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誰もが知っている神様「ヤマトタケル」の誰も知らない実像

神社や神道といった日本人の伝統文化をより多くの人々に知ってもらおうと全国で講演活動などを行っている、東條英機氏のひ孫でもある東條英利さん。東條さんは自身のメルマガ『東條英利の「日本の見方」』で、日本神話の中に登場する最も有名な神様「日本武尊(ヤマトタケル)」について、知られざるユニークなエピソードを紹介しています。日本人なら誰もが知っている「偉人」、しかし大きな謎に包まれているという、その実像とは…?

東條的偉人紹介 ~日本武尊(ヤマトタケル)~

今週の偉人は、「日本武尊(ヤマトタケル)」です。多分、神話の中でもとりわけ知名度の高い神さまと言えるのかもしれませんが、その実像大きな謎に包まれています。私も何度か講義で扱わせていただきましたが、知れば知るほどその実像が分からなくなるという実に不思議な神さまです。以前ご紹介したニギハヤヒも非常に謎の多い神さまではありますが、実はヤマトタケルもそれに負けないくらい意味不明なポイントがたくさんあります(笑)。

例えば、その系図と行動の不自然さ。ヤマトタケルはその系譜で言えば、第12代景行天皇を父に持ち、第14代仲哀天皇の親となる身であり、その血筋はまさに天の神々の系譜に連なる天津神に属す神さまとなります。しかし、実際に、その足跡を神社からたどっていくと一つ不可解な傾向が見えてくるのです。

それが「ヤマトタケルが祀っていった神々の多くが天津神ではなく、国津神であるということ」。天津神はアマテラスオオミカミの系譜に連なる天の神々。国津神は地上に降臨したスサノオを含んだこの地上の神々を意味します。そう考えると本来、ヤマトタケルがその伝承の中で神々を祀るのであれば当然その神々は自らの祖先を意味する天津神となるハズ?

しかし、ヤマトタケルが実際に祀った神々の多くはアマテラスオオミカミではなく、オオナムチことオオクニヌシを始めとした国津神の神々。これ意味分かりませんよね?(笑)

また、神話の中における評価も大きく二分され、「古事記」の中で描かれる実像と「日本書紀」の中で描かれる実像が大きくかけ離れている点もさらに謎を深める一因となっています。前者ではどちらかと言うと血の気も多く、父からも距離を置かれた悲運の王子、後者では父からも深く愛された英雄と大きく違う。この記紀は国が定めた国史としては格別な存在ではありますが、前者が口伝を元にした伝承性が高い作風に対して、後者はより政治色が濃いものとなっています。

このため、このヤマトタケルの実像の違いは何か政治的な意図を含んでいるような気がしてならないというのは、私個人が抱いている強い印象となります。

では、このヤマトタケルとは一体何なのか? これは個人的な憶測を踏まえれば出雲国との関係が大きく影響していると考えています。事実、ヤマトタケルの伝承は関東を中心に強く残り、その中の埼玉を中心とした武蔵国には出雲族が来たことを伝える神社がいくつかあります。

いや、そもそもこの武蔵国でさえ、最初の国造はエタモヒという出雲出身の人物とさえ言われておりますので、その関係は意外に深く、関東を中心に大きく展開する氷川神社にしても、その氷川とは島根県の簸川郡から来ているとか、その名残は至るところにあります。

そうした中で見えるヤマトタケルの実像とは、実は出雲族そのものではないかということ。少し分かりにくいかもしれませんが、ヤマトタケルという名前は固有名詞というには非常に曖昧で特定性の低い名前ということが上げられます。例えば、「タケル」という名は「ヤソタケル」「クマソタケル」に見られるように、古代史ではよく見る名で、これはその土地一番の英雄を意味することがあります。つまり、ヤマトタケルという名は、「大和の英雄」という意味にも置き換えられ、関東に不自然に広がる足跡も実は朝廷側が天皇の威光を高めるためヤマトタケルという存在にリライトしたのではないかと考えられるのです。

もちろん、これは勝手な想像話ですので、話半分以下に収めていただきたいものですが(笑)、多くの伝承とはそんな不思議と浪漫を掻き立てる魅力的な素材であるのは確かです。そういう意味ではヤマトタケルの存在というのは古代の浪漫を掻き立てる極めて魅力的な存在であるのは間違いないでしょう。

image by: Takamex / Shutterstock.com

 

『東條英利の「日本の見方」』より一部抜粋

著者/東條英利
いわゆるA級戦犯とされる東條英機は私の曽祖父でありますが、その直系の長男のみが、この「英」の字を継いでおります。私もその継承者として、時にはこの名を疎ましく思ったこともありましたが、戦後70年を迎える今こそ、この名前がもたらした様々な事実や経験、考えを語ってみたいと思っております。
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