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「流行語大賞」を見ればわかる?日本人が英語を苦手とする真の理由

今年も流行語大賞が大々的に発表されました。でも海外の流行語大賞は、もっと地味なんだそうです。その理由はいったい何なのでしょうか? メルマガ「ニューヨークの遊び方」の著者・りばてぃさんが、海外在住の視点からこの秘密を、そしてその話題を「なぜ日本人は英語が苦手なのか」というところまで広げて面白く紹介してくれています。

日本語と英語の根本的な違いを考える良い機会

流行語大賞」の結果は、まぁ、どうでもいい

そんなことより、ここで皆さんに考えて頂きたい重要なことは、日本語には、毎年こんなにも多様な新語や流行語が登場し、様々なタイプの「流行語大賞」的なイベントや、ランキングが登場して、多くの方々の間で少なからず話題になっているということだ。

これは重要な現象だと思う。

以前も、確かこのメルマガで詳しく取り上げたが、欧米にもウェブスター(Merriam-Webster)やオックスフォード(Oxford)など、主に辞書の出版社が行っている「ワード・オブ・ザ・イヤー」(Word of the year、略してWOY)つまり、その1年を象徴する言葉を選ぶイベントはあるにはあるが、日本の「流行語大賞」ほど大きな話題にならないし、世間の注目を集めない。

ちなみに、ウェブスターオックスフォードが選んだ過去5年分のワード・オブ・ザ・イヤーは、以下の通り。

◆ウェブスター(2015年は未発表)

2014: culture(文化)

2013: science(科学)

2012: socialism and capitalism(社会主義と資本主義)

2011: pragmatic(現実的)

2010: austerity(緊縮財政)

◆オックスフォード

2015: Face With Tears of Joy, part of emoji(絵文字)

2014: Vape(電子タバコ等を吸う)

2013: selfie(自画撮り)

2012: omnishambles(混乱)・GIF (GIF動画を作ること)

2011: squeezed middle(インフレに賃上げが追いついていない中間層)

〔ご参考〕

Oxford Dictionaries Word of the Year 2015 is…

ご覧のとおり、英語のWOYは、言葉や表現のバラエティの豊富さユニークさインパクトなど、日本の「流行語大賞」には、到底、まったく及ばない。

一言でいうと、しょぼい

日本語の流行語と比べると、格段につまらないのだ。

これは、どういうことを意味するのか?

そう、要するに日本語の方が、もともと日常的に使っている言葉の数やバリエーションが、英語よりも圧倒的に多く、必然的に、新語や流行語の類も、日本語の方が桁違いに多くなる、ということが言えるだろう。

では、なぜそうなるのか?

それはおそらく、日本語の起源に関係する。

日本語の起源、つまり、和歌だ。

もともと和歌から生まれた日本語は、わずか一単語でも、幅広く様々な物事状況心情
巧みに表現できるようになっている。

和歌づくりというのは、わずか一単語、一単語の言葉の組み合わせによって、幅広く様々な物事や状況や心情を巧みに表現するところに面白さがあるわけで、その和歌づくりを通じて、初期の日本語が形作られ、発展してきた。

しかも、日本国内の人口は、大多数(現在でも97%以上)が、同じ文化や価値観やライフスタイルを共有する日本人によって構成されるため、わずか一単語で表現される微かなニュアンスの違いでもお互いに理解し共有しあえる環境が整っている。

根本的に異なる多種多様の文化や価値観やライフスタイルを持つ、様々な人種や民族が混在する諸外国とは、大違いだ。

そんな環境で、長い歴史を経て、日本語は発展してきた。

それは、私たち日本人が、言語能力を高めてきた歴史でもある。

そうなのだ。

日本人は、和歌から生まれた日本語と、人口の大半が同じ文化や価値観などを共有する日本人で構成されているという特殊な環境下のお陰で、世界でも珍しい、極めて高度なコミュニケーション能力を持つようになった。

だから、現在でも、多くの日本人が、例えば、たとえまったく同じ言葉でも、表記の仕方で変わってくる意味や、些細なニュアンスの違いを、別にこれといった何か特別な訓練など受けなくても、ごくごく自然に感じ取ることができる。

