いま話題の北海道新幹線ですが、長めな駅名が多いのが特徴です。駅名と駅にまつわる情報を、無料メルマガ「客車隊報」の発行者であり、「海峡同盟」で代表を務める中尾一樹さんがかなりディープに解説してくれます。駅弁情報も見逃せません。
「奥津軽いまべつ」に「新函館北斗」。なぜ駅名が長い?
北海道新幹線最大の特徴は、駅名がやたら長いことです。
JR東日本との境目となる新青森駅と、北海道最初の駅である木古内駅ははまともな?名前ですが、他は「奥津軽いまべつ」に「新函館北斗」…。
長げーよ!と思った方も多いでしょう。
今回は長くなった理由と、その駅にまつわる話題をとりあげます。
まずは連載最初の記事に登場した「奥津軽いまべつ」駅ですが、ここは開業すると日本の新幹線史上、もっとも人口が少ない町にある駅となります。
その町の名は今別町。
津軽半島にある小さな小さな町で、町役場もいまどき平屋。
応接にはスリッパを履いてあがるというなかなかの田舎町です。
なぜこんなとこに新幹線の駅ができるのか?
それには理由があり、万が一青函トンネルでトラブルが発生した場合に避難場所や列車の折り返し地点として使うことが想定されています。
ただそれなら旧「知内」駅みたいに信号場扱いでもいいじゃないか?といわれそうですが、この場所にあった(正確には現在ももあることになってますが)津軽今別駅の代替という側面を持っています。
実際に通学していた人がいたかは甚だ疑問ではありますが、通学客の利便を図るということで、今別町では通学定期を買う町民に対して補助金を出すようです。
※参考記事はこちらから。
そしてもうひとつの特徴は「乗換駅になりうる」ということです。
青春18きっぷで北海道に行く場合はいやでもこの奥津軽いまべつ駅に降り立つことになりますが(詳しくは連載初回参照)、実はそれ以外にも乗換駅として使える可能性があります。
1つ目はこの奥津軽いまべつ駅から津軽鉄道の終点「津軽中里」駅までのバスが運行されることが決定しました。
津軽鉄道はストーブ列車で有名ですが、今までは来た道を戻るしか選択肢がありませんでした。
しかし、このバスの登場で「通り抜け」が可能となり、北海道へ渡る前にストーブ列車から新幹線に乗り継ぐなんて旅も可能となります。
2つ目は「竜飛岬」へ行く場合で、ここから津軽線で三厩駅へ。
そこから外ヶ浜町営バスで行くことになるのですが、この町営バス、片道たったの100円!
本数こそ少ないですが、津軽線全列車に接続しており、鉄道で竜飛岬を目指すにはなかなか便利です。
青春18きっぷで移動する際に立ち寄るには(列車の本数的に)ハードルが高いかもしれませんが、今後もし奥津軽いまべつ駅から直通するバスが出来るようであれば、新幹線乗り継ぎの時間調整を兼ねた観光ができるようになるかもしれません。
※竜飛岬行き外ヶ浜町営バス時刻はこちらから。
続いては北海道新幹線の(今のところの)終点、新函館北斗駅です。
ここはもともと「渡島大野」という、周りには何もなかった無人駅ですが、新幹線が通るということで急ピッチで駅前開発が進んでいます。
とはいえ開業時点ではレンタカー屋くらいしかないらしいのですが、最大の特徴としてこの駅は函館市内にないという点が上げられます。
この駅が所在する場所は北斗市で、函館駅からは18.9kmも離れており、函館空港が函館市内にあるのに対し、函館市民からは「あまりにも遠い」と評価される原因になってしまいました。
そもそも北海道新幹線は東京と札幌を結ぶことが前提であるため、函館市内へ駅を作ると遠回りになってしまうため、この場所に駅を作ることになったのですが、駅があるのは北斗市内なんだから「北斗」駅にしろ!という横槍が入り、もめにもめた(?)結果、両方の名称を合体させてしまった結果、こんな長い名称になってしまいました。
個人的には「函館北斗」でよかったのでは?という気もするのですが、まぁ決まってしまった以上、札幌開業するまでの15年間(予定)はこの駅名につきあうことになります。
この新函館北斗駅では2社の駅弁が販売される予定ですが、そのうちの1社はなんと青森県は八戸駅で駅弁を販売している吉田屋さん。
しかも開業前に新宿は京王百貨店で開催された駅弁大会に出店していたという変り種。
発売時点で「未来の駅弁」を売ったのは、新幹線史上初のできごとだと思われます。
新函館北斗駅2階のお店は「お弁当カフェ」と銘打ち、その場でおかずをチョイスできる駅弁も登場する模様です。
この吉田屋を迎え撃つのは、百年以上の歴史を誇る函館駅弁「みかど」。
食堂車黎明期4業者のひとつで食堂車事業が日本食堂(現在のNRE等)に統合されて以降は構内レストランや駅弁の業者として親しまれておりました。
おそらく伝統の身欠きニシン弁当が発売されると思いますが、私も幼少期に青函連絡船の船内で食べて以来の逸品。
ぜひ食べ比べてみてくださいませ。
また北斗市ではキモかわいい?ゆるキャラ「ずーしーほっきー」や、地元アイドルグループ「北斗夢学院桜組」などのキャラクター展開も図っており、いろんな意味で異質の新幹線駅となります。
開業当日から一週間連続で歓迎イベントをやるようですので、イベント期間中はすぐ函館に向かわず途中下車してみるのも面白いかもしれません。
Image by: Wikimedia Commons
Source by: 客車隊報
「客車隊報」
著者/中尾一樹(海峡同盟 代表)
青春18きっぷやクルーズ列車等の情報を中心としたメルマガを配信中。旅行サークル「海峡同盟」では青春18きっぷで北海道に行けなくなる可能性が発生したことをきっかけに2001年に結成。最近は海峡特例を守ることを目的として、国土交通省・運輸審議会が主催する公聴会に参加し公述人として意見するなど活動を行っている。