「日本を裏切った父」と同じ現実路線。中国にすり寄るスーチー氏

 

もうひとつ、スーチー氏の民主活動家しての姿勢に疑問が持たれているのは、ミャンマー国内の少数民族であるロヒンギャの迫害に対して、何も声を挙げないことです。ロヒンギャはミャンマー国内のムスリム勢力であり、これまで宗教対立、民族対立により、軍事政権下でも仏教徒による弾圧にさらされてきました。ロヒンギャはスーチー氏に期待し、彼女を支持すると表明したため、さらに迫害を受け続けてきました。

現在では「世界でもっとも迫害を受けているマイノリティ」と言われるロヒンギャですが、スーチー氏はこのロヒンギャ問題について、まったく無視しているどころか、時には迫害者となっている仏教サイドを擁護する発言すらしており、国際社会ではスーチー氏に対する疑念が持ち上がっています。

アジアではたいてい多民族国家が多く、日本はきわめて珍しい例外です。中国は50以上、ベトナムも50の民族があります。ミャンマーも多く、130以上とも言われています。民主主義と民族主義の対立は激しく、民主主義は民族の抑圧を正当化する恐れが多々あります。

ミャンマーの軍人はほとんどがエリートで、江戸時代の武士の国の時代、日本の鎖国時代とそっくりです。民主主義が成熟するまでどうなるのか、実に厳しい事態が続くと予想されます。

英領の時代は華僑と印僑がイギリスの番頭として、ビルマの多民族社会を支配していましたが、東南アジアではタイ、ベトナムとならぶ大国です。

政治家が時として現実路線を取るのは、ある意味で仕方ない部分があります。父親のアウンサン将軍も、そのために日本を裏切りました。スーチー氏が政権を取ったとしても、かつての「民主活動家」としてのスーチー氏はもういないのだという認識が必要です。

ISISがロヒンギャをリクルートしているという話もあり、今後、ミャンマーでテロ活動が活発化する恐れもあります。

人権派、民主活動家というと、日本では無条件に崇め称える風潮がありますが、私は中国の人権派、民主活動家については、かなり懐疑的でした。というのも、彼らの多くは「大きな中国」には賛成であり、民主化が達成されても「大きな中国」は堅持する、という主張が大勢なのです。

だから台湾の独立は認めない、ウイグルやチベットの独立には否定的という「大中華主義」の人が多いのです。

スーチー氏が政権を取ることによってミャンマーの政体は大きく変わるでしょうが、過度の期待は禁物なのです。これからのミャンマーはいったいどこへ行くのか、欧米は目が離せないところです。

image by: GongTo / Shutterstock.com

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋
著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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