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こども家庭庁の調査は何を示したというのか?「少子化対策」と「結婚観」に大きなズレが生じたワケ

少子化対策を考える上で、「結婚」と「子どもを持つこと」をどこまで同一のものとして捉えるべきなのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、こども家庭庁の調査結果とその報じられ方を検証するとともに、日本の少子化対策が「結婚」と「出産」をどのように捉えるべきなのか、フランスなど海外の事例も交えながら考えていきます。

こども家庭庁と少子化問題

9月1日(火)の朝、TBSラジオ『森本毅郎 スタンバイ!』を聴いていたら、番組内のニュースコーナーで、各省庁の概算要求や使用済み核燃料の地下処分のニュースと並んで、こんなニュースが読み上げられました。

「こども家庭庁が15歳から39歳までの若者を対象に実施した大規模調査で、未婚の若者のうち35.1%が『結婚するつもりがない』と考えていることが分かりました。一方『いずれは結婚したい』と答えた人は37.5%でした。結婚のハードルを訪ねたところ『収入への不安』が最も多い40%で、次いで『自由時間がなくなる』が34.4%、『結婚したいと思える人がいない』が32.6%となっています。」

これは放送後にラジコのタイムフリーで聴き直して文字起こししたものなので、一言一句、放送の通りです。あなたは何の予備知識もない状況でこのニュースを聴いたとしたら、一体どのように受け取りますか?あたしは次のように受け取りました。

「今や全体の1/3を超える若者が『結婚するつもりがない』と考えている」

「一方『いずれは結婚したい』と考えている若者も同じくらいいる」

「『結婚するつもりがない』と考えている若者の40%が『収入への不安』を理由に挙げている」

つまり「若い世代の『収入への不安』が解消されれば、今は『結婚するつもりがない』と考えている人たちも、そのうち40%は『いずれは結婚したい』に考えが変わるだろう」、あたしはそう受け取りました。でも、実際に以下のリンク先のこども家庭庁の発表を見てみると、ずいぶんと違っていたのです。

こども家庭庁『若者10万人の総合調査』

まずこれは、こども家庭庁が全国の15歳から39歳までの若者約10万人を対象に実施中の「若者10万人の総合調査」の7月時点での途中経過でした。この時点での有効回答数は6万7905人で、結婚に関する調査結果は、このうち未婚者4万3529人の回答を集計したものだと説明されていました。しかし、途中経過とは言え有効回答数は4万3529人ですから、有効回答数が2000人前後の新聞各紙の全国世論調査と比べたら、遥かに精度が高いと思います。

しかし、こども家庭庁の説明によると、回答者数は男性が35.6%なのに対して、女性は62.2%と大きく偏っており、年齢層も「35~39歳」が32.3%と最多、「20~24歳」が11.9%と最少と、上に偏っているのです。また、居住地も3大都市圏が7割弱と偏っています。そのため「この調査結果の数値を参照する場合は留意が必要」と書かれていました。

つまり、若者全体の考えと言っても、大都市に住んでいる年齢の高い女性の割合が高いため、回答に一定の偏りが生じている可能性があるということです。でも、回答に偏りがあるのは新聞各紙の全国世論調査も同様であり、こうしたアンケート調査では仕方ないことだと思います。

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そんな中、今回のラジオニュースと実際の調査結果の違いにあたしが驚いたのが、ラジオで「一方『いずれは結婚したい』と答えた人は37.5%でした」と伝えられた部分です。こども家庭庁の発表では、次のようになっていたからです。

「すぐにでも結婚したい」が9.5%

「2~3年以内に結婚したい」が10.3%

「5年以内に結婚したい」が7.7%

「いずれは結婚したい」が37.5%

つまり、未婚の若者のうち「結婚したい」と考えているのは、合計で65%(正確には64.9%)もいたのです。そして、残りの35.1%が「結婚するつもりがない」と回答していたのです。これが事実なのですから、それなら「結婚するつもりがない」の35.1%と並列で報じる場合は、この「結婚したい」の合計の「64.9%」を報じるべきじゃないでしょうか?

