世界一とも言われる日本の「おもてなし」。しかしメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』では、日米のまったく異なる接客の具体例を上げながら、日本人は本当におもてなしが上手なのかを論じています。
おもてなしの国は、おもてなすのがホントに上手か
日本出張でいまだに慣れないのが、飲食店ほか店員の恐ろしいほどの接客の丁寧さです。
ファーストフード店ですら「お席までお持ちします」と言われるので、「えっ! そんな…、結構ですぅ」と思わず断りそうになります(アメリカでは絶対にないことなので)。
緑のマークの例の某コーヒーチェーン店では、女の子の店員に「季節限定さくらラテはいかがですか?」と首をかしげられると、これ以上ないほど照れながら「じゃあ、それで♥」で答えてしまいます。ホントはただのカプチーノが欲しかったのに(NYのスタバでは、あ、言っちゃった…。店員が客をナンパしてるので)。
塩カルビ丼、340円ってこの国本当に大丈夫か…と余計な心配もしてしまいます。しかもチップもとらないくせに、大きな声で「ありがとうーございましたー!」と送り出していただいて恐縮です。なにかとっても申し訳なく思ってしまいます。
空港のキヨスクでは、カゴをお持ちします、と買い物中にヘルプされました(ここまで来たら大きなお世話だ)。空港の帰りの便では、グランドホステスに「高橋さま、行ってらっしゃいませ」と両手でパスポートを手渡されました。
あの笑顔! あのお姉さん、完全にオレに惚れてるよね? ね? だってアメリカの空港スタッフでは絶対見ない笑顔だもの! (僕の前にいた小学生の男の子にも、僕の後ろのおばあちゃんにも、まったく同じ笑顔、同じセリフだったけど)
さすが、世界が誇る「おもてなしの国」! すべてがカンペキです!
…ここまで、日本の方には当たり前の事過ぎて、なにを何行も使って書いてるんだ、と思われている事と思います…w
で。 ここからが本題(笑)。
だけど、「おもてなし」ってそういうことなのかしら。と思うことがありました。
先日の日本出張の際、友人に頼まれたお土産を買うため、空港の中のCDショップにチェックイン後、搭乗前に立ち寄りました。
いつものようにガムを咬んで、ほおづえをつきながら、やる気ゼロに見えるアメリカ人店員に探してるCDのタイトルを告げました。
彼はあくびをしながら、「うーん…、わかんねぇな。一緒に探そうぜ」と僕をカウンターの内側に呼び寄せ、ふたりで丸イスに座ってコンピューター上の在庫を検索しました。「ちょっと待てよ、たぶん裏の倉庫に在庫あるかもよ」―。
出会って5分の僕に店番を頼み、ストックを探しに彼はいなくなりました。5分後、何枚かのCDを手にした彼は裏から出てきました。「同じアーティストの他のタイトルはあるんだけどさ。これにしときなよ」―。お礼を言って断ると、「じゃあ、スグ仕入れてやるから、連絡先教えてくれ」と。お土産だから今じゃないと意味がないんだと告げると、「そっか、じゃあ、念のためも1回探してきてやる」とまた裏の倉庫に―。
態度も言葉遣いも100点満点中、ゼロ点だけど、でも必死で探してくれた。
その便で成田に到着した後、空港内のCDショップで同様の質問をしました。
ものすごく低姿勢で100点満点中、100点な言葉遣いの女性店員は、45℃の完璧なお辞儀をしながら、たったひとこと。
「申し訳ございません。こちらでわかりかねます」―。
はたして「おもてなし」の本来の意味とは。こういったことを考えさせてくれるだけでも日米間を行ったり来たりの生活をしていて良かったなと思います。
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『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』 より一部抜粋
著者/高橋克明
全米No.1邦字紙「WEEKLY Biz」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ400人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる
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