周囲の人と日々とりとめもなく交わしているどうでもいい話。内容は天気、テレビ、昨日食べたものなどさまざまですが、これら「雑談」を苦手、あるいは無意味だと思っている方は多いと思います。しかし、無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』の著者である谷原誠さんはちょっと異なる見解をお持ちのようです。弁護士から見た「雑談」の意義とは?
無駄なことでしょうか?
こんにちは。
弁護士の谷原誠です。
雑談が苦手な人の中には、「意味がないことを人に話すのが好きではない」という性格の人がいます。
実は、私もこのタイプです。
職業柄か、裁判の陳述のように、結論に向けて論理を構築して話すのが癖になっていて、方向性が定まっていない話、とりとめのない話、自分のプライベートな話等をするのは基本的に好きではありません。何か思いついても、「こんな話、相手にとって何の意味もない。話すのをやめよう」となってしまうのです。
私もそのタイプだけに、仕事の相手と意味のないことを話したくない、仕事であるからには何か意味のあること、将来のビジネスにつながるようなことを話さなくては意義が感じられないという気持ちはよくわかります。
しかし、そのような考えをしている限り、「雑談の時に何を話したらよいかわからない」という悩みは絶対に解消しません。というのも、広辞苑で「雑談」を引くと「さまざまの談話。とりとめのない会話」とあるように、そもそも、定義上、雑談には意味がないからです。
雑談の鉄板ネタである天気の話を例にとります。
「今日は天気がいいですね」
「最近すっかり寒くなりましたね」
といった言葉は、わざわざ言わなくても、外に出ればわかることであって、何の役にも立たない、意味のない言葉と言って良いでしょう。
では、私は、日常、雑談を全くしないか、というと、そんなことはありません。毎日雑談をしています。それには理由があります。
雑談はとりとめのない会話で、意味がない、と言いましたが、内容に意味がないということは、雑談自体に意味がなく、雑談をすることに何の効果もないということではありません。それどころか、雑談が仕事に必須であり、仕事のスキルの1つであることは多くの方が感じていると思います。
雑談が苦手だ、という悩みを持つ人も、意味のない会話をすることが必要であることがわかっていながら、それがうまくできないからこそ悩んでいるのでしょう。必要ない、と思っていたら、悩む必要もありません。
雑談は、意味のないところに意味があります。初対面の人と会って、相手のことが何もわからないのに、いきなりビジネスの話をし出したら、ギクシャクしてしまいます。相手と仲良くなろうとしても、相手がどういう人かわからないと、仲良くなるための糸口がつかめません。
仕事仲間でも、一切雑談をせずに、事務的に進めていると、言葉の真意を測りかね、誤解をして失敗したりすることもあります。
雑談には、初対面の人との距離を縮めたり、円滑に仕事ができる人間関係を築いたり、相手の人間性を知ったり、といった効能があるのです。その意味で、雑談は、のちに本当に意味がある会話をするための懸け橋、いわば「ゴールデンブリッジ」になりえるものです。
そう考えると、意味を重視する人、意味のないことを話したくないという人が、雑談とどのように関わっていくべきかということも見えてきます。
雑談には、内容に論理的整合性や相手にとってのメリットなどを考える必要はありません。意味のないことを話すことこそが大切なのです。
相手と「仲良くなりたい!」と思ったら、その手段として、意味のない内容の雑談をすることが必要なのです。もし、「意味のない話はしたくない」と思ったら、そう考えて、雑談を戦略的に見直してみたら、いかがでしょうか。
今回は、ここまでです。
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