それにしても「すぐにでも結婚したい」や「数年以内に結婚したい」という極めて前向きな回答をすべて「なかったこと」にして、最も後ろ向きな「いずれは結婚したい」という項目の数値だけを報じたのには、何らかの意図を感じてしまいます。たとえば「結婚するつもりがない」という若者が増加している、という印象操作をしたかったとか。

また「結婚するつもりがない」と回答した人の理由についても、こども家庭庁の発表を見ると印象が変わります。

「安定した結婚生活を送れる収入への不安」が40.0%

「自由な時間がなくなる・趣味時間の短縮」が34.4%

「結婚したいと思える人がいない」が32.6%

「結婚のための住居や住居資金の不足」が30.3%

「こどもをもつかどうかの価値観の違い」が30.1%

「家事や子育て分担の偏り」が27.0%

この設問は「複数回答」なので、確かに「収入への不安」は40%で最多ですが、それだけが突出しているわけではないことが分かります。そもそも、残りの60%の人は「結婚しても十分にやっていける収入がある」のです。収入への不安はない。でも、結婚したら自分の自由な時間がなくなるから結婚する気がない。結婚したら子どもに関する価値観の違いでぶつかったり、家事や子育ての分担に関する懸念などが生じそうなので結婚する気がない。そういう人のほうが多いのです。

その上、数値からも分かるように、ほとんどの人が2つ以上の項目を選んでいます。つまり「結婚するつもりがない」という同じ回答をした人でも、その理由は十人十色、こんなところにまで多様化の波が押し寄せていたのです。それにしても「結婚したいと思える人がいない」が32.6%って、この人たちは「今後の出会い」をまったく想定していないのでしょうか?つーか、自分が将来的に結婚したいかしたくないかという問いと、今現在、結婚したいと思える相手がいるかどうか、あたしはまったく別の話だと思うのです。

だって、昭和なら「結婚相談所」、ひと昔前なら「婚活パーティー」、今どきなら「マッチングアプリ」と、結婚したいのに相手のいない男性や女性に対して、なるべくその人の希望に沿った相手を紹介するシステムって、いつの時代にもありました。つまり「結婚したいと思える人がいない」というその人の現状は「結婚するつもりがない」という回答の理由にはなりえないのです。

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ちなみに、今回の調査で「結婚したいと思える人がいない」と回答した女性の年齢別の割合を見てみると、次のようになっていました。

「15~19歳」が35.5%

「20~24歳」が32.6%

「30~34歳」が38.6%

「35~39歳」が41.0%

このように、30代前半から後半にかけて増加していました。30歳より30代半ば、30代半ばより30代後半のほうが増加しているのは、出産年齢の問題もあると思います。つーか、今現在、結婚したいと思える人はいないけど、将来的には結婚してこんなふうな暮らしがしたいとか、女性なら「何歳までには結婚して子どもを産みたい」とか思ってる人は山ほどいると思います。

また、あたしもそうだったので良く分かるのですが、独身女性の中には「結婚する気はないけど子どもは欲しい」と考えてる人もけっこうな割合でいます。それなのに、この設問は少子化対策の一環としての調査でもあるのに「子どもが欲しいかどうか」ではなく「結婚したいかどうか」を聞いてる時点で完全に周回遅れなのです。

未だに前時代の家父長制を正しい家族のあり方だと思い込んでる脳みそにカビの生えた自民党議員たちは、同じ考えを持つ旧統一教会からの強い要望で「こども庁」と決まっていた庁名を「こども家庭庁」に急遽変更しました。そして、自民党のスポンサーでもある日本会議からの強い要望で「選択制夫婦別姓」や「事実婚の容認」を避け続けて来ました。

一方、日本と同じく少子化が社会問題になっていたフランスでは、あたしのように「結婚する気はないけど子どもは欲しい」という女性が極めて多数だったことから、「事実婚」を「法律婚」と同等に扱うように、「婚外子」も「嫡出子」と同等に扱うように法律を改めました。すると、結婚せずに子どもを産む女性が増加し始めたのです。

