張は変えようとしない。1,000万円を受け取ったとされる松本氏も「吉松氏、中尾氏と三者で面談したことはない」と真っ向から否定した。

吉松県議は、2024年10月の衆院選(福岡4区)に無所属で出馬した責任を取り、自民党を離党している。そんないきさつもあって、自民党への「政治的裏切り」という批判もあるようだが、これだけ具体的で詳細な告発が事実無根とは思えない。

2019年5月から20年6月まで福岡県議会の議長を務めた現在の厚生労働大臣政務官、栗原渉氏は15日の衆院厚生労働委員会で、金銭の支払いについて問われ、「一切ないし、何も存じ上げない」と語った。吉松氏の前任議長だけに、信じがたいことだ。

「ムラ社会」はボスを頂点とするタテ構造だ。取り巻きがボスを支え、その下にピラミッド型の序列が形成される。その秩序を守るために、ボスが不利になる発言はご法度ということらしい。

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変人の誉れ高い泉田裕彦氏が暴露した「新潟のドン」の囁き

ところで、地方議会のボスをめぐる腐敗は、福岡県だけの問題ではない。すぐに思い浮かぶのは新潟県のケースだ。

通産官僚、新潟県知事を経て2017年10月から24年10月まで衆院議員をつとめた泉田裕彦氏は、衆院選に出馬する前、2,000万~3,000万円の裏金を撒くよう星野伊佐夫新潟県議に要求されたと録音データをもとに“告発”した。

かつての田中角栄後援会「越山会」幹部で“新潟のドン”といわれた星野氏がスカウトしたのが泉田氏だ。録音データには、泉田氏を諭すように囁き続ける星野氏の声がおさめられていた。

それで泉田さん、勝とうさ、どう思うね。

もしさ、比例でひっかからなかったら終わりだよ。

とにかく必要経費を早くまこう。もう余裕がない。選挙が始まってからなんてバカはいない。今だ、今でも遅いくらい。

2,000万や3,000万出すのにもったいながったら人生終わるよ。

泉田氏が「違法行為にならないようにしないといけないので」と拒否反応を示すと、こう言った。

そんなものはね、いいですか、はっきり言うよ。言葉の問題だけであって実際はそんなもの気にしている候補者なんか1人もいないからね。

選挙に勝つためなら候補者は法律違反など気にしてはいけないと説く。「ムラ」の論理はいつも世間との乖離が甚だしい。

県議や市議に影響力のある大ボスは、その集票力を武器に、知事や国会議員を擁立し、当選させる。その力に頼らなければ選挙に勝てないことを肌身で感じる知事や国会議員は、大ボスの言いなりになるものだ。ところが「変人」の誉れ高い泉田氏の場合、そうは問屋が卸さず、逆に音声を暴露されてしまった。

地方議会が力を持ち、国政に多大な影響を及ぼすのも、長年にわたって“牢名主”のごとく閉鎖空間を牛耳ってきた権力者がいるからだ。福岡市の高島宗一郎市長は自著で、市長選への初出馬が決まった直後、ある議員に選挙活動費として5,000万円を要求され、断ったと書いている。その議員の正体はわからないが、政策や政治理念への共感ではなく、カネしだいで動こうとする輩が幅を利かしているのは確かなようだ。

国政を揺るがす権力者を生み出す地方議会の「ムラ社会」は、もはや地方自治の枠を超えた民主主義の癌である。カネでポストを売り買いし、血税を湯水のごとく使って身内の遊覧を貪る者たちに、これ以上の延命を許してはならない。

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image by: 福岡県議会公式ホームページ

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