単身者や共働き世帯が増え続ける現代、注目されているサービスのひとつとして挙げられるのが「洗濯代行サービス」。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、すでに業界のパイオニアとして知られる一社をクローズアップし、同社がどのようにしてさらなる顧客拡大に成功しているのか、鋭い分析を展開しています。
業界のパイオニアとしての戦略
今回は洗濯代行サービスのパイオニアとして業績を伸ばしている企業を分析します。
●今回の分析対象企業⇒ウォッシュ&フォールド(洗濯代行サービス)
戦略分析
■戦場・競合
・戦場(顧客視点での自社の事業領域):洗濯代行+コインランドリー
・競合(お客様の選択肢):ポストウォッシュやデリウォッシュなど多数の同業者が参入している状況。消費者が自分(自宅)でやる洗濯とも競合します。
・状況:洗濯代行サービスを利用する消費者の増加に伴い、提供する企業も増加傾向。コインランドリーの店舗数も増加傾向にあります。
■強み
・自分の時間が作れる(自分で洗濯する場合と比べて)
洗濯に要していた時間、干す時間やたたむ時間も不要となり、時間が有効に使えるようになります。
・一度に大量の洗濯ができる(自分で洗濯する場合と比べて)
旅行帰りや天候が悪くて洗濯ができずに溜まってしまった洗濯物をまとめて片付けることができます。
・認知度の高いので安心感がある(同業者と比べて)
サービス内容や価格に大きな差はない状況ですが、業界のパイオニアとして、TVなどに取り上げられる機会が多いため、認知度は比較的高いです。
⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス
★洗濯代行+コインランドリーの運営ノウハウ
見た目の良さにもこだわった、強力な洗浄能力が自慢のアメリカ製洗濯機と乾燥機を利用しています。
■顧客ターゲット
・洗濯から解放されたい方
・時間をつくりたい方(洗濯に使っていた時間を有効活用したい方)
・仕事が忙しい方、単身赴任中の方 など
戦術分析
■売り物、売り値
洗濯代行サービス
通常の家庭で洗濯するTシャツやジーンズ、靴下、タオルケットにいたるまで、日常の洗濯物を水洗い(Wash)、乾燥、手たたみして(Fold)渡すサービス
・集荷&お届け(仕上がりは2日後)
レギュラーサイズ:\3,000、 スモールサイズ:\2,200
■売り方
・TVや雑誌、新聞などで多数取り上げられています
⇒洗濯代行サービスの国内におけるパイオニア的存在であるため、サービスに注目が集まれば取材対象となる可能性が高いです。
・会員制
会員制のサービスとなっており、初回のみ入会金として1,000円が必要。入会の際に、専用ランドリーバッグと会員カードが渡されます。
⇒一度、入会してしまえば、現状、競合他社間にサービス内容に大きな差がみられないことから、他社サービスに乗り換える可能性は低いといえます。実際にリピート率は8割と高いようです。
・「お洗濯 まだ自分でやりますか」というコピー
⇒社名・強み・売り物・コピーが一貫しており、消費者にとってわかりやすく、伝わりやすい設計となっています。
■売り場
・都内を中心におしゃれな店舗を出店中(FCオーナーを積極的に募集中)。駅から離れた場所に出店することで、開業費用を抑えています。
・ネットでも利用可能です。
まとめ
洗濯代行サービスのパイオニアとして、忙しい方をターゲットにして、自分の時間が作れることや一度に大量の洗濯ができることなどを訴求することで差別化を実現しています。
洗濯代行サービスを通じて、新たなライフスタイル(いつもの洗濯を外注して時間を有効活用)を提案することで、消費者の支持を得ています。
分析のポイント
稼働率について
コインランドリーでいう稼働率とは、営業時間内に洗濯機や乾燥機が稼働している(働いている)時間の割合となります。
この稼働率が通常のコインランドリーであれば10%程度のようです。
つまり、残りの90%の時間は稼働していない(働いていない)わけです。特に昼間に来店される方は非常に少ないようです。
ですから、コインランドリーは売上を上げる余地は大きいにも関わらず、顧客の来店時間を均一にすることは困難なため、稼働率を上げることも難しいのが実情のようです。
ウォッシュ&フォールドは、洗濯代行をとおして、稼働していない洗濯機や乾燥機を有効活用することで稼働率を上げ、コインランドリーの課題(低稼働率)を解決しています。
そもそもコインランドリーは顧客が来なければ、売上をあげることができないため、待ちの店舗ビジネスといえます。
その中で、待ちだけでなく自ら洗濯物を集荷するという洗濯代行を取り入れることは、コインランドリーを新たなビジネス形態にしたといえます。
そして、ウォッシュ&フォールドは洗濯代行が主で、副がコインランドリーのようですから、非常に合理的です。
なぜなら、コインランドリー事業では10%しか稼働率を確保できないので、売上をあげるには残りの90%を埋めることができる洗濯代行に注力するのが、理にかなっているといえるからです。
我が家は週末にまとめて洗濯をしていまして、洗濯機を3~4回回して、干して、取り込んで、たたむというのが通常ですが、合計で2時間近くかかってました。
2時間は大きいですね。2時間あれば、映画一本観ることができますし、その他いろいろと有効活用できますね。
洗濯代行サービスの利用者の方が「時間をお金で買っている」、「気持ちの余裕を買っている」とおっしゃていましたが、納得ですね。
いま参入企業が増えていますし、洗濯代行サービスは急速に成長していますので、今後、洗濯は代行してもらうのが当たり前の世の中となっていくのか注目していきたいです。
image by: Shutterstock
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