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初の女性大統領か、過激な極右候補か。米国民が問う「良識」の有無

アメリカは現在、大統領選の候補者選びの真っ只中で、来年11月の選挙に向けて「お祭り騒ぎ」の様相を呈しています。過激発言のトランプ氏か、それとも初の女性大統領誕生か、まだまだ目が離せそうにありません。メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では、この米大統領選挙に関連して、「アメリカの隠された問題」などについても言及しています。

米大統領選 良識ある民主主義国家に戻れるのか?

共和党候補者選びの中でトランプ氏の過激な発言が波紋をよんでいる。トランプ氏は大金持ちでニューヨークにトランプタワーを作った有名な人でドンドン過激な発言をしている。最近では「イスラム教徒の入国を禁止すべきだ」という極端な発言で有名に。そのことで2位のクルーズ氏を大きく引き離してリードし筆頭候補となっている。

共和党に対して民主党ヒラリー・クリントン氏も2位のサンダース氏を大きく離して筆頭候補となっている。前回はオバマ氏で初の黒人の大統領が誕生したが、今度は初の「女性の大統領が誕生するのか!?」ということが話題にもなっている。

民主党対共和党の争い

アメリカ大統領選といえば「民主党共和党」という2大政党の争い。「共和党」は保守的でリベラルで、白人中心富裕層やサラリーマン層が主に支持。「民主党」はリベラルだが労働組合を中心としたマイノリティー、主に有色人種が中心に支持している。常にこの2大政党が大統領の座を相争っている。

過去の大統領をみてみると、現職のオバマ氏はおそらく8年務める(民主党)ジョージ・ウォーカー・ブッシュ氏(在任4年・ブッシュ元大統領長男・共和党)ビル・クリントン(在任8年・民主党)前ブッシュ大統領の父、ジョージ・ブッシュ氏(在任4年・共和党)ロナルド・レーガン氏(在任8年・共和党)ジミー・カーター氏(在任4年・民主党)のように相争って極端な争いになっている。

大統領選はお祭り騒ぎ

私がワシントン特派員時代はちょうどカーターからレーガンに代わるときだった。大統領選というのは、お祭りみたいなもので大統領候補を最終的に選出する西海岸で行なわれていた大会を見に行った。宿も埋まっており、大統領選を扱う部門が記者の宿を手配してくれ、お祭り騒ぎでここから大統領選が始まるということだった。今回は来年11月を予定している。

名大統領が持つべき条件の言い伝え

大統領にとっての「人気の条件」が動物に例えられ言い伝えられているのを紹介したい。

「サイのような面の皮の厚さ」
「馬のような体力」
「象のような記憶力」
「カモシカのような速さ」
「ライオンのような勇気」
「セントバーナードのように親切」
「ビーバーのような執念」
「ブルドックの忍耐力」
「カラスのユーモア」
「子犬のような人なつっこさ」
「年老いたラバのようなガンコさ」

これらの事を備えた人が人気になっていくと言われる。あてはまる人というとレーガンが人気があった理由というのがこういうところだったのではないかと思われる。

 大統領選における過去の過激な発言

そう考えるとトランプ氏はこの条件にあてはまるのか? というように思う。過激な発言だけしてそちらが目立ち、この条件には合っていない上に、良識とかけ離れてしまっていることからどこかで落ちてくるのではないかという気がする。あまりにも過激な発言が目立ち、そこが気になる。

発言といえば、あまり日本では報じられていなかったが、1984年の大統領選(共和党 レーガン氏 対 民主党 モンデール氏)期間中の共和党大会の際に開かれた朝食会においてレーガン氏が「政治と宗教は分けて考えることはできない。公立学校でのお祈りに反対する者は宗教に反対する者たちだ」と強調、さらに「道徳の基礎は宗教にあり神なくして民主主義はありえない」と発言した。モンデール氏は「政教分離を定めている憲法を侵すもので危険だ」と激しい論争になった。

政教分離の明確化の重要性

これは「政教分離」をきちんと明確化しておかないと、後々問題になってくるということはある。レーガン氏もそれに気が付き、徐々に発言を弱めていった。ただそういう言葉が出てきたということは、レーガン氏の本音にもあったのではないかと思う。レーガン氏は「宗教」に関する発言をしているが、お祈りに教会に行ったことがほとんどないようではあるが「宗教を重視はしていた。この言葉はアメリカ人全体に響く言葉ではある。

アメリカの隠された問題

アメリカは多民族国家であり、さまざまな宗教があり、そしてキリスト教原理主義が出てきたということが大きいように思う。トランプ候補の場合、そこに対してバッサリ切り捨てるような言葉が出てくるというのが、アメリカの良識に反する。民主主義の国ではあるが、良識はもってくれよというのが一般のアメリカの声なのだろう。「人種差別問題」、斬り込んではいけない「宗教問題」にトランプ氏はふれているが、裏返していうとアメリカにはそれらの問題があるということ。宗教的な問題ではカーター氏が「今なぜベストをつくさないのか。ピーナツ農夫から大統領への道」という自伝を発表し、「片田舎出身の俺でも、頑張れば大統領になれる。これがアメリカの自由なのだ!」という言い方の宗教論争はみんなに受入れられていたと思う。カーター氏は当時「弱い大統領」と言われたが、その後ノーベル平和賞を受賞した。

「Change(チェンジ)」を打ち出し交代

これに対抗するのが、ブッシュの息子ジョージ・ウォーカー・ブッシュ氏。西部劇的でテキサス出身、粗野で知性もあまりないというように言われ、「戦争好き」とも言われ、いい大統領ではなかった。そうした過激で大ざっぱに物事を話してしまう人に対してオバマ大統領はChangeチェンジ)」を打ち出し、このような大統領ではだめだチェンジをしないといいオバマ氏はこの言葉で大統領になったといってもよいであろう。

良識ある民主主義国家に戻れるのか?

そして今度行なわれる大統領選でトランプ候補が問われる良識。「良識のある民主主義」というのが果たしてアメリカに戻ってくるかどうかというところが大きい。今や宗教というのは馬鹿にできない問題で、IS(イスラム過激派組織)、フランス、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、フィンランド等では極右政党移民排斥を掲げる政党が支持率を高めている。その背景には「貧困」というものがあると思うが、宗教は日本では少し外して考えられてしまうが、世界全体で考えていかないと大変な問題になってくる。

極右に寄る危険性

それにしても世界各国で極右の考え方が拡がっている。そこも怖いところ。これは原理主義というような言い方をし「キリスト教原理主義」などあるが、原理主義だけで対決すると世の中なかなかまとまりませんから、そこをお互いに議論して良識のある民主主義に戻して欲しい。原理主義の考え方はある一部分を取り出して主張し、そこが人々に響き、一時的な人気となる。そこを我々が良識をもって判断しないとおかしくなるということを日本人も心して考えなくてはいけない

(TBSラジオ「日本全国8時です」12月22日音源の要約です)

image by: Shutterstock

 
ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。
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