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Veronika Zemlyannikova 72/Shutterstock

桜だけじゃない!1年を通してやってくるいろんな○○前線

あじさい前線、うぐいす前線、もんしろちょう前線…他にも色んな前線があるんです。

気象庁が発表した桜前線の開花日がそろそろ近づいてきました。ところで気象庁が発表する○○前線はさくらだけではないのをご存じですか?実は四季を通して日本全国の動植物を対象に気象庁が観測データをまとめています。

○○前線ってなに?

生物(動植物)に及ぼす気候の影響や季節の遅れなどを知るために、生物の状態の季節による変化について観測することを「生物季節観測」といいます。気象庁では一定の場所で生物季節観測を行い、各所で特定の現象が見られた日を等期日と呼んでいます。そして、その等期日を結んだ線を等期日線と呼んでおり、これが一般に言われる「○○前線」と言えます。ちなみに、「○○前線」はマスメディアがつくった「桜前線」という造語から生まれたといわれています。

観測する動植物は人の手が加えられていない自然に近い状態の生物を対象としています。観測する対象は大きく2種類あり、規定種目と選択種目に分けられます。

・規定種目
指定されたすべての気象官署が観測する種目

植物12種目:ウメ、ツバキ、タンポポ、サクラ、ヤマツツジ、ノダフジ、ヤマハギ、アジサイ、サルスベリ、ススキ、イチョウ、カエデ
動物11種目:ヒバリ、ウグイス、ツバメ、モンシロチョウ、キアゲハ、トノサマガエル、シオカラトンボ、ホタル、アブラゼミ、ヒグラシ、モズ

・選択種目
各気象官署が種目を選択して観測するもの

植物:スイセン、スミレ、リンゴ、カキ、ミカンなど
動物:ニホンアマガエル、トカゲ、アオダイショウ、クマバチなど

(参考:国立国会図書館

 

今回はこの中から主な動植物の観測ルールをご紹介!

植物編

うめ前線

気象庁

開花日:標本木に5~6輪の花が咲いた状態
対象:白色のうめ
特徴:うめは落葉高木で、細い枝が多く若枝は緑色で無毛、葉・葉柄にも少しばかり微毛があります。花はほとんど無柄で、花弁は通常白色の5弁、花径は25 ㎜程度です。

さくら前線

気象庁

開花日:標本木で5~6輪以上の花が開いた状態
満開日:標本木で約 80%以上のつぼみが開いた状態となった最初の日
対象:主にそめいよし
特徴:そめいよしのは江戸末期からはじまる品種で、九州から北海道の石狩平野あたりまで植栽されているといわれています。そめいよしのはえどひがんとおおしまざくらの交雑種です。そめいよしのが生育しない地域では、ひかんざくら、えぞやまざくらを観測します。

あじさい前線

開花日:標本木で真の花が2~3輪咲いた状態
特徴:あじさいは梅雨の頃、変色する装飾花が集まって半球または球状に開きます。真の花(両性花)が径7㎜ほどで、装飾花の柄が集まった中心で開きます。あじさいは暖地の海岸線に自生するがくあじさいの変化したものといわれています。したがって自生するものではなく、主として東北地方中部以南の庭園などに植栽されている落葉低木といわれています。

いちょう前線

気象庁

黄葉日:標本木全体を眺めたときに、大部分の葉が黄色に変わった状態になった最初の日
観測:黄葉、発芽日、落葉日
特徴:いちょうは中国が原産地といわれる落葉高木で、社寺の境内や街路に多く植えられ、食用の銀杏が実ることからも良く知られた植物です。

かえで前線

気象庁

紅葉日:標本木全体を眺めたときに、大部分の葉の色が紅色に変わった状態になった最初の日
対象:主にいろはかえで(いろはかえでが生育しない地域では、やまもみじ、おおもみじ、いたやかえで)
観測:紅葉、落葉日
特徴:いろはかえでは東北地方南部から九州地方の山地に広く自生する落葉樹ですが、秋の紅葉が美しいため各地の公園や庭園に植えられています。

動物編

うぐいす前線

気象庁

初鳴日:春にうぐいすが「ホーホケキョ」とさえずるのを初めて聞いた
鳴き声:「ホーホケキョ」「チャ・チャ・チャ」
特徴:夏の間は、山地で過ごしますが、秋になると人里近くの森ややぶに移動して冬を過ごします。このころは、ささ鳴きといわれる鳴き方で、「チャ・チャ・チャ」と鳴きます。早春から再び山地へ移動をはじめ(北海道では春に本州から渡来します)、このころから「ホーホケキョ」をさえずり始めます。

つばめ前線

気象庁

初見日:春に入る頃渡来したつばめを初めてみた日(関東以西でみられる越冬するつばめ観測対象外)
特徴:つばめはすずめより大きく、その尾は長く二つに分かれています。頭から背にかけてと翼は光沢のある黒色で、額から喉にかけては栗色、栗色に接して首飾りの様に黒い帯があり、胸から腹部にかけては白色です。

もんしろちょう前線

気象庁

初見日:春にもんしろちょうを初めてみた日
分布:ほぼ日本全土
特徴:寒冷地では年に2回、暖地では7~8回発生するといわれています。幼虫はキャベツ、ハクサイなどの栽培植物を好んで食べます。翅の色は、雄は白っぽく、雌は雄よりやや黒色をしています。

ほたる前線

気象庁

初見日:げんじぼたるかへいけぼたるのいずれかの成虫が、発光しながら飛んでいるのを初めてみた
分布:本州・四国・九州
特徴:げんじぼたるは、本州・四国・九州に分布し、その幼虫は清流中に生息して、かわにな(巻き貝の一種)などを食して成長するといわれています。へいけぼたるは、ほぼ全国に分布し、その幼虫は小川のほか水田や池などにも生息し、かわにななどを食して成長するといわれています。

あぶらぜみ前線

気象庁

初鳴日:あぶらぜみの鳴き声を初めて聞いた
分布:北海道地方から九州地方
鳴き声:「ジ、ジ、ジ、…、ジガジガジガ」「ギ・クツクツ・ギ・クツクツ」
特徴:市街地や山林に出現し、午前及び 15 時頃から夕刻に鳴くといわれています。特徴は翅の色が茶褐で不透明です。鳴き声はジ、ジ、ジ、…、ジガジガジガと鳴き続け、ギ・クツクツ・ギ・クツクツで終わるといわれています。

気象庁生物季節観測より)

 

代表的な動植物の生物季節観測をご紹介しましたが、主な観測基準は花の開花の場合「5~6輪の花が咲いた状態」、動物の初見は「そのシーズンではじめて見た(鳴いたのを聞いた)日」ということでした。ちなみに、日本全国のどこかで誰かが聞けばいいのかと言うともちろんそうではなく、全国各地にある気象台をメインをした地点で観測が行われており、例えば桜の場合は全国に58ある標本木が対象となっています。そしてその確認は気象庁の観測担当者が確認してはじめて等期日となるそうです。

ご紹介した動植物の等期日線はこちらの気象庁生物季節観測の情報から見ることもできますよ!

(まぐまぐ編集部/まつこ)


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