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“福岡県議会のドン”が議員辞職の衝撃。麻生太郎との長きにわたる「仁義なき戦い」の影で福岡市長「不出馬」宣言の“やせ我慢”

人気絶頂の現職市長による突然の不出馬表明と、長年にわたり県政に大きな影響力を及ぼしてきた「ドン」の議員辞職。福岡政界で相次ぐ大きな動きは今後、どのような形に帰結するのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、高島宗一郎福岡市長と蔵内勇夫前県議会議長の動向をもとに、麻生太郎氏らが繰り広げてきた「福岡三国志」の歴史を詳しく紹介。さらに市長の座をあえて手放す高島氏の「真意と進路」を推察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:高島不出馬と「ドン」失脚が描く新・福岡三国志の行方

人気市長は去り“県議会のドン”も失脚。二つの大ニュースで読み解く「新・福岡三国志」の行方

8月23日、人気絶頂の福岡市長、高島宗一郎氏がfacebookに「11月15日の福岡市長選挙には立候補しません」と投稿した。翌24日、福岡県議会のドンと称される蔵内勇夫議長が議員辞職を発表した。

福岡の政界が激変する二つのニュースだった。蔵内氏は混乱の責任を取って議長職を辞任するという意向を示しながらも、「議員辞職」については否定していた。それが一転したわけだが、どう見ても形勢不利であり、あるていどの予測はついた。

超豪華海外視察について県民から背任容疑で刑事告発されているうえ、福岡県警の新しい本部長には、8月7日付で大窪雅彦氏が就任したばかり。これで慎重だった捜査方針ががらりと変わったともいわれている。

だが、高島氏の表明は意外だった。4期連続当選し、5期目も安泰で、誰もが出馬を信じて疑わなかった。

「本当はめっちゃ続けたいんですよ。やせ我慢ですよ」。市長選挙不出馬を公表した直後、高島氏はネット動画番組で、対談相手の石丸伸二氏にそう語った。

いつまでも市長の座にとどまれば、後進の道を閉ざし、福岡市の発展を妨げるかもしれない。それが、出馬をやめる理由だという。表向きの説明であり、カッコつけすぎだが、半ば本心でもあるのだろう。

高島氏は日本維新の会の吉村代表と気脈を通じ、「副首都」に名乗りを上げているほか、九州への道州制導入の旗振り役を担ってきた。おそらく、福岡全体の改革をさらに進めるため高島氏がかねてから抱いていたビジョンは、市長として多選を続けるより、福岡県知事に転身し、市長には信頼できる別の人物を置いて、二重行政のない福岡をつくりあげることだったのではないか。

次の知事選は29年であり、あと3年も待たねばならないが、現知事の服部誠太郎氏は、いわば蔵内氏の“傀儡”だ。蔵内氏の主導する「ワンヘルス」をそのまま県の事業とし、有害鳥獣捕獲や老朽化施設の建て替えなど実態の伴わない事業にまで「ワンヘルス」の冠をかぶせて多額の血税を投じてきたことが県民から強い批判を浴びている。

すでに服部知事自身もメディアのインタビューや行政改革審議会の中で「蔵内氏に対する過度な配慮や忖度があった」と事実上の責任を認めて謝罪し、関連事業の凍結やゼロベースでの見直しに追い込まれている。今後の議会論戦やメディアの追及しだいでは、辞任を含めたさらなる政治的窮地にいたる可能性は十分にある。もしそうなった時、高島氏が「県政刷新」のため県知事に名乗りを上げたいと考えても、市長のままでは身動きがとれない。

もちろん、様々な説がある。2年前に再婚した妻が東京で医療従事者として働いているので、高島氏も東京に拠点を移すだろうというのがその一つ。東京ならテレビからニュースキャスターやコメンテーターとして引っ張りだこになるし、2028年の東京都知事選への出馬を狙うにしても、知名度アップに役立つだろうというわけだ。

東京へ出るというのは確かに有力な選択肢であるに違いない。だが、都知事選というのは、まだ小池百合子氏の動向も見通せないなかで不確実性が高すぎるのではないか。

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福岡政界で繰り広げられてきた激しい代理戦争や主導権争い

いずれにせよ、当選確率100%の高島氏が出馬をとりやめるのだ。今後の身の振り方について明確なビジョンがあるはずである。

高島氏の今後の動向を占ううえで欠かせない要素が、福岡政界の特殊な勢力図だ。それを説明するのに、しばしば「福岡三国志」という言葉が使われる。かつては、麻生氏(筑豊)、古賀誠氏(筑後)、山崎拓氏(福岡)の三人の覇権争いとして語られてきた。古賀、山崎氏の引退後の「新三国志」では、武田良太氏(豊前)と蔵内氏(筑後)が台頭し、麻生氏に対抗して福岡政界への影響力を競ってきた。