嘘だと思うなら、皆さんも、自分のお名前を、漢字ひらがなカタカナで書いてみて欲しい。

まったく同じ名前でも、表記の違いから生じるニュアンスの違いを、日本人なら感じ取ることができるはずだ。

まったく同じ1つの言葉でもこんな調子なので、多くの日本人は、日常的に、「頭の中で考えている思いの些細なニュアンスの違いを表現するには、どういう言葉を使ったらいいのか?」と無意識のうちにでも考えている。

その結果、日本語では、次々に、新しい言葉や表現、新語や流行語なども生まれやすいし、多くの日本人が、「流行語大賞」的なイベントに興味や関心を持っている、ということなのだろう。

しかし、同時に、その日本人ならではの高度なコミュニケーション能力は、いつまで経っても、日本人がなかなか英語を話せるようにならない理由(障害)の1つにもなっている・・・と思う。

日本人は、実は英語が苦手なのではなく、日本語のコミュニケーション能力があまりにも高過ぎるため、シンプルな英語表現がしっくりこないだけ・・・なんだと思う。

もう少し詳しく説明すると、要するに日本人の皆さんは、日頃当たり前のように頭の中で考えたことの細かい些細なニュアンスまで的確に表す言葉を、膨大な言葉や表現の中から選んで使っているため、それを日常会話ではもっぱら『極めてシンプル』な言葉や表現ばかり用いる英語で言おうとすると、考えていることを十分に言い表せる適切な言葉や表現が見つからず、口ごもってしまったり、かなり英会話ができる人でも、いまいち不完全燃焼な気分がつきまとう、という感じになってると思う。

少し冷静に考えてみて欲しい。

英語以外の科目、例えば、「読解力」(=国語)、「数学的リテラシー」(=算数)、「科学的リテラシー」(=理科)などについての学力テストの結果を、国際的に比較する「国際学力テスト」(PISA、3年毎に世界65カ国が対象)や、数学と理科だけで比較する「世界学校ランキング」などの結果を見てみると、日本は、たいてい最上位層にランクインする。

例えば、2015年に発表された世界学校ランキングでは日本は4位

あらゆる欧米の主要先進国より上位だ。

〔ご参考〕

国際学力テスト(PISA)、日本「学力向上」順位上げる

Asia tops biggest global school rankings

そんな真面目で勤勉な日本人は、中学校から・・・、いや近年では、小学校のうちから、英語の勉強をはじめ、中学、高校、大学・・・等を経て、さらに、社会人になってからもずっと英語を勉強し続けている方々も多い。

それにも関わらず、いまだに、多くの日本人が、「英語は苦手」っていうのは、どう考えたって異常な現象だ

勉強そのものが苦手で、他の科目も総じて学力が低いのなら、まぁ、しょうがないってことになる
だろうけど、そういうワケじゃない。

あるいは、日本国内には、英語の教材が乏しい・・・というワケでもない。

いや、英語が母国語じゃない国々の書店の英語のコーナーなどを比較したら、たぶん、日本がもっとも充実しているくらいじゃないだろうか。

いくら、英語は日本語と文法が違うからとか、発音が違うから・・・と言っても、アメリカ国内じゃ、5歳児だって普通に英語ペラペラになるわけで、何か根本的な部分に誤解があるとしか思えない。

要するに、日本人は、実は、英語が苦手なのではなく、日本語でのコミュニケーション能力が高すぎるせいで、必要以上に、英語を難しいと感じているのだ。

日本人が、細部にまでこだわるいつもの日本語を話す調子で、頭の中で考えたことを、英語で言い表そうとすると、どうしても、言葉が見つからない。

仲間内で通じる気のきいた言葉や表現を使おうと思っても、そんな細かいニュアンスまで言い表せる言葉がそもそも存在しないのだ。

冷静に考えれば、ごくごく当たり前の話だが、英語で話す時は、英語ならではのシンプルな表現を意識した方がいい。

そしてできれば、よりロジカルな表現を心がけるようにすると、たぶん、大多数の日本人の英語力は、格段に向上する・・・と思う

というワケで、毎年、「流行語大賞」の季節になると、改めてそういう認識、つまり日本人は、実は英語が苦手なのではなく、日本語でのコミュニケーション能力が高すぎるせいで、必要以上に英語を難しいと感じる傾向にあるという認識を、改めて確認できる良い機会だと思う。

image by:Shutterstock

 

メルマガ「ニューヨークの遊び方」』 より一部抜粋

著者/りばてぃ
ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

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