クレーム処理というと、クレームをつけてきたお客様に納得していただくのがゴールだと思いがちですよね。しかしメルマガ『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』では、クレーム客を贔屓客にしてしまったという伝説のホテルマンの著書が紹介されています。理想のクレーム対応、知っていて損はしませんよ。
「ホテルオークラ『橋本流』クレーム対応術―お客様の心をつかむ50のマニュアル」 橋本保雄・著 大和出版
今回は、お客さま対応、クレーム対応をおこなううえで、どの本が参考にできるのか、書評をお伝えします。
ご紹介する本は、「ホテルオークラ『橋本流』クレーム対応術─お客様の心をつかむ50のマニュアル」です。この本は、1998年10月に出版されました。
著者の橋本保雄さんは、設立時にホテルオ-クラに勤めはじめ、その後副社長、1999年には顧問に就任された、生粋のホテルマンです。
残念ながら2006年にお亡くなりになられましたが、晩年は精力的に執筆、講演活動を行っており、ホテルマンの鏡、神様みたいな存在だったようです。
実際にクレーム対応をおこなってきて、そのノウハウを公開してくれている人として読めそうです。早速ですが、目次からみてみましょう。
クレーム対応は「癒し」である…まえがきに代えて
序章:クレームにはお客様をとりこにするヒントが隠されている
1章:なぜクレームが起きるのか
2章:クレーム客の心をやわらかくするには、コツがある
3章:こんなクレーム対応が、お客様を喜ばせる
4章:クレームをすばやく解決するには、システムが必要である
5章:サービスへの感動が、クレーム客をファンに変える
終章:私なら、ここにクレームをつける!
これだけを見ると、クレームをつけてきた「お客さま」を受け止め、いかに喜ばせ、ファンにしていくのか、といった、クレーム対応の「王道」が解説される期待があります。
「まえがきに代えて」に、クレーム対応は「癒し」であるという、矛盾ともとれる言葉が書かれており、まず驚かされます。
内容としては、お客さまの身になって、「自分だったらこうしてもらえれば満足する」という答えに沿って対応すると、「クレーム客の心は癒されていくのである」(原文ママ)というものでした。
ある意味で理想論なのですが、これを40年以上、ホテルマンとしてキャリアを積んだ人が言うのだから、重みが違います。
クレーム客を常連客、贔屓客に変えるノウハウがホスピタリティであり、それが「癒し」。わたくし、うーん、とうなってしまいました。
P.26:2.完璧なサービスでもクレームは避けられない
P.70:14.謝罪とは全面的に非を認めることではない
P.109:26.「どこまで責任があるのか」を意識する
P.138:35.訴訟に発展することを想定しておく
などなど、このように、クレームの本質をきちんと押さえ、必要十分なことが、具体的でわかりやすく、読み手のことを考えた書きかたで説明されていきます。
富裕層を相手にしたサービス業に携わっているなら、対面接客に限らず、本書は読んでおいたほうがいい。
昨今、自社でカスタマーサポートを持つ企業が減り、アウトソースに出すケースが増えています。お客さま対応にはお金がかかり、しかもお金を生まない、つまり、経営者にとってカスタマーサポートは、「存在自体がコスト」だと思われているのです。
そのため、電話番号はフリーからナビダイヤルに、さらに、サポート自体が有料のサービスもあります。お客さま対応時間や、平均解決時間を短くすることが、センターのミッションだったり、オペレータの成績につながったり、そんなカスタマーサポートも、過去に経験してきました。
待っているほかのお客さまを待たせない、それも確かに顧客満足度向上の答えなのかもしれません。しかし、人が人にサービスや商品を提供している以上、「体験」にお金を払いたいという層は、お金を支払う相手に対して、見合った「価値」を求めます。
それが高価であればあるほど、「価値」に対する要求は高く、クレーム客を常連客、贔屓客に変えるノウハウが役立つのです。
サービス業にとっての理想のクレーム対応とは、一体どんなものなのか、これを、本書は教えてくれます。
P.150からは、
38.クレームをありがとう
「クレームを出していただいてありがたい」と、愛情を持って臨むと、解決するのも早く、クレームをつけたお客様をファンへと変身させることも可能となる
よいことばですね。
ホテル業界や、お客さまとの対応に、比較的時間をかけていい業種の人は、ぜひ読んで参考にしていただきたい、そんな1冊です。
image by: Wikimedia Commons
『幸せを呼ぶ! クレーム対応術』
有名企業、10数社のカスタマーセンターで身に着けた、クレーム対応のノウハウを、無料で、惜しみなく教えます。クレームのケーススタディ、クレームで自分を削らない方法、役に立つフレーズ、使ってはいけないことば、などなど、対応で役に立つことはもちろん、時事ネタや知っているようで知らなかった話を、詳しく、できるだけ面白くお伝えします。
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