麻生氏と蔵内氏の戦いが鮮やかに表面化したのは、2011年4月の福岡県知事選だ。自民党福岡県連は県議団会長の蔵内氏を候補者として内定していたが、麻生氏がそれに異議を唱え、麻生内閣や民主党政権の鳩山、菅内閣で広報官をつとめた小川洋氏の擁立を強く求めたため、蔵内氏はやむなく立候補断念に追い込まれた。

蔵内氏は2001年に県議会議長となり、自民党県議団会長を同年から12年間にわたってつとめ、県の政界に確固たる地位を占めるようになっていた。それだけに、知事選辞退のさいの屈辱の大きさは想像に難くない。

その後、福岡県内の知事選や大型選挙で、保守分裂が起きるたびに、武田氏を含む3者の思惑が絡み合い、激しい代理戦争や主導権争いが繰り広げられてきた。

蔵内氏と県議会主流派の発言力が絶頂期を迎えたのは、病気辞任した小川前知事の後継を争った21年の県知事選で、蔵内氏が擁立した現知事、服部誠太郎氏を勝利に導いたことだった。

以来、服部知事の背後で糸を引き、県政を自在に操った蔵内氏。県議会の贅沢三昧の海外視察が繰り返されるなど、県民不在の議会運営が続いたのも、その驕りが招いたものだった。だが、西日本新聞の独自調査により、海外視察にかけてきた経費があまりに法外であることがわかり、地元テレビ局が後追いして報じるなか、金銭授受疑惑が発覚した。

その“告発者”となった吉松源昭氏は、まごうことなき“麻生派”の県議である。24年10月の衆院選(福岡4区)に、蔵内氏ら県連主流派の推す宮内秀樹氏と公認争いを演じた末、無所属で出馬し、選挙後に自民党を離党した経緯がある。その背後に、蔵内氏の力を削ごうとする麻生氏の存在があった。

現在、吉松氏とともに「自由と繁栄の会」という会派を組む中村明彦氏も麻生氏の配下だ。25年4月、蔵内氏が異例にも2度目の県議会議長に就任したさい、反対意見を述べたことから、蔵内氏の怒りを買った。蔵内氏は会派を解散したうえで新会派を結成、その会合に中村氏を呼ばず、まんまと“ムラ”から追い出した。

こうした事実を時系列で眺めてみると、吉松氏が議長や副議長ポストをめぐる金銭授受問題を暴露したのも、麻生派と蔵内派の政争の一環とみることができよう。

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あり得なくはない高島氏「2年後の参院選」への立候補

24日の記者会見で「麻生さんには事前に伝えたのか」と問われた高島氏はこう語っている。

相談したかという個別の話になるとですね、俺は相談されてないという人が現れたりとか、自分には話をしてくれなかったということで悲しむ方が現れたりとかですね。あの人には言ったのに自分には言わないんだということになるので、あまり個別の名前はここでは控えたいと思います。

むろん、後ろ盾である麻生氏に相談していないとは考えにくい。麻生氏の意向を無視して高島氏が進路を決めるのは今の政治状況からみて、難しいだろう。

麻生氏は長男か長女を後継者にして福岡政界での麻生家支配を続ける未来図を描いているはずだ。そんな麻生氏と話をして、高島氏が選択する可能性があるのは、先述したように福岡県知事へのチャレンジだが、もう一つ、2年後の参院選への立候補もあり得なくはない。

28年に改選期を迎える福岡の自民党参院議員といえば大家敏志氏だが、麻生氏とは過去の衆院選公認などをめぐる確執があるため、麻生氏が大家氏に代えて全国的な知名度を誇る高島氏を送り込むのではないかという観測を呼んでいる。高島氏にとっても、51歳という年齢や元アナウンサーの圧倒的な発信力を考えれば、国政へステップアップする絶好のタイミングといえる。

だが、福岡市のような大都市の自治体経営を担ってきた高島氏にとって、参院議員の立場がどれほど魅力的に映るかを想像すると、大いに疑問は残る。国政に転出するとしたら、少なくとも権力へのセンターポジションが視野に入らなければ、メリットを感じないだろう。だが、いかに現政権の実質的な支配者とはいえ、高齢で引退説もささやかれる麻生氏に、高島氏の未来を保証することなど、できないはずだ。

自分のもてるエネルギーをどこに注ぐべきか。福岡市長のイスをあえて手放した高島氏の選択肢は、一介の国会議員という歯車ではなく、ふたたび福岡の地で「トップランナー」として権限を振るう舞台、すなわち県政の刷新以外にありえないのかもしれない。

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image by: 高島宗一郎 - Home | Facebook

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