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【しんコロ】びっくりするほど似ている、日本人とドイツ人の共通点

現在はアメリカ在住ですが、過去には客員研究員としてドイツの大学にも留学していた経験を持つ、しゃべるねこを飼う男こと、しんコロさん。よくドイツ人は、「几帳面で真面目」な点が日本人と似ていると言われますが、本当のところはどうなのでしょうか。しんコロさんが自らのメルマガで、アメリカ人とドイツ人との大きな“気質の違い”を、体験談も交えつつ語っています。

上下関係の文化

ここ数回に渡って、僕がアメリカ生活を始めた頃のUCLAでの下積み時代から、ドイツ留学に至ったエピソードを書いています。2001~2002年ほどの話ですから、かれこれ14年も前のことです。ここまでの話は、バックナンバーを御覧ください。

ヨーロッパ諸国には様々な国や文化がひしめいていますが、ドイツ人と日本人は似ているなんて良く言われます。一般的なドイツ人のイメージは「几帳面で真面目」というのが相場ですが、今日はドイツ留学時代に出くわした異文化体験について書きたいと思います。

まず、同じ欧米人で見た目が似ていても、ドイツ人とアメリカ人ではかなり気質が違います。渡米して僕が最初に思ったのは、アメリカ人が非常に気さくなことです。

たとえば、上司部下の間柄でも名前をファーストネームで呼び合います。もちろん、上下関係というものはアメリカにも一応ありますし、初対面では偉い身分の人にはラストネームや「ドクター」とか敬称は付けます。

しかし、初対面以降はファーストネームで呼び合うことは西海岸でも東海岸でもかなり一般的です。今年のノーベル生理学医学賞は北里大学特別栄誉教授である大村智(おおむらさとし)教授に授与されましたが、例えてみればそんな偉い人にも「やあ、さとし!」と言うようなものです。日本では考えられません。

ここまで極端な例でなくても、アメリカと日本の上下関係に対する感覚の差はかなりあります。たとえば、日本では年齢をかなり気にします。年齢が一つ上か下かくらいで、言葉遣いや対応の仕方も変わってきます。一方、アメリカだと歴然とした身分の差がない限り、「先輩・後輩」という感覚さえありません。

ちなみに、アメリカの履歴書は普通、年齢や生年月日を書き込みません。人材を選ぶ側はその人の能力や経験で選ぶのであって、年齢で選ぶべきではないという文化があるからです。

その反映もあって、日常生活のレベルでも年齢によって上からみたり下からみたりという人間関係もありません。これに慣れない日本人は、目上にフランクに接するのに躊躇したり、目下に横柄な態度をとられたりした時にかなり困惑することもあるかもしれません。

僕がした失敗

さて前置きが長くなりましたが、ドイツ人はどうでしょう? ドイツ人は基本的には日本人とアメリカ人の間くらいの感じだと僕は思いますが、びっくりするくらい日本人に近い部分もあると思います。

まず挨拶の仕方ですが、アメリカでは「Hi」で終わりですが、ドイツのラボでは毎朝握手をしながら「Good morning!」でした。日本でいうところの、お辞儀をしながら「おはようございます」というのに近いです。教授の呼び方もよほど親しい場合はファーストネームですが、ラボのメンバーは教授のことはラストネームで呼んでいました。これも日本風です。

このように、白人系アメリカ人とドイツ人は見た目的に差がないけれども、考え方や文化はかなり違います。アメリカ生活に慣れてしまっていた僕は、ドイツ人に対してアメリカ人に接するようにしてしまって、一度失敗をしたことがあります。

僕は屋外市場やファーマーズマーケットが好きで、当時ロサンゼルスにいた頃は良く通っていました。ドイツにも同じようなマーケットがあり、そこを訪れた時のことです。マーケットには、色とりどりの野菜や果物、乳製品や肉や魚、そして工芸品などが並んでいます。日本でいうところの野外市場のような感じで、農家の方や作り手の方たちがブースを構えています。

アメリカでは、僕は目の前の食材やクラフトを手にとって見たりすることもよくあります。その時、ブースの人には「Hi」と簡単な挨拶をする程度です。ところが、ドイツでもこれと同じことをしたら、ブースのおばちゃんが僕の手から商品を取り上げて陳列に戻したのです。そのおばちゃんの顔は明らかに怒っていました。

どうやら、「Hi」だけの挨拶では丁寧さが足りなかったようで、「こんにちは! これ見せてもらっていいですか?」くらいちゃんと聞くべきだったようです。ある意味、日本よりもしっかりと丁寧に対応しないと怒らせちゃうことがあると気づいたのでした。

