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どん底の中国経済、それでもバブルが崩壊しないのはなぜ?

世界三大投資家のジョージ・ソロス氏も1月に警告していた、中国経済の急降下。このまま中国のバブルが崩壊する可能性はあるのでしょうか? メルマガ『国際戦略コラム有料版』では、中国バブル崩壊を防ぐ方法について考察、さらに習近平国家主席に権力を集中させなければならない中国の台所事情についても言及しています。

中国バブル崩壊は防止できるのか?

中国のバブル崩壊が騒がれている。ソロスも中国のハード・ランディングを現時点で見ていると述べている。この中国のバブル崩壊を防ぐ方法と、その結果を検討しよう。

中国の現状

日本の日経平均株価が1万7,000円になり、やっと危機的な状況からやや回復した状態である。この危機は中国経済崩壊を先読みしたことで起こっている。しかし、今後の中国バブル崩壊はないのであろうか?

中国の経済崩壊は、日本に多大な影響を与える。日本の貿易統計を見れば、中国との貿易量は米国の1.5倍程度も多い。もし、中国の経済が崩壊したら、日本との貿易量も激減することになり、日本経済も大きなダメージを受けることになる。このため、日経平均株価は、大幅なダウンに陥ったのである。

しかし、中国政府は自国の経済システムを「社会主義市場経済」と定義している。米国や日本の資本主義市場経済とは違い、金融崩壊を国家の力で抑えることが出来る。市場経済が国家より下ということであり、経済活動の中心が国営企業であり、国家が前面に出てくることができる

このため、日本の財務官僚も黒田日銀総裁も、中国に助け舟を出したくなるのは、サンケイの田村秀男さんとは違い分かる気がする。日本経済も道ずれになることが怖いので、中国の資本規制を容認することになったと思う。

国家が経済活動を制御する方法が、我々とは違い、多様に存在するのである。しかし、制御を失敗すれば、資本主義経済より大きなダメージを受けることにもなる。このため、中国政府の統治能力が重要な要素なのである。日本とは違い、ソロスに対抗することもできるのだ。

G20では、世界経済の混乱回避のために、通貨競争をしないこと、中国は構造改革に取り組むこと、資本規制などの政策を容認することが決まった。中国が議長であり、中国にとって良いと思われる政策をG20に容認させたことになる。

なぜバブル崩壊の危機

しかし、中国経済がなぜバブル崩壊の危機になるのであろうか? 2008年のリーマンショックで、中国は52兆円という財政出動をして、インフラ整備を行う。このインフラに供給する資材を製造するために、過剰生産になってしまった。この過剰な生産設備を破棄することと、雇用を守るために新しい産業を育成していく構造改革が必要になっている。

しかし、この2008年から始まる生産設備投資のために、多額の借金を地方政府と企業はしている。この借金の返済が必要になっている。しかし、地方政府と企業の借りた資金量がGDPの約2倍という規模になっている。

米国やその他のバブル崩壊時の借金量より格段に大きいのである。それなのに、逆になぜバブル崩壊しないかというと、人民銀行が大量の資金を地方政府や企業に市中銀行経由で貸出しているからである。運転資金があるということだ。

しかし、利益を生まない設備の廃棄をすることが重要であるが、設備廃棄は雇用解雇でもある。この雇用解雇は、鉄鋼業だけで160万人、その他を含めると300万人にもなる。

今まで、地方政府は賃金上昇を企業に指導していた。このため、繊維・雑貨などの産業は企業競争に負けて衰退している。その上に、重化学産業の廃棄をすると雇用の確保ができないことになる。このため、地方政府は抵抗している。

もう1つ、人民元をドルとリンクしているので、ドルが上昇すると人民元も上昇することになる。ここでも企業競争力が衰退しているのである。

しかし、AV系、スマホ、インターネットやドローンなどの分野である最先端技術の商品で中国は実力を上げている。しかし、部品は日本や韓国から買っている。

というのが現状の状態である。

人民銀行の買い支えと構造改革

中央銀行は資金をゾンビ企業に貸出して、企業倒産を防いでいる。金融緩和的な政策であるが、一方で米国など海外からの投資が流出していて、資金流出が止まらない。そのままにすると人民元の暴落になり、IMFのSDRになった人民元の立場がない。このため、人民元の買い支えを行っている。この行為は、人民元買いドル売りの為替介入であり、人民元を市場から買い戻すということで、金融引締的な政策である。

もう1つ、この買い支えができるのは、外貨準備高がある間しかできない。中国の外貨準備高は世界最大であるので、当分はできるがいつかはできなくなる。また1月で1,000億ドル程度減少しているので、その減少スピードも早い。このため、人民元買い支えはできなくなるので、資本流出を止めるには資本規制をするしかない。通貨の自由な流通を止めることである。

もう1つが、買い支えができるまでに、構造改革ができるかどうかである。そして、経済成長を輸出から国民消費に変える必要がある。しかし、先端産業の雇用は少なく、このため、大量の雇用が無くなり、国民不満が出てくると、独裁国家が陥る海外での侵略で愛国心を煽り、国内は締め付けることで、政権維持を図ることになる。すでに、ロシアがやっていることである。これを中国が行うと日本も、その影響を受けることになる。

海外進出の軋轢で

この海外進出を行うと世界との軋轢を招くことになる。すでに南シナ海や東シナ海で問題を起こしている。この軋轢が高じると、欧米日などが経済制裁を行うことになると見る。これも既にロシアに行っている。

軋轢が起こると、直ぐに軍事衝突を言う軍事専門家は言うが、それはあまりない。まずは経済制裁などの開始になるはずである。

しかし、この経済制裁は中国が進めようとする構造改革とは逆な方向であり、経済崩壊になる可能性が出てくる。最先端分野は中国に代替できる国がある。AV、スマホ、ドローンなどは中国以外にも製造できるからである。

このように、中国のジレンマは、経済崩壊を防ぐことと、政権維持に必要なことでのトレード・オフが存在するのである。このバランスを取って進めることが必要になっている。

しかし、政府機関と軍部は相互に干渉できない位置づけになっている。両方のバランスを取るには、権力の集中が必要になる。集中して政策実施が必要である。政権維持のためにも必要になっている。このため、習近平総書記に権力を集中させる必要が中国はあるのだ。中国は危機になると権力を集中させる必要があるのだ。権力を集中させると、軍部の一方的な行動は制御されるし、政府の民主化政策も制御されることになる。両者をバランスさせることになる。

難しい局面に中国経済は来ていることは間違いないし、発行資金量が拡大していることも事実であり、もし、資金量がある限界を超えると人民元が暴落して国内にインフレが起こり、経済成長がマイナスになる可能性も否定できない。

さあ、どうなりますか?

 

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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