ゴルフやランニングなど、日頃からスポーツを楽しんでいる人なら、行く機会も多いであろうスポーツ用品店。店中には様々な競技で用いるアイテムが所狭しと並びますが、それだけに“増え続ける在庫”には、どの店も苦慮しているようで……。スポーツ用品店向けの経営指南メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、そんなお悩みに対して3つのアドバイスを授けています。
在庫が増えてしまう
スポーツショップの売場は、何となく華やかです。
色とりどりの商品が、壁一面にそして什器一杯に並んでいます。ぎっしり詰まっているという感じです。「よく売れているのだろうな」と思ってしまいます。
ところが、内情はそうでもないようです。
お店の方に聞くと、「なかなか在庫が減らなくて困っているよ」と言われます。年間の商品回転率を聞いてみると、2回転がやっとということです。
これはもう、完全に在庫オーバーです。言ってみれば、食べ過ぎて肥満体になってしまっている状態です。これでは、商売が苦しくなります。
どうして、在庫オーバーになってしまうのでしょう。理由はいくつも考えられます。
一つは、仕入スタッフの意識です。
仕入スタッフとはいっても、一般のお店は販売スタッフが兼任しています。すると、そのスタッフは、どうしても商品を目いっぱい仕入れてしまうのです。
なぜなら、売場に商品が多ければ多いほど、たくさん売れると思ってしまうからです。
そして、商品がないと不安になります。売上を上げたいために、必要以上に仕入れてしまうというのが、在庫が膨らんでしまう原因です。
また、商品を仕入れるのは気持ちが良いものです。生活の中でも、物を買う時は嬉しいですよね。それと同じです。
そんな心理が働いて、仕入が増えてしまうのです。
在庫を増やさない
もう一つ原因があります。それは、スポーツ用品の発注習慣です。
スポーツ用品は、ほとんどの商品が発注してから入荷までに6ヶ月を必要とします。
多くのメーカーさんが、商品展示会で注文を聞いてから生産に入りますので、小売店さんは半年前に発注をしなければなりません。特に新製品は展示会で注文をしておかないと、お店に入りません。
しかし、半年先のことが分かりますか? お店は、経験を頼りに「勘」で発注をするしかありません。
その商品は、6ヶ月後には否応なしに入荷してきます。
「勘」が当たればラッキーです。外れたときは、困ったことになります。商品が売場に残ったままです。
そんなことはお構いなしに、メーカーさんからは2度目3度目と商品が入ってきてしまいます。そのように発注をしたからです。
こうして売場は、いつも商品でぎっしりということになります。
何とかしなければ、肥満は進むばかりです。早くスリムな体になって、健康になりたいものです。どうしたらいいでしょう。
私がお店にアドバイスをしている方法をお教えしましょう。3つあります。
それは、
・決められた在庫金額以上に仕入れない
・倉庫を持ったり増やしたりしない
・一年以上売れていない商品は即刻処分をする
ということです。
簡単にご説明しましょう。
在庫を減らす方法
「決められた在庫金額以上に仕入れない」ということは、説明をしなくてもお分かりでしょう。
あなたのお店にも、毎月の販売予算に合わせた仕入予算があります。月1000万円の販売予算なら、仕入予算は最大でも700万円というところです。
この700万円以上の仕入金額になりそうになったなら、すぐに仕入をストップします。売上が月の途中で900万円位に終わりそうだということが分かれば、630万円の仕入金額に達したところで仕入ストップです。
そうしないと、在庫がどんどんと膨らんでいきます。気をつけてください。
そして、次の「倉庫を持ったり増やしたりしない」というのは、どういうことでしょう。
実は、在庫が膨れ上がってしまう最大の原因が倉庫の存在です。
売場に陳列できない量の商品が入荷したり、売れ残った商品があったりすると、置き場がないのでついつい倉庫を借りたり広げたりします。これがいけません。倉庫があるからといって、安易に商品を仕入れてしまいます。
また、いったん倉庫に入った商品は、なかなか日の目を見なくなります。売場には、新製品が次から次へと入ってくるからです。
倉庫に入れなければならない商品が出てきたら、すぐにでも処分販売しましょう。倉庫は悪の元凶です。倉庫を広げたために経営があやしくなったという話は、よく聞きます。
3つ目は「一年以上売れていない商品は即刻処分をする」ことです。これは、ぜひお店のルールとして徹底しましょう。
一年以上動かない商品は、お店にとっては死に在庫です。いつまでも未練を持っていてはいけません。あきらめることです。
先の、倉庫に入れる商品と同じで、一刻も早く利益を削って売場から無くしましょう。
ただし、利益を削るということは経営的には痛みを伴います。その痛みは社員の皆さんで感じることが必要です。そうすれば、安易な仕入をしなくなるようになります。
どうかスリムな在庫の売場で、身軽な経営ができるよう頑張ってください。
■今日のツボ■
・仕入スタッフは、ついつい商品を仕入過ぎる。
・展示会で発注した商品が売れるとは限らない。
・在庫を膨らませないための良い方法が3つある。
image by: pio3 / Shutterstock.com
『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』
著者/梅本泰則
ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
≪最新記事を読む≫