けれども、一度ちゃんと丁寧に接すれば、ドイツ人はアメリカ人よりもずっと親切に対応してくれます。ちなみに、アメリカ人というのはかなりヨーロッパ諸国から嫌われている傾向があって、アメリカ的な対応をされるとヨーロッパの人たちはカチンとくることがあるようです。どうやら、アメリカ人は普通にしていても「雑だ」とか「偉そうにしている」とか思われてしまうことがあるようです。

まあいってみれば、アメリカ人は「チャラい」イメージですからね。むしろ、英語を話さず日本人的な応対をしている方がドイツ人には好かれるかもしれないという印象さえ覚えました。

キタナ言葉遣い

さて、ドイツ人は英語がとても上手です。特に北ヨーロッパは様々な言語が入り混じっているので、人によっては数カ国語を流暢にしゃべることもあります。

ラボにいたドイツ人女学生のサニーはヨーロッパの言葉は何でもしゃべれると豪語していました。サニーに「イタリア語は?」と聞くと「しゃべれるわ」と答え、「スペイン語は?」と聞くと「もちろんしゃべれるわ」と答え、「スウェーデン語は?」「しゃべれる」「オランダ語は?」「しゃべれる」「中国語は?」「わかる」「フランス語は?」「しゃべれる」というように、何でも来いなのです。

感心した僕は「日本語は?」と聞きました。そしたら「日本語だけはできない」と返ってきました。いままでの言語全部しゃべれるのウソなんちゃう!? とつっこみたくなりましたが、でもあながちウソでもありませんでした。それくらい、北ヨーロッパの人は言語に長けていて、ドイツ人は英語がうまいのです。

なので、ラボのミーティングやセミナーではそこに外国人がいようがいまいが英語で行われます。普段の会話でもドイツ人同士で英語でコミュニケーションを取っています。それも意思を伝える程度のレベルではなくて、ディスカッションをしたり時にはジョークも飛ばすほどなのです。もし日本で「職場で英語しかしゃべっちゃいけないルール」をやったら、みんな無口になって気まずい雰囲気が漂うこと間違いなしです。

さて、ここからちょっと下品な話になるのをお許し下さい。ドイツ人を観察すると、アメリカ人とは違う英語を使っています。

アメリカ人はスラングが多くて、汚い言葉も多用するようなイメージがあるかもしれませんが、それは映画の中の話で、職場環境ではそういった汚い言葉を使う人はほとんどいません。たまにNYの路上でおばあちゃんが「ファッ◯!」と叫んで周りを驚かせることがあるくらいです。

そういう言葉は、当時ロサンゼルスではラボにいた学生ニック君を除いては、耳にしたことがありませんでした。ちなみに、ニックは1センテンスに5回くらい「ファッ◯」が入ります。彼が喋ると「ファッキンな昨日さあ、ファッキンな実験がファッキンに長引いてさあ、ファッキンなアパートに帰った頃はファッキン夜中の2時だったよ、ファッ◯!」ってな具合です。

でもアメリカ映画の中では、「シット」とか「ファッ◯」とかよく聞きますよね? そういうのを、ドイツ人は(少なくとも僕がいたラボのメンバーは)多用していたのがとても意外だったのです。きっと映画で多用されているから、口にすることにあまり抵抗がないのかもしれませんが、アメリカの職場で「ファッ◯!」なんて言ったらすごく失礼大変なことになります。

ドイツ人もさすがに「ファッ◯」は多用していませんでしたが、「シット」をやたら口にしていました。「シット」は日本語にしたら「クソっ」くらいです。何かをしくじったときに「ああ、くそっ!」って言うくらいのニュアンスで「Oh, shit!」とか、アメリカでは感情を表す感嘆詞くらいに使うのが普通です。でも、ドイツ人はこのShitをやたら丁寧な文脈で使っていたのです。

僕が忙しくてとあるパーティーに行けなかった翌日のことです。ラボの一人が僕にこう言いました。

“It was really shit that you were not there!“

おそらく、「しんコロが来られなくて残念だったよ」くらいに言いたかったと思うのです。普通、英語だったら“Too bad you didn’t make it(来れなくて残念だったね)”とか、“We missed you at the party(君がいなくて物足りなかった)”
とかくらいです。

それを“It was really shit….”と、改まって形容詞で使うドイツ人の技! これは日本語に直訳すると「~なのはクソだ」とか「~はうん◯」だということになってしまう。しかもなんか改まった言い回しなので、「しんコロがパーティにこられなくてうん◯だったでござる!」と僕には聞こえてしまいます。

論理的に考えて「しんコロがいなくてうん◯だった」→「しんコロがいればうん◯じゃない」ということだから、僕はうん◯掃除の役目を期待されていたのだろうか、とか訳の分からないことを考えながら、僕はドイツ人のちょっと変な英語に翻弄されていたのでした。

でもまあ、僕達日本人も色々な和製英語を使いますし、それぞれの英語の使い方というものがあるのだと感じた異文化体験でした。

image by: Shutterstock

 

『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』
著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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