そこでフランス政府は、働きながら子どもを育てるシングルマザーを支援するための法律を次々と可決して行きました。そしたら、結婚せずに子どもを産む女性がますます増加したのです。2人目を産むシングルマザーも増加しました。シングルマザーと言っても、子どもの父親である男性とは恋人として付き合ってるケースもありますし、同居してるケースもあります。ただし、愛するわが子は母親が育てて、国がそれを支援しているのです。

これが「ユニオンリーブル(自由縁組み)」というフランス人カップルの多くに選択された生き方で、日本の「事実婚」と同じです。フランス政府がこの「事実婚」を「法律婚」と同等にしたため、婚外子の数も急増したのです。事実婚で生まれた婚外子が差別されていた1970年代には、フランスの子どもの94%は嫡出子で、婚外子はわずか6%でした。

しかし、政府が「事実婚」のカップルも「法律婚」と同等に扱うようになった1980年代半ばから婚外子の数が急増し始め、2008年にはとうとう全体の52%と過半数に達してしまったのです。今ではフランスのどの小学校のどのクラスを見ても、嫡出子より婚外子のほうが多いのです。

そのため、婚外子に対する差別もなくなりました。それどころか、嫡出子も婚外子もまったく同等の権利を持ち、まったく同等の法的サービスを受けられるようになったため、「嫡出子」「婚外子」という用語そのものがフランスの民法から削除され、「子ども」という用語に統一されたのです。そして、その結果、1.5まで落ち込んでいたフランスの合計特殊出生率は、2.0にまで回復したのです。

一方、日本の場合は、子どもの貧困率は2025年の調査で11%、7~8人に1人の子どもが「貧困」ですが、シングルマザーの家庭だけを見ると2人に1人、半数の子どもが「貧困」なのです。同じ1人親世帯でも、父子家庭の場合は世帯主が正規雇用者なので貧困率は低く、母子家庭だけが突出した貧困率なのです。あたしは5年ほど前から「子ども食堂」のお手伝いを続けて来ましたが、実際、毎週のように食べに来てくれる子どもたちは、ほとんどが母子家庭の子どもです。

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フランスでは、シングルマザーの家庭が法律婚の家庭と変わらない生活が送れるように、様々な法律で支援し、その結果として合計特殊出生率も回復しました。しかし、それも一時的なことで、その後はジワジワと合計特殊出生率が減少し続け、2025年度にはついに1.56に戻ってしまったのです。そこでマクロン大統領は「出生休暇」という新たな支援策を法制化したのですが、その結果はまだ分かりません。

どちらにしても、日本の少子化対策はフランスやスウェーデンと比べると完全に周回遅れであり、世界の潮流に逆行しています。何しろ世界で唯一「選択制夫婦別姓」が認められていない原始時代のような国なのです。これほど個人個人の多様化が進んだというのに、未だに明治時代の家父長制などにこだわり続ける異常さもさることながら、何よりも少子化対策の設問で「子どもが欲しいかどうか」ではなく「結婚したいかどうか」を聞いてる時点で終わってます。「子どもが欲しいならまずは結婚しろ」と強要しているからです。

でも、今からでも周回遅れを解消して、ゴール版ギリギリでフランスを差し切る作戦があるのです。それは「結婚する気はないけど子どもは欲しい」と考えてる多くの女性のために「事実婚」を「法律婚」と同等に扱うだけでなく、あたしのように「異性と結婚する気はないけど同性となら結婚したいし子どもも欲しい」というマイノリティーのために「同性婚」を認めれば良いのです。

この2点だけで日本の少子化問題は劇的に好転するでしょう。しかし「選択制夫婦別姓」ですら二の足を踏んでいる時代遅れの自民党に、そんな大英断など下せるわけがありません。ですから、まずは今も多くの議員が癒着している旧統一教会と完全に手を切るために、「こども家庭庁」などという押し付けがましいネーミングを「こども庁」に変更してみるというのはどうでしょうか?それとも、これも旧統一教会を影で支えるドナルド・トランプ大統領の怒りを買うのが恐くて無理なのでしょうか?

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image by: Shutterstock.com

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